表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ママじゃない~攻略対象の母に転生したので、破滅エンドを潰します~  作者: めそこここ
Love begets love ~愛が愛を生む~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
110/117

第94話 新たな命

「お泊まり会、仕切り直しましょう!」


 マーガレットがそう宣言したのは、犯人が連行された後だった。


「この状況で続けるんですか……」


 パメラが、呆れたような、でも安心したような顔をしていた。


「私、今、皆さまとお話したい気分ですの!」


「マーガレット、無理してない?」


 私は、マーガレットの顔を覗き込んだ。


「寮に外泊届けを出している方もいますし……本音を言うと私、今日は寮で一人で眠りたくないんですの」


(色々なことがあった一日だ。きっと、何も考えたくないのだろう)


「……じゃあ、みんなでいようか」


 マーガレットはこくりと頷いた。


 テオドアはマーガレットの肩を抱いた。


「ルフェラン邸まで送らせてくれないか?」


 マーガレットはテオドアの肩にもたれかかった。


「テオは心配し過ぎですわ」


「また何かあったらと思うと不安なんだ」


 その様子を見て、パメラが小さく笑った。


「……今日は怖い思いをしたはずなのに、マーガレット様にとって特別な日に変わりましたね」


「でも、こんな思い二度としたくないわ」


(誰も怪我がなくて良かった……)


 その場に、どこか穏やかな空気が戻り始めた。

 しかし、アイゼンは周囲を見渡しながら口を開く。


「ルフェラン邸まで送り届けよう。犯人は捕らえたが、念には念を入れるべきだ」


 リアンも腕を組み、静かに頷いた。


「殿下に賛成だ。実行犯は捕らえたが、全員とは限らない。護衛は多いに超したことはない」


 ガブリエルも一歩前へ出る。


「ルナエクリプスの皆さまにはお支払いした分、きっちりと働いていただきますよ。無事に送り届けるまでが依頼です」


 ヘンリーは苦笑しながら肩をすくめた。


「ここで『じゃあ、また明日』なんて帰ったら、あとで夢見が悪そうだから付き合うか」


 テオドアはマーガレットの肩を抱いたまま、小さく息をついた。


「……マギー、送らせて欲しい」


 マーガレットは照れくさそうに微笑む。


「皆さま、本当に心配性ですわ」


「それだけ君が大切なんだ」


 こうして私たちは、皆でルフェラン邸へ向かうことになった。



 ◇



 馬車に揺られながら、緊張が解けたせいか馬車酔いを感じた。


「……エリカ様?」


 マーガレットが心配そうに声をかけた。


「少し馬車に酔ったみたい」


「エリカ様、大丈夫?私に寄りかかってください」


 パメラも不安そうな表情をしている。


(私、そんなに顔色が悪いのかしら……)


 ようやくルフェラン邸に馬車が着いた。

 先に到着していたアイゼンが手を差し出した。


(ようやく我が家に帰ってこれた)


 安心した気持ちでアイゼンの手に触れた瞬間だった。視界が暗くなった。


「エリカ!!」

「エリカ様!!」


(みんな、大きな声あげて……)


 私は意識を手放した。



 ◇



 気がつくと、見慣れた天井だった。

 自室の天井。

 ルフェラン邸の、私の部屋。


(……ここは)


 体が重かった。

 頭が、ぼんやりとしている。


「エリカ」


 アイゼンの声だった。

 視線を向けると、ベッドの傍に、アイゼンが座っていた。

 その顔が、いつになく青ざめていた。


「アイゼン……」


「目が覚めたか?具合はどうだ?」


「私……どうして」


「馬車から降りた直後に倒れた」


「倒れた……?」


 部屋を見渡すと、みんながいた。

 お父様。

 マーガレット、パメラ、マリア、テオドア、ガブリエル、ヘンリー。


 そして——。


「ブラッド、トモエも……」


「エリカ様……」


 ブラッドが、ベッドの傍に進み出た。

 その顔が、どこか、気まずそうだった。


「今日は騒ぎもあったし……疲労で倒れたのかしら」


「……それも、あると思います」


 ブラッドは、少し言いよどんだ。


「ブラッド?」


「実は……それだけではないようで」


 ブラッドは口を濁した。


「どういうこと?私、病気なの?」


 部屋の中の全員が、ブラッドを見た。

 ブラッドは、一度だけ深く息を吸った。


「……病気ではありません」


 ブラッドはアイゼンを見た後、お父様を見た。


「……妊娠です」


 部屋が、静まり返った。

 完全な、沈黙だった。


(妊娠……私が……?赤ちゃん……?)


「エリカ様……宿屋のことを黙秘したのって、まさか……」


 マーガレットが、震える声で言った。


「それは……その……」


「宿屋?!」


 その場にいた全員が、同時に声を上げた。


 最初に動いたのは、お父様だった。

 一瞬の静寂の後、お父様は立ち上がり、アイゼンの方へ向いた。

 その目が、見たことのない光を宿していた。


「ルフェラン侯爵様、落ち着いて——」


 ブラッドが止めに入ろうとした瞬間だった。


「アイゼン・フォレスト!!!」


 お父様の怒号が部屋に響いた。


 次の瞬間、勢いよくアイゼンが吹き飛んだ。


 そこにいた誰もが呆然とした。

 この国の外務大臣が王太子を殴り飛ばしたのだ。


「お父様!!」


「アイゼン・フォレスト!!」


 お父様は、拳を振りかぶって再び、アイゼンに殴りかかろうとしていた。

 間に入って止めるブラッド。

 我に返った男性陣も二人の間に入った。


「貴様、私の娘に何をした!」


 アイゼンは、殴られた頬を押さえながら、立ち上がった。


「……すべて私の責任です」


 アイゼンはそういうと深々と頭を下げた。


「アイゼン!!」


 起き上がろうとする私を静止するアイゼン。


「エリカ」


 アイゼンは、私を真っ直ぐ見た。


「私が悪い」


「そうじゃなくて!」


「侯爵」


 アイゼンは、お父様に向き直った。


「順番が守れなかったことは謝罪します」


 お父様は、しばらく黙っていた。


「……」


 その時だった。

 廊下から、息を切らした足音が近づいてきた。


「先生!スタール先生!」


 使用人が、扉を勢いよく開けた。


「奥様が!奥様が産気づきました!!」


 部屋の全員が、固まった。

 お父様が、ゆっくりと使用人を見た。


「……今、何と言った?」


「旦那様、奥様が産気づかれました!」


 お父様の顔が、みるみる変わっていった。


「エリカが妊娠……ルアーナが産気づいて……」


 お父様はふらふらと、そのまま、ゆっくりと壁に手をついた。

 アイゼンが、お父様の腕を掴んで支えた。


「侯爵、落ち着いて」


「誰のせいでこうなったと思っている……!」


「今日だけは、我慢してください」


「……」


 お父様は、アイゼンに支えられながら、お母様の部屋に向かった。


 部屋の中が、静かになった。


「エリカ様」


 マーガレットが、私の手を握った。


「大丈夫ですわ」


「……うん」


「色々ありすぎて、私も処理しきれていませんけれど」


(それは私も同じだった)


「でも、きっと大丈夫ですわ」


 マーガレットは、もう一度、そう言った。


(先ほどまで一番大変だったマーガレットに心配されるなんて……今夜は、色々ありすぎた)


 窓の外で、夜風が木々を揺らしていた。

 ルフェラン邸の中が、ざわざわと騒がしかった。

 あとがき


第94話を読んでいただき、ありがとうございました!

救出劇が終わったと思ったら、妊娠発覚、お父様大暴走、そして出産……「情報量が多い!」と思いながら書いていました。

ここから物語はいよいよ終盤へ向かいます。 これまで積み重ねてきた伏線や人間関係を、一つずつ回収していく予定ですので、最後まで見届けていただけると嬉しいです。

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、リアクションや☆☆☆☆☆で応援していただけると、とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ