母さん
お使いから帰宅したディンブラに、我慢出来ずにマタリが玄関まで出迎えて聞いた。
「ディンブラ、いつエディブルに帰るんだ?これ以上、あんな元気ない2人を見てられないって・・・」
「マタリ、ごめん。あと数日待ってくれない?」
不思議に思いながら、リビングに行くディンブラを追いかける。
「小麦!」
ソファーに座る小麦が、呼びかけるディンブラを無表情で見上た。
「小麦!さっき、君のお母さんに会ったんだ!あれからずっとこの街で小麦を探してたみたい!それで、小麦と会いたいって直接お願いをされた!!」
小麦が目を丸くする。
「母さんが・・・俺に?」
「そう!もちろん、君次第だ!明後日の昼、西の広場にいるから、もし君が会ってくれるのなら、来てほしいって!!どうする?」
立ち上がってディンブラの肩を掴んだ。
「会いたい!俺も母さんに会いたい!」
その言葉にも、表情にも覇気が戻る。
「うん!会っておいで!」と笑顔で頷いて小麦の腕を握り返した。
小麦がそわそわし出す。
「そうだ!ビストートに頼んで、美味しいご飯作ってもらおう!ケーキだってとびきり美味しいのを作ってもらうんだ!俺の稼いだお金で、母さんに親孝行したい!!」
「凄く素敵だよ!絶対喜ぶさ!」
さっきまでの小麦とは打って変わり、気持ちが抑えきれないとばかりに興奮し、それとともに改めて母に会えることに喜びを感じ始めた。
「母さん、俺を探してくれた・・・!その・・・気も早いし、ディンブラが何て言うかわかんないけど・・・できれば、これから月一・・・いや、年に一回でもいいから、母さんや新しい家族と一緒にご飯を食べたい・・・。兄弟にも勉強教えたり、遊んだり、小遣いあげたり・・・兄ちゃんらしい事してやりたい!」
しかし、ディンブラを見てすぐに意見を変える。
「そんなの・・・ダメだよな。だって、俺はディンブラの元にいるんだし・・・」
「いいよ」
ディンブラは優しく微笑んで返した。
「もしも、君を家族に受け入れてくれるって言うのなら、僕達のことは気にせずに行っておいで。今まで君が受けて当然の愛情を、受けられなかったんだ。それを僕達に止める権利なんてないよ。だけど、時々は会いに来てよね!小麦がいないと寂しいからさ!」
「ありがとう・・・ディンブラ!!」
そして小麦を抱きしめた。
「僕こそごめんね。君を家族に会わせて、喜ばせてあげたかったのに、逆に傷つけた。だから、今度こそ幸せになってね」
「・・・うん!」
小麦は嬉しそうに頷いて、抱きしめる返した。
早速、小麦はビストートの所へ頼みに行った。
「明後日、絶対夜に母さんと来るから!1番良い料理を作って!ケーキもホールで!!金ならちゃんと払うから!!」
ビストートは必死に言う小麦に微笑んで返す。
「金ならいいよ」
「そんなのダメだ!俺はちゃんと自分の稼いだお金で、母さんに親孝行をしたいんだよ!」
小麦も食い下がるが、変わらずに笑顔で返してくれる。
「いつもタダ働きしてくれてるだろ?それでいいよ」
「そんな・・・」と少し戸惑う。
「あれも立派な、小麦の稼いだお金だ。胸を張って親孝行しろ!」
「ビストート・・・」
ビストートが小麦の肩を叩いた。
「なぁ、ケーキだけどさ、朝一から来て自分で作ったらどうだ?俺も教えてやるしさ、母さんの為に1つくらい手作りしてやれよ!きっと喜ぶよ!!」
「うん!!」
その提案には笑顔で頷いた。
「よっしゃ!今からスペシャルコースを考えてやる!その日は貸切にしてやるから、思う存分親孝行して来い!!」
「ありがとう!!」
それから当日まで、小麦は一生懸命親孝行について考えた。
葵や色んな人に話を聞いたりもした。
当日、朝から小麦が慌てている。
「大変だ!こんな服装で大丈夫かな!?スーツとか正装した方がいいかな!?」
ディンブラがクスクスと笑いながら近づいた。
「大丈夫だよ!親に会うんだから、いつも通りの君を見せればいいよ!」
「・・・うん!行ってくるよ!」
笑顔で頷くと、大使館を出て行った。
行く前に花束を買ってサンスベリアに置かせてもらう。
その足で西の広場に向かった。
緊張しながらも行くと、広場には人がチラホラといる。
見渡すと、母がいた。
小麦は緊張と嬉しさと照れが混ざって、自然と走っていた。
「あの!・・・か・・・か・・・・・母さん!!」
「・・・小麦!!」と母も喜んで近づいてくれた。
小麦の腕を触って見上げる。
「小麦、来てくれてありがとう!」
「い、いえ。こちらこそ・・・」
小麦は真っ赤になって照れていた。
「この前はごめんなさい。折角探してくれたあなたの事を拒否したりして・・・」
「ううん、いいんだ。こうして母さんから探して、会ってくれたんだ。凄く嬉しかった!」
母が嬉しそうに見上げる。
「大きくなったわね。背はどれだけあるの?」
「182cm」
「そう、そんなに・・・。最後に私が小麦を抱いた時はまだまだ赤ん坊だったのに」
「魔王軍で沢山ご飯を食べさせてもらったんだ!訓練もいっぱいしたし!・・・あ、でも、母さんは魔王軍嫌いだっけ・・・?」
恐る恐る見ると微笑んでくれていた。
「嫌いだったけど、私の小麦をこんなに立派に育ててくれたんだもの!好きになったわ!」
そう言ってくれてまた照れる。
「ねぇ、近くのカフェに行きましょう!」
そう言って、母が手を引いて行った。
その途中、写真館があった。
「そうだ!写真を撮りましょう!」
「え!?俺こんな普段着だよ!?」
「いいの!普段の小麦を残したいの!」
驚く小麦は手を引っ張られて写真館に入った。




