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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
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すれ違い

落ち込む小麦の元にジュエがやって来た。

「小麦、ちょっと来い。会わせたい奴がいる」

小麦は黙ってジュエの部屋に行くと、そこにはロルロージュがいた。

「小麦さん!」

「・・・ロルロージュ」

元気のない小麦に心配そうに近づく。

「小麦さん、大丈夫ですか?ジュエさんから元気が無いと聞きました!」

「・・・悪い、今は何もしたくないんだ」

「大丈夫です!小麦さんを元気付けるために今日は来ました!!」

そう言って胸を叩いて見せる。

「さ、ロルロージュ。やってくれ」

ジュエに促され、「はい!」と答え、小麦にいつもの大きな時計を提げて回した。

すると、途端に部屋が真っ白の空間に変わり映像が映し出される。

小麦が目を丸くして、それらを見ていた。


小麦が魔王からうどんの名を貰い、任務で大きな功績を収めた時のこと。

その功績をみんなの前で褒めたたえられたのだ。

「良くやったわ、うどん!!」

うどんは嬉しくて言葉が出なかった。

振り返ると、部下や仲間達から拍手や歓声が送られる。

うどんは感激で目を強く閉じ、両手で拳を握って体を縮こめ、それから思い切り体も両手も広げた。

「イェーーーイ!!!!」

更に大きな拍手が送られる。

「これからも頑張ってね!あなたは私たちのヒーローよ!」

うどんは目を輝かせて魔王にうなずく。

「はい!」

葵は舞台下から拍手はするものの、冷静にうどんを見ていた。


うどんが男子寮の広間で仲間達に嬉しそうに話す。

「なぁ!俺、ヒーローになったんだ!!ずーっと憧れだったヒーローに!!」

凄く嬉しそうにするうどんの話に仲間も頷いてくれる。

「父さんも母さんもどっかで見てくれてるかな?俺の活躍!!」

仲間に向かって満面の笑みで聞いていると、みんなも肯定してくれた。

「勿論、見てくれてるよ!」

「いいなぁ、うどんさんは親が生きてる可能性があって!」

うらやましがる仲間の腕を掴んだ。

「可能性じゃない!生きてるんだ!!頑張ったんだ。俺のこと、見つけてくれるよな?父さん、母さん・・・」

そんな小麦を仲間も微笑で返してくれる。

「見つけてくれるよ・・・きっと!」

仲間の言葉にうどんはまた嬉しそうに笑っていた。


翌朝、広間の机には新聞が置いてあった。

それを1つ取って広げる。

“魔王軍機動隊うどん大活躍!”

一面に大きく書かれている記事を嬉しそうに見る。

「俺、本当にヒーローになったんだ!!正義のヒーローに!!」

しかし、その下にあった別の会社の新聞も目に入った。

「魔王軍うどん今世紀最悪の悪党・・・」

さっきとは打って変わって悪く書かれている。

それをぐしゃぐしゃに丸め、捨てた。

「こんなの、魔王軍を悪く思ってる奴が書いてるだけだ!父さんも母さんもこんなの信じないはず!」

英雄扱いをしている新聞をもう一度見る。

「父さんと母さんはこっちを見てくれてる!それで俺に・・・会いに来てくれるんだ!!必ず来る!!」

小麦は部屋で記事を切り抜き、ノートに貼った。


実の父は街中で悪党扱いの新聞を見ていた。

「号外!号外ー!」

また、別の新聞社の人から英雄扱いされている新聞も手に取ったが、すぐに捨てた。

母も悪党を手に持ち、英雄を捨てた。


「まだだ!まだ頑張りが足りないから、父さんも母さんも会いに来てくれないんだ!!」

それからできる限りを尽くして魔王に言われるがままに土地を侵略していった。

その度に二種類の新聞が出る。

英雄を貯め続けるうどん。

英雄を捨て、悪党を取る父と母。

うどんの手元にはいつしか、大量の新聞のスクラップがあった。

「父さん・・・母さん・・・」

手元に残った資料の数だけ、父と母は自分の悪業を目にしていた。


ロルロージュが見せた過去は小麦にとって、残酷な事実を突きつけただけだった。

「あぁ・・・父さん・・・・・母さん・・・。俺は・・・俺は・・・!!」

小麦が泣崩れる。

「ただ、正義のヒーローになりたかっただけなんだ・・・。有名になって、迎えに来て欲しかった・・・。ずっと・・・頑張ってきたのに・・・どうして見てくれなかったの?」

ロルロージュは何と言っていいのかわからず、声をかけられなかった。

それを見たジュエはニヤリと口角を上げ、そして小麦に近づきささやく。

「小麦、お前のことなんか誰も認めやしないよ」

その言葉に小麦が食いしばって涙を落とす。

「お前は悪党なんだ。正義のヒーローなんかにはなれない」

「俺は・・・正義のヒーローに・・・」

「それはただの願望だろ?実際のお前は魔王のしもべ。人の命を平気で奪う極悪人だ。そんなお前なんか誰も認めるわけないだろ?」

「う・・・う・・・」

頭を床に付ける小麦の肩に手を回し、頭を撫でた。

「だけど、俺だけは違うよ。小麦が頑張っているのを知ってる。小麦が誰よりも正義の為にと頑張っていたんだ。そんな小麦がこんな扱い、おかしいよな?」

「おか・・・しい?」

ゆっくりと頭を少し上げる。

「そうだ、おかしいんだよ。どうしてこんなにも頑張っている小麦を、悪く書けるんだろうな?信じられないよな。この新聞のせいで小麦の親は迎えに来なかったんだ」

「どうして・・・なんだ?俺は悪くない・・・」

小麦が泣き止む。

「あぁ、小麦は悪くない。俺だけはわかっているよ。悪いのはあんな事を平気で書く新聞社だ」

「俺は・・・悪くない・・・。あの新聞が悪い」

そうつぶやきながら体を起こす。

「そうだ。お前から親を奪ったあの新聞社を潰してやろう」

そして、手にナイフを持たされた。

「お前の幸せの敵討ちをするんだ」

ロルロージュが黙って服を掴み、心配そうに見つめる中、小麦は無言で手元のナイフを見つめ、それから強く握りしめた。

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