表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ママじゃない~攻略対象の母に転生したので、破滅エンドを潰します~  作者: めそこここ
恋蜜《こいみつ》は乙女ゲームより奇なり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/117

閑話 ~新素材発見したらカオスが起きていた件~

 ゴムパッチン――。

 まさか、乙女ゲームの世界でこれを見ることになるとは思わなかった。


「ほう……これが新素材か」


 お父様は試作品のゴムを手に取り、興味深そうに眺めていた。指で引き延ばし、弾力を確かめ、さらには鼻先に近づけて匂いまで確認する。

 未知のものに対する探究心は、ルフェラン領主として頼もしい。


「樹液の状態も見てみたいな」


 その一言で、私は席を立った。余っている樹液を取りに行くだけ、ほんの数分のことだった。


――そのわずかな時間に、事件は起きた。


 “男はいつまでも少年の心を持つ”その言葉を、私は後に嫌というほど実感することになる。


「これは、どのくらい伸びるのでしょう?」


 そう口にしたのは、騎士のロウだった。完成を今か今かと待っていた彼は、未知の素材に純粋な興味を抱いてしまったらしい。


「ふむ……二倍くらいではないか?」


「いえ、三倍はいける気がします」


「よし、確かめてみよう」


 お父様が楽しげに応じる。お父様と騎士のロウは、ゴムの両端をそれぞれ掴み、ゆっくりと距離を取っていく。


 二倍、まだ伸びる。三倍、まだいける。


 その様子を見守っていた執事のクルードは、途中から明らかに顔色を変えていた。


「あそこで止めておくべきでした……」


――後に、ロウはそう語る。


 引き延ばされたゴムは、次第に色を変えていった。透明感のあるそれは、やがて乳白色に濁り、細く、細く、糸のように変わっていく。

 ピン、と張り詰めたそれは、まるで楽器の弦のような音を立てていた。


「これ以上は危険です!」


 クルードの鋭い声が響く。


「あの時の声は、今でも山びこのように耳に残っている」


――後に、お父様はそう語る。


 だが、その声に最も驚いたのは、他ならぬ騎士のロウだった。

 ビクリと肩を震わせた拍子に手がゴムから離れた。

 次の瞬間――。


「バチンッ!!」


 乾いた音が響き渡る。


 解放されたゴムは、勢いそのままにお父様の顔面へと直撃した。


「ぐっ……!」


 衝撃に耐えきれず、お父様は後方へと倒れ込む。


「「旦那様ー!!」」


 使用人達が一斉に駆け寄る。


 その混乱の中で、私はちょうど戻ってきた。


 目に入ったのは、地面に座り込むお父様。


 その周囲を囲む使用人達。


 そして、その前で剣を抜き、自らの首に当てている騎士のロウ。



(……どうしてこうなった?!)



「た、大変、申し訳ありません!!死んでお詫びします!」


(いや待って。展開が早すぎる)


「ちょっと、何やってるの!」


 思わず叫んだ一言で、場の空気が凍りついた。

 男たちは我に返ったように動きを止める。

 事情を尋ねても、誰も口を開こうとしない。気まずそうに視線を逸らすばかりだ。

 しばしの沈黙の後――。


「今回のことは、軽い事故のようなものだ。ロウも気にするな」


 お父様が立ち上がり、何事もなかったかのように言った。

 その頬は、見事に赤く腫れ上がっている。

 軽い事故、ではない気がする。だが、誰もそれ以上は触れなかった。


 地位的に、お父様に手を上げられる者など存在しない。


――ゆえに、後にその痕を見たお母様が、まさかの方向に誤解することになる。


「……あなた、その顔は何ですの?」


 静かな声。しかし、背筋が凍るほどの圧。

 あのお父様が、一歩後ずさりした。


 その後、屋敷に一波乱が巻き起こったのは、言うまでもない。


 お母様は最後まで、お父様の説明を信じなかった。


 原因が"ゴムパッチン"だと説明されるまでに、かなりの時間を要したのだった。


(新素材の開発は、思わぬ被害をもたらした)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ゆーとぴあ 嗚呼歳がバレる(汗)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ