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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
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塗り潰した一コマ

小麦は月下美人を送った後、1人で座って景色をただただ眺めていた。

そんな所に、走ってディンブラの家を目指していた朝顔が通りかかった。

「小麦!」

「・・・朝顔」

朝顔は小麦の隣に来ると、黙って頭を抱きしめた。

「わ!ちょっ・・・どうしたんだよ?」

突然のことに照れてしまし、頬を赤くする。

小麦からは見えなかったが、朝顔も同じく照れて赤くなっていた。

「私が単純に小麦に会えて嬉しいのと、小麦が何かに迷ってるって思ったから抱きしめた!!」

そう答えてさらに強く小麦の頭を抱える。

「何を迷ってるの?」

「・・・俺さ、今回のメリリーシャで沢山選択を迫られた。その時に選んだ方がさ、どうしても間違いだらけで、結果的に手元の大切なモノを沢山失ったんだ。俺は大人になって、また失敗を恐れ始めてる。・・・失敗の後から来る悪い事が怖いんだ」

小麦も朝顔を抱きしめ返し、その優しさに甘える。

「そっか・・・わかるよ、そういうの。嫌だよね・・・怖いよね・・・」

抱きついたまま黙ってうなずく。

小麦は目をつぶって朝顔の心臓の音を聞いていた。

「すっごくわかるけどさ・・・失敗した事を悔やみすぎたら今を生きる力が無くなっちゃうよ?」

「・・・うん」

「失敗って怖いけどさ、先に進む参考程度にしよ?小麦にとって今やることって、きっとたくさんあると思う。何かある?今やること!」

そう聞かれて「今か・・・」とつぶやいて考えた。

朝顔から少し離れ、見上げる。

「俺は今、やる事が山積みだよ。でもさ、ちょっと疲れちゃった・・・」

「じゃあ、今やるべき事は後悔じゃなくて休憩だね!」

微笑む朝顔にまた甘えたら、抱きしめてくれた。

「よくがんばりました!」

朝顔は優しく頭を撫でてくれた。

小麦は朝顔の体温に、鼓動に、少しだけ目が潤んだ。

再会した母が同じようにしてくれたことを思い出して。


葵が家に帰ってきた時、リビングにはロルロージュとディンブラがいた。

「おかえり。遅かったね。プリムトンの樹まで行けた?」

「無事にイナリを預けてきたよ。ちょっとうたた寝しちゃって・・・」

「・・・そっか。ありがとう」

元気無く返すディンブラの手元にある物が気になった。

「ディンブラ、それは?」

「あぁ、これ?これはこの前葵くんから聞いた、小麦の好きな特撮ヒーローの人形とそのビデオテープだよ!」

ディンブラがビデオテープを手に取る。

「ずっと探してた親と決別したんだ。誰よりもダメージが大きいだろうからさ、少しでも元気になってくれたらなって思って・・・」

葵がディンブラの持つそれを受け取り、よく見た。

「3巻?だいぶん途中の所を・・・しかも一枚だけ?」

見渡したが他のビデオテープはなかった。

「全然無くてね、パーティやスーベニアにも頼んでメリリーシャ中を探したんだけど、見つかったのがこの一枚だけだったんだ・・・」

葵がDVDの裏を見てしかめる。

「うーん・・・何か見覚えがあるな・・・」

「どうしたの?」

しばらく考えてからようやく思い出した。

「・・・あ!思い出した!!」

そう言って、その回に登場するであろう怪人が描かれた一コマだけを指で隠す。

「ここだ!小麦も魔王軍の時にこのシリーズを全巻持ってて、何度も見返していたんだよ!それで、何故かアイツ、この部分だけを塗り潰してて・・・。広間のテレビで見てたから俺も時々見てたんだけど、そう言えばこの塗り潰した回だけ飛ばしていた気がする・・・」

「え?どうして?」

聞き返すが葵も困った顔をする。

「それは聞いた事が無いから分からない・・・」

「そっか・・・。本人に聞いてみるしかないね」

その時、ドアが開く音がして、丁度小麦が帰ってきた。

「ただいまー」

「小麦、おかえり!」

少しばかり元気を取り戻した小麦がリビングに入ってくる。

「これ、メリリーシャで買ったんだ!このヒーロー、好きなんでしょ?」

ディンブラに手渡されたケースを受け取り見る。

「・・・フラワーマン・・・3巻」

「小麦に元気を出してほしくて、探したんだ!僕のためにたくさん頑張ってくれたし!一枚しか見つけられなくてごめんね」

そして小麦が裏返すと、表情が一気に曇った。

「小麦?」とその反応にディンブラが心配そうに聞く。

「小麦さん・・・」

ロルロージュも心配そうに近づく。

「これ・・・」と呟き小麦はケースに涙を落としていた。

そんな小麦を心配してロルロージュが触れた途端、急に時計の能力が発動した。

辺りが真っ白になり、何もない空間にいくつもの時計が周囲で音を立てながら忙しく逆戻りする。

「ロルロージュ!!」とディンブラが叫んで見ると、本人は目を見開いて時計を見ていた。

「こ、これは?」

葵も心配してロルロージュに問いかける。

小麦が黙ってビデオテープのケースを見て座り込む横で、ロルロージュが肩からげている大きな時計を不安そうに抱えていた。

「能力が暴走してます!小麦さんが不安定になってるんです!!自分を守るために、小麦さんの中にいる妖精が暴れています!!」

次第に白い世界に小麦の過去が見え始めた。

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