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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
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愛情

小麦は写真館で写真を受け取った際に母と鉢合わせた。

しかし、母の状況を考え、決別をした。

その後、大使館に帰るとディンブラと葵が心配そうに迎えてくれた。

「小麦、どこ行ってたんだよ?」

「今日エディブルに帰るって言っただろ?朝一からいなくなるから、心配したんだよ?」

「ごめん・・・。これ、受け取りに行ってたんだ」

小麦が2人に写真を見せる。

「写真?」とディンブラが受け取り、葵も隣からのぞく。

「俺が母さんと昨日撮ったんだ。俺の母さん、綺麗だろ?」

葵はその写真の中で微笑む女性を見て、小麦によく似ていると思った。

ディンブラはうなずいて答えてやる。

「うん、綺麗で優しそうな人だね。小麦も嬉しそう。それに・・・凄く君に似ているよ」

「ディンブラ、葵・・・色々とありがとな。結局、俺が今できる親孝行がさ、母さんと別々に生きていくことだった」

ディンブラは小麦の肩を組んでやった。

「小麦・・・君が選んだ事なら、僕は否定しない。だけど、いつでも自分が幸せになる選択をしてもいい事を覚えておいてほしいんだ」

「・・・うん」

小麦が軽く頷き返す。

「その選択をする時はさ、わがままになってもいいんだよ。もしも、判断に迷った時は、遠慮無く僕達を頼ってもほしい。僕達はみんな、血は繋がってないけど、家族なんだ」

「ありがとう・・・ディンブラ」

葵は言葉の代わりに、黙って背中を叩いてやった。


しばらくして、サンスベリアに女性が1人で来店した。

「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ!」

窓辺の席に座り、女性は装花を見ていた。

いつもはロザの一族が持ってくるバラを装花にしているのだが、今は小さな花束のように色々な花を寄せて花瓶に挿している。

かすみ草にカランコエにカーネーション・・・まるで幸せや感謝を小さな花瓶に込めているかのようだ。

そこへビストートがメニューを持ってくる。

「こちらがランチメニューです」

「あの、ビストートさん・・・ですか?」

そう聞かれて少し驚いたように女性を見た。

しかし、見覚えのない初来店の客だ。

「はい、そうですが・・・」

不思議そうに答えると、相手が続けて聞いてきた。

「ここ、他に従業員は?」

「いません。・・・あ、時々ヘルプで友達が来てくれます。接客してくれたり、意外と字が上手だったんで、そのメニューとか書いてもらったりしてるんですよ」

メニュー表を手で指すと、一瞬視線を落とし、もう一度ビストートを見上げた。

「その方は次、いつ来られますか?」

不安気に聞いてくる女性に淡々と答える。

「まだ予定は無いですね。頼りになるんですが、遠方から来てくれるから、なかなか頼みづらくて・・・」

ビストートの回答を聞いて女性は少しがっかりしていた。

「・・・そうですか。・・・ここのケーキは全てあなたがお作りになられているのですか?」

「はい、そうです」

「そのお友達が作られたケーキって・・・ありませんか?」

「・・・え?」とその女性を改めて見ると、初めて気づいたが誰かに似ている。

優しそうなタレ目で、緑の瞳、ツヤのある綺麗な白色の髪に福耳・・・。

「あの、もしかして・・・」と聞こうとすると、女性は目を逸らせた。

「すいません・・・失礼な事を聞いて・・・」

「い、いえ!」

女性は再びメニューを見た。

ビストートは戸惑いながらもメニューを指す。

「その・・・ウチのオススメは、このBランチです!ベーコンがたっぷり入ったトマトソースで、食欲旺盛な男性からも好評のメニューです!」

それを聞き、女性が何かに気づいたのか一瞬ハッとした表情になり、それから微笑んでビストートに注文する。

「じゃあ、それで!」

「食後のカフェはどうされますか?オススメはホットコーヒーです!」

「それでは、ホットコーヒーでお願いします!」

「ありがとうございます!少々お待ちください!」

ビストートはメモを取るとメニューもさげずに去った。

厨房に入る前に食事に来ていたシスターにいじられる。

「どうしたのよ、ビストート?メニューもさげないし、そもそも女性に男性向けをオススメして・・・。てか、いつもオススメなんて言わないクセに!」

「うるせぇ!」

ビストートが厨房に入り、女性の方をのぞくと、メニューを見ながら優しく微笑んでいた。

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