# 第二部 第二話 勇者は美少女でした
# 第二部 第二話 勇者は美少女でした
「見つけました」
金髪の少女は剣を向けた。
「魔王グラン」
「私があなたを倒します」
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広場は静まり返る。
魔界の住民たちも、
商人たちも、
ルシオンたちも、
全員固まった。
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グランは恐る恐る手を上げる。
「あのー……」
「なんですか」
「俺、今デート中なんだけど」
「知っています」
「知ってるの!?」
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勇者の少女は真顔だった。
全く笑わない。
怖い。
めちゃくちゃ怖い。
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その時。
隣のリリスが一歩前へ出る。
「へぇ」
笑顔。
だが目は笑っていない。
「デート中の男を襲うなんて」
「人間界の勇者って常識ないのね」
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勇者も負けない。
「魔王に常識を語られたくありません」
「なに?」
「なんですか?」
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バチバチバチ!!
空中で火花が散った。
実際には散っていない。
でも雰囲気的には散っていた。
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「グラン」
リリスが言う。
「どっち選ぶの?」
「何を!?」
「私とその女」
「選択肢がおかしい!」
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グランの頭が痛くなる。
魔王になってから、
敵より恋愛問題の方が難しい。
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その時だった。
システム起動。
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緊急クエスト
【勇者と仲良くなれ】
報酬
超レアスキル
失敗
人間界との関係悪化
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「無理だろぉぉぉ!!」
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勇者は首を傾げた。
「どうしたんですか?」
「なんでもない!」
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すると勇者は突然言った。
「私はエリス=リディア」
「エリス?」
「あなたに会うために来ました」
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グランは固まる。
「倒しに来たんじゃないのか?」
「それもあります」
「あるのかよ!」
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エリスは真剣な顔だった。
「ですが」
「?」
「まず確かめたいことがあります」
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彼女はゆっくり近づく。
そして。
グランの胸元にある魔王紋章を見る。
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エリスの顔色が変わった。
「やっぱり……」
「なに?」
「間違いない」
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その時。
エリスの瞳から涙が零れた。
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「ずっと探していました」
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「え?」
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誰も理解できなかった。
勇者が泣いている。
しかも魔王を見て。
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エリスは震える声で言った。
「あなたは……」
「私の先祖を救った人の力を受け継いでいる」
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グランは目を丸くした。
「先祖?」
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エリスは頷く。
「千年前」
「初代魔王アークスに助けられた勇者の血族です」
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その瞬間。
ゼクトの顔が変わった。
「まさか……」
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アークスの幻影も現れる。
『懐かしいな』
珍しく笑っていた。
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エリスは驚く。
「アークス様……」
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どうやら本物らしい。
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グランだけ話についていけない。
「ちょっと待て」
「つまり?」
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エリスは顔を赤くする。
そして。
とんでもないことを言った。
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「私の家では代々伝わっています」
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「魔王アークスの継承者が現れたら――」
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「全力で支えなさい、と」
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沈黙。
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リリス
「……」
エリス
「……」
グラン
「……」
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そして。
リリスがゆっくり振り向いた。
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「つまり」
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「ライバルが増えたってこと?」
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「違います!」
と叫ぶエリス。
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「違わないわね」
と笑うリリス。
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グランは頭を抱えた。
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魔界の美少女。
人間界の勇者。
なぜか両方に追いかけられている。
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その時だった。
ドォォォォォン!!
遠くの空が赤く染まった。
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全員が振り向く。
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魔界と人間界の境界線。
そこから黒い煙が上がっていた。
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ゼクトが青ざめる。
「まずい……」
「どうした?」
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「ベルゼヴァルは倒した」
「だが奴には部下がいた」
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空に無数の黒い影が現れる。
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『魔王の継承者を殺せ』
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『勇者も消せ』
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『世界を混沌へ戻せ』
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新たな敵軍だった。
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グランは剣を抜く。
リリスも。
エリスも。
ルシオンたちも構える。
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そして思った。
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「なんでデートの日に限って事件が起きるんだぁぁぁ!!」
## 次回予告
**第二部 第三話「魔王と勇者の共闘」**
魔界軍と人間界軍が手を組む!?
リリスVSエリス勃発!?
そしてグランに新たなモテ期到来!?
世界を救う戦いが始まる!




