強欲な望みを叶えるために
本日、[月間]現実世界(恋愛) 連載中 3位 になりました!読者の皆様、本当にありがとうございます!!!月間でもベスト3に入れて感無量です。これからも頑張ります!
「なんだ?まだ何かあるのかい?」
一応座り直してくれた美涼だが、その声から不機嫌になっていることが窺えた。
「あ、いや……」
俺は言葉に詰まった。
何かがある訳じゃない。
だが、このまま別れるのはマズい、そんな思いにただ突き動かされただけだ。
「はっきりしないな。君らしくもない」
「……すまん」
俺らしくない、か……。
自分でもそう思う。
だから謝ることしかできなかった。
「謝られても困るんだけどな。ただ、まあ……、私は、そんな君が、正直嫌いだった。だってそうだろう?君はずっと学校にほとんど行かず、喧嘩に女遊びにと身勝手な行動ばかりしてきた人間だ。私を助けようとしたのだって、何か裏があるに決まってると思ってた。望愛も騙されてるんだって。だからいざというとき、望愛を守るために君を近くで見張っていたんだ。……だが、それもここまで。どうやら私はお役御免のようだからな。これからは望愛のことだけを考えて幸せにしてあげるといい。望愛を泣かせたら絶対に許さないぞ」
美涼が急に早口で捲し立てた。
しかもその内容は違和感のあるものばかりだ。
前に、過去は過去として、今の自分を貶めるなって俺に言ったのは美涼だろ。
それに、お役御免ってなんだよ?
まるで自分はもう関わることはないって言ってるみたいじゃねえか。
「美涼?お前何言って―――」
「それもやめてもらっていいかい?やっぱり先輩である私を呼び捨てにしたり、ため口で話したりするのはおかしいからな」
おかしい。やっぱおかし過ぎるだろ。
これじゃ今まで美涼が自分で言ってきたことの全否定だ。
……それとも、美涼はそれを望んでるってのか?
俺と関わる前の状況に戻ることを―――?
俺と望愛が付き合うことになったから、なのか?
……もしそうなら、これ以上俺に言えることなんて何もない。
俺は視線を逸らし、黙ることしかできなかった。
「っ、……それじゃあ今度こそ話は終わりだな。夏休みだからってあまり羽目を外すなよ?」
美涼が立ち上がったのがわかった。
「……さようなら、玲旺君」
瞬間、俺は目を見開いていた。
今日、美涼が俺の名前を口にしたのは今が初めてじゃないか?
そして、抱いていた違和感の正体が次々とわかった気がした。
美涼が凛々しい感じ?本当の美涼はもっと可愛らしい女だ。
服装だって、大人っぽい感じじゃなくて可愛い系で。
俺や望愛と話すときは、喋り方ももっと柔らかいものになっていた。
どうしてすぐに思い至らなかったのか。
今日の美涼は最初から何もかも、今まで見てきた美涼と違うじゃないか。
なら、そんな美涼が言った言葉は本心なのか?
もしも、すべて美涼が準備してきたものだとしたら……?
時間にして数秒だろう。
固まってしまっていた俺がバッと顔を上げると、美涼は足早にカフェを出るところだった。
俺は考えがまとまらないまま、反射的に美涼を追いかけていた。
俺の中にはずっと拭えない不安があった。
そしてそれは、望愛の一件で大きくなっていた。
漫画では俺に襲われるはずだったのに、この世界では昇に襲われそうになった望愛。
じゃあ、美涼は?
美涼は慎也に襲われるのが未遂で済んで、それで本当に終わったのか?
望愛ももう破滅に向かうことはないと言い切れるのか?
望愛と美涼、この世界で二人に、漫画と同じになってしまう強制力というものが働いていたとするなら、共通するのは漫画と同じ日時に事が起こるってことだ。
でもサンプルが圧倒的に少ないため、それが正解かどうか、今の時点で証明する術はない。
なら、これからも、いざというとき守ってやれるヤツが必要なんじゃないか?
そんな思いをずっと抱えていたんだ。
「美涼!」
カフェを出てすぐのところで、なんとか美涼の手を取ることができた。
「っ、な、なんだ!?くっ…、離せ!離すんだ!」
美涼は一瞬、肩をビクッとさせたが、すぐに俺の手を振り解こうとした。
それでも、決して離さないという意思を込めて力を強めた俺は、美涼の顔を見て、頭をぶん殴られたみたいな衝撃を受けた。
美涼の目に涙が浮かんでいたから。
「どうして私を追いかけてきたりするんだ!?君は望愛の彼氏になったんだろう?なら、私のことはもう放っておいてくれ!」
美涼が声を荒げる。
だが、俺としては今の言葉で答え合わせができたという思いが大きい。
やはり美涼は―――、美涼が導き出した結論は―――。
と同時に、望愛の言葉が思い出された。
『美涼さんのこと、好きでしょう?』
ああ、図星だったぜ。望愛は、俺よりも俺の気持ちをわかってたんだな。
『玲旺くん次第じゃないかしら?』
『素直になって、玲旺くん』
そうだな。そのとおりだ。だからこそ、まずは俺が本心を曝け出さなきゃな。
こんな男で、すまねえ。望愛にも美涼にも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
けど、俺はもう我慢しねえ。
ヒロインを漫画のような破滅から救いたいなんていうカッコよさげな望みも今は抜きだ。
実に悪役のクズ野郎らしい、密かに抱いていた強欲な望みを叶えるために全力を尽くす。
「美涼!」
俺は美涼の両肩を掴み、目と目を合わせた。
「っ!?」
「今から俺が言うのは心の底からの本心だ。だから美涼も本心で答えてくれ」
美涼に認めてもらえるように頑張るのはその後だ。
「な、何を……!?なんだっていうんだ、いったい……!?」
動揺が激しいのか、美涼の目は泳ぎ、その声は弱弱しかった。
「……俺は、美涼が好きだ」
俺は美涼の綺麗な瞳を一心に見つめ、身勝手極まりない本心を口にした。
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