望愛に伝えなきゃいけないこと
「よし!」
緩んでいた空気感の中、美涼が力強い声を発した。
「いきなりどうした?」
「玲旺のおかげで決心がついたよ」
「決心?」
「うん―――」
美涼は俺の腕の中から体を起こした。
「望愛に私達のことをちゃんと話す。なんて言ったらいいかわからなくて悩んじゃったけど、ずっと黙ってることはできないからね」
もしかして、それをずっと考えていたのか?
望愛なら、俺達のこと聞けば普通に喜ぶと思うんだけどな。
そもそも、望愛が自分だけを見ろって言ってたら、さすがに俺も美涼に本心をぶつけられなかったし。
そう考えれば、今こうして美涼といられるのは望愛のおかげなんだよな。
って……、あ、やべ。そうじゃん。そう言えば、望愛がどんな思いでいるか、美涼に話してなかった。
「あ~っと、美涼?俺達が付き合い始めたと知ったからって望愛が怒ることはないと思うぞ?」
「確かに、望愛は優しいからね。怒らないかもしれない。でも、そういう問題じゃなくて、受け入れてくれるかが大事なんだよ。勝手な言い分だけど、私は望愛とこれからも仲良くいたいから」
なんか悲壮感が漂ってる気がするんだが……。
「いや、だからな?そんな心配はいらねえっていうか……。なんなら、俺から望愛に話すぞ?その方が早いだろうし」
「気を遣ってくれてありがとう、玲旺。でもこれは、私がしなきゃいけない話だと思うから」
そう言うと、美涼がスマホを操作し始めた。
望愛にメッセージを送ったようだ。
俺の伝え方が悪かったか?
美涼は真面目だからなぁ。
望愛が大切だからこそ、きっといっぱい真剣に考えたはずだ。
ってか、付き合うときの葛藤は間違いなく俺以上だったに違いない。
それなのに美涼は俺に応えてくれたんだ。
……やっぱ、俺のせいだな。怒られっかな?
すると、すぐに美涼のスマホに着信があり、それが望愛からだったようで美涼は慌てた様子で耳に当てる。
遅過ぎた……。
け、けど、まあ、結果は変わらないだろうし、成り行きに任せればいい、か?
「も、もしもし、望愛?急に連絡してごめんね。今大丈夫かな?」
美涼の声に緊張の色が滲んでいる気がする。
スマホを持つ手にも力が入っているようだ。
「ありがとう。玲旺から聞いたよ。二人が付き合うことになったって。おめでとう、望愛」
「うん。それでね、私、望愛に伝えなきゃいけないことがあるんだ。大事な、話なの」
「え?今!?それは……」
「ど、どうしてわかったの!?え、望愛!?ちょ、ちょっと待っ―――」
何か思わぬ事態になったのか、美涼は通話の切れたスマホを見つめて固まってしまった。
「どうかしたか?」
「……望愛が今からここに来るって」
「あ~、なるほど。美涼、大丈夫か?」
「う、うん。もしかしたら望愛はもう何か察してるのかもしれないけど、ちゃんと伝えるよ」
「そっか」
もう俺は望愛と美涼の二人に任せることにした。
何せ、二人とも同じ気持ちなんだから。
……もっと早く言え、と美涼に怒られたくないと思ったのは、ほんのちょっとだけだ。
それからしばらくして、チャイムが鳴った。
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