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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
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帰宅

ディンブラ達がエディブルの花園に帰省した。

みんなが出迎えるが、以前とは全く違った小麦と葵の様子に驚いていた。

「ど、どうしたんだよ?何があったんだ?・・・というか葵が背負ってる子は?」

アッサムが聞くと、ディンブラが元気無く答えた。

「色々とあったんだ・・・。2人を少し休ませてあげたい。葵くんが背負ってる子については後で僕から説明するよ」

そう言い残すと、パーティ以外がディンブラの家に行った。

残されたパーティにみんなが事情を聞くが、パーティもあまり答えなかった。


家にいると、誰かが訪ねて来た。

ディンブラが出ると、来訪者は月下美人だった。

普段日差しに弱いので、あまり日中に外出しない月下美人がわざわざ来たことに目を丸くする。

「あの!小麦くん・・・いますか?」

中に通すと、憔悴しょうすいしている小麦がソファーに座っていた。

「小麦くん!!」と小麦の隣に心配そうに座る。

「月下美人・・・。ごめんな、今ちょっと疲れてて行けなかった・・・」

そんな小麦に首を横に振る。

「大丈夫?」と心配そうに寄り添う。

「ちょっと休憩したら大丈夫だよ・・・。そうだ・・・」

小麦が封筒から写真を出した。

「この人は?」

「俺の母さん。この前、やっと会えたんだ。俺にそっくりだろ?」

月下美人は微笑みながらうなずく。

「小麦くんみたいに優しい顔してるね!」

「すごく優しかったよ。・・・母さん家の子どもになりたかった」

念願の母と再会したというのに、悲哀に満ちた声と表情を見て月下美人が異変に気付く。

「どうしたの?」

「・・・俺さ、もう母さんと会えないんだ。会わないって言ってきた」

心配そうに見上げて聞く。

「どうして?ずっと探していたんじゃないの?」

「遅すぎたんだ。もう母さんには新しい家族がいてさ、今更そこには入れなくて・・・。ただ、俺にもディンブラや葵やロルロージュっていう新しい家族もいるし。お互い違う道を歩んでいくだけだよ」

落ち込む小麦に、月下美人も言葉を詰まらせた。

「そっか・・・」とつぶやくように言うが、すぐに言葉を繋げた。

「でも、今は小麦くんがそう決めたから、そうしてるだけだと思う。だけど、何年もお互いに思い続けていたら、必ずいつか会えると思うよ!」

「え?」

そんなことを言う月下美人に、意外そうな顔を向ける。

「何となくだよ。私がそう思ってるだけだけど、きっといつか会えるよ。だって小麦くん、お母さんにまだ会いたそうだもん!」

微笑みかけてくれる月下美人に、小麦も少し笑顔になった。

「・・・そうか。そうだといいなぁ・・・」

「そうなるよ。きっと。小麦くんが大切に思うように、お母さんも小麦くんを大切に思ってるよ」

励まされた小麦は写真の中の母を見て微笑んでいた。

「ありがとう、月下美人。少し元気が出たよ!」

礼を言われて、照れ臭そうに頬を赤らめて頷く。

「やっぱり、小麦くんは笑ってる方がいいね!かっこいいよ!」

「ありがとう・・・本当に、ありがとう」

微笑みかける月下美人を見てから、再び写真の中の母を見ていた。


葵は家には戻らず、意識を失ったイナリを抱えてプリムトンの樹の丘を目指していた。

本来、ここの住人でなければ丘には辿り着けないのだが、プリムトンの樹が願いを聞き届けてくれたのか、妖精を使わせて案内してくれた。

葵の目の前をキラキラと光の粒が飛んで案内してくれる。

そして、辿り着いた開けた丘には、悠々と神樹が聳え立っていた。

「ありがとう」と光の粒に礼を言うと、クルクルと回りながら消えていった。

イナリを背負い直して、近づいていく。

樹の前に立つと、神妙な面持ちで呟くように言う。

「頼む・・・イナリを助けてくれ」

樹の幹にイナリを預けると、包み込んで受け取ってくれた。

一つ安堵のため息を吐いてから、葵自身も手を当てて話しかける。

「ギンジョー、ドロップ・・・聞こえるか?」

2人からの返事はないが、葉や枝が風で揺れている。

「biancoで色々な仲間に会ったよ。その中に俺の部下のイナリもいた。イナリがさ、殺されそうになって、命は助かったが意識が戻らないんだ。どうやら俺達魔王軍はroséに嫌われていて、全滅させられるそうだ」

急に疲労感があらわになり、背中で樹にもたれかかる。

しかし、立っているのもしんどくなり、ゆっくりと腰を下ろした。

「小麦も親に会えたけど、それを利用されてかなり精神的に潰されてしまった。俺は・・・誰も守れていない。これから、どうしたらいいんだろうな・・・」

すっかり弱気になってしまった葵は目をつぶって、そのままうたた寝をした。

“roséに全滅される”

この妄想に取り憑かれ、イナリの意識が戻らなくなってからずっと悪い夢ばかりを見ていたのだ。

あまり眠れていない葵の疲労は限界にまで来ていたのか、それともプリムトンの樹の能力なのか、うたた寝から深い深い眠りに落ちていった。


スーベニアは落ち込む小麦を見ていられなくて、家からすぐに飛び出していた。

『葵様も家に戻らずにイナリを抱えてどこかへ行くと言っていたしな・・・』

この満身創痍な組織の現状に一つ大きなため息を吐く。

歩いていると、朝顔が声をかけてきた。

「ねぇ、スーベニア!小麦は?」

「あ、朝顔さん!・・・小麦さんなら家にいます。・・・でも、今は全然元気ないですよ?」

困ったように答えたが、朝顔ははやる気持ちを抑えられないといったように、ひびすを返した。

「いいの!行ってくる!ありがとう!!」

残されたスーベニアは肩をすくめた。

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