腕の中に望愛がいる
俺は、一気に戸を引き、ぶっ壊す勢いで思い切り枠にぶつけた。
何も最初からそうしようと思ってた訳じゃない。
普通に開けようとしたが、机の上に倒されている望愛と、望愛の足を開かせるようにしてその間に立っている昇を見た瞬間、ブチキレちまっただけだ。
その構図が、漫画での玲旺と望愛に完全一致していたというのも大きい。
「お前、何やってんだ?」
感情そのままにドスのきいた声が出た。
俺は言いながら、ズカズカと二人の元へ近づいていく。
「な、なんで?どうしてお前が?」
「玲旺、くん……!」
俺の方を向いた姿勢で目をキョロキョロさせ動揺を露わにする昇と目に涙を浮かべる望愛。
「望愛から離れろ」
「な、なに――――ぐあっ!?」
俺は、昇を射殺さんばかりに睨みつけながら、襟首をグイっと掴み、望愛から引き離すように、そのまま後ろへ強引に投げ飛ばした。
昇は急に首を絞められた形になったからか、蹲りながら激しく咳き込んでいる。
望愛に視線を移した俺は、表情を歪ませた。
望愛はシャツのボタンを外されていたのだ。
心の中は怒りで荒れ狂っていたが、今優先すべきは望愛だ。
俺は、望愛の肩をそっと抱き、体を起こす。
「望愛。遅くなってすまない」
本気で申し訳なかった。
思えば、最初に話を聞いたときから、何かが引っかかってはいたんだ。
漫画の展開、この現実における俺達の関係、一学期末という時期、すべての要素を鑑みれば、俺だけは今回のことに辿り着けたかもしれなかったのに。
「玲旺くん!」
自分の足で立った望愛が、そのまま俺の胸に飛び込んできた。
俺も望愛を思い切り抱きしめ返す。
今、俺の腕の中に望愛がいる。
それが本当に嬉しい。
望愛の温もり、匂い、柔らかな感触、それらすべてが愛おしい。
そんな感情がもう誤魔化しようがないほど込み上げてきていた。
「怖い思いさせちまってわりい」
「ううん。玲旺くん、来てくれた。助けてくれた」
「もう、大丈夫だから」
助けられてよかった。手遅れにならなくて本当によかった。
「うん。……うん!」
俺達は一層強く抱きしめ合った。
もう、望愛を離したくない。
「は、離れろおおお!」
そこに、雰囲気をぶち壊しにするような怒声が響いた。
どうやらもう復活しやがったみたいだ。
望愛を離したくはないが、そうも言っていられない。
俺は昇をぶちのめすために、体の向きを変えようと思ったのだが―――。
「クソッ、お前ら!俺の目の前でなに―――」
「貴様はちょっと黙っていろ」
「なっ!?い、痛っ!?」
「玲旺君。望愛を助けて安心したのはわかるけど、まだ終わってないのに油断し過ぎだよ?」
四人目の、よく知る声と昇の苦痛の声が同じ方向から聞こえてきたため、俺と望愛は抱き合ったまま体を少し動かし、揃ってそちらへ顔を向けた。
「美涼さん!」
望愛が嬉しそうな声を上げる。
そう、そこにいたのは美涼だった。
合気道の技だろうか。慎也のときと同じように昇を押さえ込んでいる。
そう言えば、一緒に来ていたのにすっかり忘れてたな。
「望愛。間に合ってよかったよ。まさか玲旺君の言うとおり、本当にこんなことになっていたなんて」
安心したような笑顔で望愛に声をかけた美涼だったが、最後に昇へ鋭い視線を向けた。
しかしそれはほんの僅かな時間で、美涼はすぐに俺へ目を向けて苦笑した。
「玲旺君のそれは私のこと忘れてたって顔だね。まあ、玲旺君の勢いに呆然としてしまった私も悪いのかもしれないけどさ。ちょっとショックだよ」
ヤベッ、バレバレじゃねえか。そんな顔に出てた!?
ってか、ふくれっ面とまでは言わないが、ちょっと拗ねてないか?
「……すまん」
そんな美涼に俺ができるのは、素直に謝ることだけだった。
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