何気ないやり取りがなんだか温かい
翌日。
「玲旺。起きて?もう11時だよ?」
「んあ?……美涼?」
眠っているところに優しく温かな声が届き、俺は目を開けた。
「うん。おはよう、玲旺――――」
美涼の柔らかな唇が俺の唇に軽く触れる。
「ふふっ、おはようのキスだよ」
「ああ、サンキュ。目が覚めた。おはよう、美涼」
「よかった。寝る前に玲旺が言ってくれたから、私、お先にお風呂いただいちゃった。玲旺も入ってきたら?すっきりするよ」
なるほど。だから美涼の髪が少し濡れているのか。
「だな。そうするわ」
俺は返事をしてベッドから起き上がった。
「コーヒー淹れておこうか?」
「じゃあ頼む。ありがとな」
「うん。いってらっしゃい」
美涼に見送られながら風呂に向かう途中、俺は不思議なものを感じて、立ち止まり振り返った。
「……なあ、美涼」
「なに?」
「なんか、こういうのっていいな」
何気ないやり取りだが、なんだか温かい感じがしたのだ
もしかしたら、家庭とか夫婦とかってのは、本来こういうのを日常的に感じるものなんだろうか?
ふと、そんな無意味な疑問を抱いてしまったが、俺にはわからない。
前世の記憶を持ってはいても、玲旺の近くにいた人間達はそうではなかったからな。
でも、今俺は確かに、美涼とのやり取りで、何か満たされた気持ちになったんだ。
「そう?嬉しいな。これからはいつでも何度でも、こういう時間を一緒に過ごそうね?」
「ああ、そうだな。じゃ、行ってくる」
美涼が本当に嬉しそうに笑ってくれたから、俺も思わず笑み、軽く手を振って風呂に向かうのだった。
そうしてちゃちゃっとシャワーを浴びた俺が風呂から出ると、テーブルにカップが二つ置かれていた。
美涼の淹れてくれたコーヒーだ。
その美涼はというと、スマホを手に持ち、けれど何もすることなく、ぼんやりと画面を見つめている。
ただ、その表情は何か悩んででもいるのか、苦しげだ。
俺が風呂に入る前と全然違っている。
「どうかしたのか、美涼?」
「玲旺……。あのね、一つお願いがあるんだけど、前してくれたみたいに、後ろからギュってしてほしいな」
「おう。お安い御用だ」
質問の答えにはなっていなかったが、美涼の願いを断る理由は何もない。
俺は、コーヒーの礼を美涼に伝え、テーブルの上にあるカップを二つとも手に持って、これから座る場所の近くに置いた。
そして、ベッドを背もたれにして、美涼の後ろに座り、足の間に彼女を収めて、引き寄せるようにして抱きしめる。
美涼はその動きに身を任せ、俺の胸にもたれかかる形で身体を預けてきた。
すると、風呂上がり特有のいい匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
「ありがとう玲旺。やっぱり私、玲旺にこうされるの好きだなぁ」
満たされていることが伝わってくるくらい穏やかでゆったりした声だった。
「俺も好きだぜ。美涼をすげー感じられるからよ」
「ふふっ、そっかぁ。私達一緒だね」
「そうだな」
それからしばらくの間、俺達はくっついたまま、時々コーヒーを飲みながらまったりとした時間を過ごすのだった。
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