弱さ
腹を撃たれたディンブラと肩を貸す小麦が歩いている所をベットとクラインが見つけた。
「小麦!ディンブラ!」
小麦は心配して近寄ってくれる2人を見られなかった。
ベットとクラインが近くで小麦とディンブラの様子を確認する。
「腹を撃たれたのか?」
「俺が・・・撃った・・・」
目線をそらしたままクラインの質問に答える。
「父さんも・・・俺が殴った。新聞社も俺がやった。フラワーマンも・・・」
「小麦」
ベットが小麦を抱きしめて背を摩ってやった。
「悪かったな・・・。ジュエが近づいていたのに気づいてやれなかった。リーダーとしての管理不足だ」
「ベット・・・俺がやったんだ。ジュエは俺と話してただけだ・・・」
小麦から体を離して首を横に振る。
「違う。ジュエにやらされたんだ。あいつは言葉や状況を巧みに使って相手を洗脳する。どんな奴だって、人は結局弱いんだ。その人の弱さを突いてあいつは玩具にする。気がついた時には周りにいた大切なモノ全てを失っている。そうなった奴はジュエにとって、壊れた玩具なんだ。次を見つけては、また壊れるまで遊ぶ。そういう奴だ」
「俺は・・・遊ばれてたのか?もう、壊れた?今、自分には何も無い気がする・・・」
弱々しく言う小麦の肩を軽く叩いてやる。
「大丈夫だ。小麦にはディンブラも俺達チームもいるよ。もう1人にしないから、ゆっくり休め」
ベットに言われて、小さく頷いた。
しばらくは、小麦の周りにはベットのチームの誰かが必ずいるようにした。
だが、ある時呼ばれて、廃屋にいるジュエの元に1人でやって来た。
「来てくれて嬉しいよ、小麦!」
両手を広げて抱きしめる。
「やっぱり小麦は俺がいないとダメだよな?」
そんなジュエに小麦は黙っている。
「まあ、座れよ。そのイスに」
ジュエが離れて背を向けた時、ようやく口を開いた。
「ジュエ、俺はお前と決別する為に来た」
予想外の言葉にジュエが止まる。
「一体どうしたんだよ?」
「俺は、お前の玩具じゃない」
振り返るジュエを見据える。
「何を言ってるんだ?小麦が俺の玩具?どうしたよ?ベットに何か言われたか?」
困ったような笑みを浮かべて、聞き返す。
「俺は沢山の人を傷つけた。父親も殺しそうになった。何もあんたのせいにしようってわけじゃない。やったのは俺だ。全部俺の心の弱さのせいだ」
小麦の自白にジュエが怪しく笑った。
「それで?俺とどう決別するって?」
「もう二度とジュエには近づかない。あんたからも関わらないでほしい」
それを聞いてお腹を押さえて笑う。
「あっはははは!つまり、縁を切ろうとでも?」
黙っているとジュエがナイフを出し、小麦目掛けて突き刺す。
だが、小麦が直前で手首を掴んで止めた。
「俺は壊されない!壊されるものか!」
ジュエはニヤリと笑って小麦に囁く。
「小麦、ベットの言う事、本気で信じているのか?あいつはお前のことを利用して俺を殺す気なんだよ。あいつはいつも俺を嫌っているからな」
黙っている小麦に続ける。
「あいつはお前を利用する気だよ。賢い小麦ならわかるよな?どっちが悪なのか・・・」
ジュエの手元から力が抜ける。
「ジュエは本当によく俺を導いてくれたよ」
「そうだ!小麦をよく理解し、導けるのは俺だけだよ!ベットでもディンブラでもない!」
少し離れて小麦を覗き込む。
「な?小麦、俺を信じろ。俺は小麦の頑張ってきた事も全て理解してやれるんだ」
そして小麦の手にナイフを渡した。
「さぁ、自由になろう。小麦の邪魔者は排除しようじゃないか」
すると、急に苦しくなる。
ジュエは気づけば、胸から血が出ていた。
「小麦・・・どういう事だ・・・これは?」
「お前から離れるには、もうこうするしかない」
淡々と言う小麦から後ろに退がり、椅子に腰掛ける。
「俺は自分自身が大事だ」
「そうだろ・・・だから俺と・・・」
止まらない血を手で押さえ、苦しそうに言う。
「お前とはいられない。お前といると、俺は壊れる。もう、お前の為に誰も殺したりはしない」
小麦はジュエに近づいて行った。
「そうか・・・。ははは・・・お前、面白かったよ・・・」
「俺も・・・きっと全て嘘だろうけど、認めてもらえたようで嬉しかったよ」
ジュエがニヤリと苦しさを隠すように笑う。
「俺はいつでも小麦の味方だよ・・・。これまでも、これからも・・・」
「こんな時まで・・・。ジュエらしいな。今までありがとう」
礼を言うと、背を向けてジュエを置いて行った。




