家族
翌朝、新聞で殺人の報道がされていた。
“元特撮ヒーロー刺殺”
大きな見出しの下には男性の写真と、フラワーマンの写真が載っていた。
「あー、これ懐かしいな。俺見てたよ。つまんなかったけど」
「俺も最後までは見なかったな」
クラインとベットが話している所に小麦が来た。
「よぉ、元気になったか?」
「お陰様で」
無表情の小麦にベットとクラインが小声で話す。
「あんま元気じゃないな」
「もう少しそっとしてやろう・・・」
2人が立ち上がった。
「じゃ、俺らはランブルのお使いがあるから行くわ!」
「アホ兄弟をよろしくな!」
そう言い残して2人が出て行った。
「何があったか知らんけど、いつ治るんだよ?」
「さあな?でも、きっと俺達が今してる事が成功すれば、あいつも元気になるだろうよ」
ベットの言葉にクラインはため息を吐いた。
「そうかな?・・・そう信じるか。それに、今日中には終わるしな」
「あぁ、ディンブラにも連絡はしたし、あとは見に行くだけだ」
それから2人は黙って歩いた。
rossoの拠点では小麦にまたジュエが近づいていた。
2人が置いていった新聞を手に取り、隣に座る。
「やったじゃないか!小麦は凄いよ!」
その褒め言葉に小麦は黙っていた。
「落ち込む必要は無い。お前は今日から正義のヒーローだ」
無表情な小麦に嬉しそうにジュエが囁いた。
昼頃にはディンブラがrossoを尋ねてきた。
「ディンブラ・・・」
「小麦、久しぶり!」
中に入り、ランブルの書斎に2人で通される。
「ランブル、本当にありがとね!」
「礼なら結果を見てからにしてくれ」
小麦が不思議そうにする。
「まず、小麦に説明をする」
呼び掛けられてランブルを見た。
「小麦がウチに渡された時、ディンブラからある依頼を受けた。それは、小麦の本当の親を探してくれという内容だった」
「俺の・・・親?」
ディンブラがニコニコして小麦を見る。
「そうだよ!小麦に本当の両親に合わせてあげたかったんだ!」
「ディンブラ・・・!!」とやっと嬉しそうにした。
「それで、今回小麦の出生とか、何から何までが謎だったが、こちらの情報網を使って絞り込み、その中から小麦の髪を使ってDNAの鑑定もした」
「DNAって?」
ディンブラのその質問にはベットが答える。
「遺伝子の情報だよ。肌や髪の色、目の形、それら全て親から受け継がれた情報を髪や唾液から鑑定できるんだ」
「科学って本当、凄いね・・・」
「俺ら魔法の世界なんて、妖精との相性や種族でしかそんなの測れないのに・・・」
「そっちのがすげーよ。何だ妖精との相性って?」
クラインが逆に疑問を持つ。
しかし、クラインが腕を組んでベットに小声で言う。
「ったく、親なんて会っても良いもんじゃねーよな」
「まあまあ、俺らにとって親が悪でも、小麦にとっても同じとは限らないだろ。人それぞれなんだよ」
諭すベットに「だけど・・・」と口ごもった。
「それで、結果としては見つかった。父母共に健全に生活している」
小麦が目を大きく開き、頬も紅潮する。
「本当に!?母さんも、父さんも!俺、会えるんだ!2人に!!」
ディンブラに「ありがとう、ディンブラ!!」と抱きつくと、抱き返してくれた。
「うん!良かったね、小麦!」
「やっと母さんに会える!特に母さんに会うのを夢見ていたんだ!!」
久しぶりにはしゃぐ小麦にランブルが咳払いをする。
それに気づいてランブルの方を見た。
「それで・・・その・・・」
「何だよ、ランブル!もったいつけないで早く見せてくれよ!!2人は今も仲良しなんだよな?どんな感じなの?俺に似てる?」
気まずそうなランブルが渋々口を開いた。
「すごく言いにくいが・・・フゥ・・・小麦の親は離婚していた」
小麦が黙り、表情が一気に失せる。
「さらには再婚までしていた。そして、お前の新しい兄弟もいた。2人共だ」
「・・・どういう事?・・・それってつまり・・・違う人と家族になってるって・・・事?」
気まずそうに両手で作った拳に額を付け答える。
「・・・そうだ」
小麦は言葉を失った。
「そんな・・・小麦・・・」
ディンブラが心配そうに小麦を見る。
そして、写真を渡された。
「それがお前の両親と、その家族だ。」
写真の中では父も母も新しい家族と楽しそうにしていた。
「あ・・・あ・・・父さん・・・母さん・・・」
小麦は膝から崩れ落ちた。
「すぐにわかるよ、父さんも、母さんも・・・。ディンブラ・・・俺の髪と瞳の色とタレ目は母さんに似てた・・・、俺の髪のクセと鼻と口は父さんに似てた・・・。自慢の福耳は・・・2人に似てた・・・」
ディンブラがしゃがんで背を摩る。
「うん、凄く似てるよ。そっくりだね、2人共」
「なのに・・・2人は別々の家族で、違う幸せを手に入れてる!俺の事なんてとっくに忘れて!違う家族と楽しそうにしている!!俺の事なんて探してすらなかった!!」
小麦が写真を握って泣き崩れた。
ベットもクラインも心配ではあるが、なんて声をかけたらいいのかわからず、黙っていた。
「父も母も10代半ばでお前が生まれたんだ。きっと、経済的事情だったんだろうな」
「くそっ!くそっ!俺は!俺はぁ・・・ああ!!」
悔しそうに床を叩きつける小麦をディンブラはどうする事もできなかった。
小麦はそれからは誰とも口をきかなくなってしまった。
時々、刺された腹が痛くなり摩っていた。
外ではロルロージュが街中を散歩していた。
「小麦さん、元気かな?全然僕を呼んでくれないけど、怪我とかしてないかな?」
ロルロージュは飴を買ってベンチに座って舐めていたら隣にジュエが座ってきた。
『な、何で隣に来るんですか!?他にも空いてるベンチ、ありますが?』
急に隣に来た人物に警戒しながら飴を舐めていると話しかけられた。
「そんな警戒すんなよ」
意外な展開にロルロージュが動揺する。
「ロルロージュだろ?小麦の相棒の」
「小麦さんを知ってるんですか!?」
小麦の名前にジュエを見上げる。
「あぁ、よく知ってるさ!よくロルロージュの話も聞くよ」
「僕の話を!!何て言ってます!?」
小麦が話題に上げてくれていたことに嬉しくなり、ロルロージュは前のめりになった。
「よく褒めてるよ。俺の1番の相棒だって。だから今日はそんなお前にお願いに来たんだ」
「お願い・・・ですか?」
傾げて聞き返す。
「今な、小麦の元気が無いんだよ。一日中誰とも話さない」
「そんな・・・あの小麦さんが・・・」
ジュエが心配そうに続ける。
「あいつ、ずっと家族を探していただろ?俺たちがあいつの家族を見つけられなくても、家族への希望を持ってた頃の過去を見せられれば、元気付けられるんじゃないかなって思うんだよ。協力してくれないか?」
「勿論です!」
その回答にジュエは怪しく笑った。




