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忍と真鈴の機転に寄って、俺達は行李を呼び出すパーツを手に入れたが…ジンコ達を取り戻すには…。

真鈴がはしゃいだ声を上げて忍を抱き上げた。


「忍!

 お手柄よ~!

 これでジンコ達を取り戻せる…。」


俺達は慌てて咳払いをして、真鈴のすぐ横にいた圭子さんが真鈴を肘でつついた。

そう、司と忍にはまだジンコ達が地下の存在に、行李に飲み込まれた事は伝えていなかったのだ。

真鈴が慌てて言い直した。


「あ!ジンコ達が治るのも早くなるかもね~!」


司が真鈴の服を引っ張った。


「真鈴、ジンコや凛たちはここに入院してるんでしょ?

 会えないのかな?

 ジンコや凛に会いたいな~!」


明石が司を抱き上げた。


「司、忍、まだジンコ達には会えないんだ…だけど、その内直ぐに会えるよきっと。」


俺達は施設の係員に事情を話して貝殻で作られたと思われる5つのパーツを服から切り離してもらい、それぞれ丈夫なビニールの小袋に入れてもらった。

そしてノリッピーに事情を話してパーツを持ち帰る事にした。


施設のカフェで美味しい食事を摂り、少し周りをドライブしてから俺達は死霊屋敷に戻った。


司と忍が明石一家の家に戻ると俺達は暖炉の間で5つのパーツを前に会議をした。


「どうやらこれはある程度近くに近寄るとあの地下の行李を呼び出して人を飲み込むようだな。」


明石が言った。

喜朗おじがコーヒーを飲んでタバコの火を点けた。


「そしてこのパーツを持っている者は飲み込まないようだと思うな。

 そしてあの5人組は自分達は安全な形で行李に人を飲み込ませていたと…。」


真鈴がパーツを手に取った。


「どうやらその通りだと思うわ。

 これで地下の行李を呼び出して人を飲み込ませることが出来るとして…でも、私達はどうするの?

 ジンコや凛やリリー達を吐き出してもらわなきゃいけないのよ。

 どんな手段でもあの外皮は破れないんでしょ?

 そしてもしも破れたとしても、中のジンコ達も死ぬかもしれない…生命維持装置を強制的に切る様な事だもん…。」


俺達はため息をついた。

はなちゃんが手を上げた。


「簡単な事じゃの真鈴。

 わらわを飲み込ませれば良いじゃの。

 乾は行李の中に入って何かスイッチの様な物を操作すれば可能性はあると言ってたじゃの。」

「そうか…でもはなちゃん。

 中に入っても操作が出来るの?

 あの行李は心が無いと言ってたぜ。」

「彩斗、わらわは心が読めなくともからくりを読む事は出来るじゃの!

 行李の中に入りさえすれば可能性は高いじゃの!

 それに外皮は固いと言っていたが中からなら破れるかも知れんじゃの。

 いざ最悪な時は内側から行李を破り、ジンコや凛やリリー達を見つけて壁を張り巡らせて守りながらわらわが外に一緒に飛び出すじゃの。」


俺達は考え込んでしまった。

はなちゃんにそんな離れ業が出来るだろうか…。


だが、他に可能性がある方法は思いつかなかった。

今のままでは手づまりである事に変わりない。


「でも…最悪な場合、私達ははなちゃんも失うかも知れないわ…。」


圭子さんが呟いた。


「圭子、それもあるかも知れんが…このままではジンコや凛やリリー達を永久に取り戻せないじゃの。」


俺達はまた考え込んでしまった。


「今の所他に方法は無いが…。」


四郎が呟き、俺を見た。

そして明石も、喜朗おじも、圭子さんも、真鈴も加奈もクラも俺を見た。


決断を下すしかない。

だが、何かもう一つ作戦を実行に移すための根拠が欲しかった。


「はなちゃん、機械ならば動かせると言ったじゃないか…例えばさ、今玄関の前に俺のランドクルーザーが停まっているじゃないか…はなちゃん、あれを動かせる?

 あの行李の中がどれほど複雑か判らないけど…。」


俺がはなちゃんに言った途端に玄関からランドクルーザーのエンジンが始動した音が聞こえて来た。


「彩斗、これでどうじゃの?」


俺達が呆気にとられていると無人のランドクルーザーが玄関前からからゆっくり走りだしてプールサイドにやって来た。

窓からランドクルーザーが見え、やがてランドクルーザーが停まり、エンジンを停止した。


「こんなもんかの?」


皆がランドクルーザーを見て、はなちゃんを見て、そして、俺を見た。

俺はしばらく目を瞑り、そして目を開いた。


「よし、やろう。

 ほかに手は無い、はなちゃんに賭けよう。」


皆が頷いた。


翌日、やはり『ひだまり』を臨時休業した俺達は車に分乗して多摩に向かった。


あの現場から少し離れた場所に車を停め、俺と明石、四郎と真鈴、加奈がそれぞれのパーツを入れたビニール袋をポケットに入れ現場に向かった。

パーツ無しでは行李に飲み込まれる恐れがあるので、車では喜朗おじと圭子さんとクラが待機して不測の事態に備えることになった。


昨日、ノリッピーに作戦内容を伝えてあり、俺達の更に外周をスコルピオが固めていた。


俺ははなちゃんを抱いて現場に立った。

周りには明石、四郎、真鈴、加奈が立って周囲を警戒している。


「おお!奴が!行李が上がって来るじゃの!」

「やっぱりこれがパーツだったのね!」

「彩斗、わらわを降ろすのじゃの!

 上手く行けば行李の中に入り込めるじゃの!」


俺ははなちゃんを地面におろした。


「奴が上がって来てるじゃの!

 すぐ近くじゃの!」


はなちゃんが興奮して飛び跳ねた。


「はなちゃん、頼むぞ!」

「はなちゃんに掛かってるからね!」

「ジンコを取り返して!」

「凛も取り返して!」

「リリーも頼むぞ!」


俺達は口々にはなちゃんに声を掛けた。


「任せとけ!

 わらわに任せろ!」


暫くしてからはなちゃんが戸惑った感じで歩き回った。


「ええい!

 ここじゃの!

 ここじゃの!」

「はなちゃん!どうした?」


俺が尋ねるとはなちゃんが地団太を踏んだ。


「ええい!奴はわらわを見つけられんようじゃの!

 ここをあちこち探ってるだけじゃの!

 早く飲み込めと言うのに!」


俺は察した。


そして…俺は決断した。


「判ったはなちゃん、きっとこういう事だ。」


俺ははなちゃんの所に歩いて行き、はなちゃんを抱き上げた。

そしてポケットからパーツが入ったビニール袋を取り出した。


「彩斗!何をする気だ!」


明石が叫んだ。

明石は俺がやろうとしている事に気付いたらしい。


「皆、どうやら地下の奴は、行李は、はなちゃんを人間や悪鬼として認識できないんだよ。

 はなちゃんをただの物としか認識してないと思う。

 だからこうする。」


俺はパーツが入ったビニール袋を投げ捨て、はなちゃんをしっかり抱きしめた。


「彩斗!何を!」

「俺がはなちゃんと一緒に奴に飲まれるよ。

 後の事は景行と四郎と喜朗おじが相談して行動してくれ。」

「そんな!彩斗あぶないわ!

 誰かほかの…!」


真鈴が叫んだ。


「こんなヤバい事誰にも頼めない!

 これは俺がやるしかない!」


俺が答えたが、俺自身が怖くて歯がガチガチと鳴って震えていた。


「彩斗! 

 わらわを信じるじゃの!」

「命預けたぜはなちゃん!

 皆!ワイバーンに幸運を!」


非常に苦労して俺がそう言うと、俺の足元が崩れ、何かが俺の脚を包み込み地下に吸い込まれた。

俺ははなちゃんを抱く手に力を込めた。







続く





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