Ⅹ.安住剛志
権藤渚沙の持つスマホと同時に階下から銃声が響いた。
一発、二発……と、立て続けに轟く轟音は、五回で終わった。ポケットに入れて持ち歩く程度の小型拳銃の装弾数なら、そのくらいのものだろう。
中村尊はヒイッと呻いて頭を抱えている。
安住はそんな彼を見下ろしてから、町田と目を合わせた。確認しに行かねばならないだろう。
部屋に中村弟、猪崎、そしてノワールを残し、安住と渚沙は町田の案内で、一階に向かう。
渚沙は通話状態のスマホを手にしている。耳に当てているが、あれから反応はないらしい。やがて、
「切れた」
とスマホ画面を安住に見せた。
町田は、五味が隠れそうな場所に心当たりがあるようだ。
「食品庫は身を隠す場所に事欠かないし、裏口と繋がっている。片方から侵入されても、片方から逃げられる」
「相手が単独犯人なら、な」
ランタンをかざす安住を先頭に階段を下りる。
屋根を叩く雨音はなりを潜め、薄い雲を通した月明かりが踊り場を照らす。
五味から電話があった時、このペンションにいる全員が一室に会していた。五味が『何者』かに出くわしたとすれば、それは安住や五味たちよりも後にやって来た侵入者に違いない。
あるいは、中村尊の言う通り、どこかにある隠し部屋に身を潜ませていたか。
だが、安住の杞憂はすぐさま解決した。
ロビーをランタンで照らせば、五味の行方は一目瞭然だった。
奥から玄関の外へ、引きずったような血痕が続いている。
血痕の筋は、玄関を抜けると濡れた地面に消されていたが、少なくとも負傷させられた上、何者かに連れ去られたのは明白だった。
小雨の降りしきる暗闇の中で、彼を捜索するのは困難だ。三人は仕方なく、元いた部屋に戻ることにした。
——すると、部屋の中央で、猪崎梓が立ち尽くしている。
彼女が見下ろす先には、中村尊が倒れていた……首が奇妙な方向へねじ曲がった彼に、息がないのは明白だった。
ところが。
安住が「何があった?」と猪崎に問うことはなかった。権藤も町田も同様だ。
ただ無表情に、闖入者である哀れな男を眺めている。
やがて、町田がボソリと言った。
「これで『祭り』は、滞りなく済みましたな」




