特別な意味を持つ日
ギリギリ本日中に間に合いました!(>_<)
そしてついに、7月17日金曜日となった。
今日は一学期の終わり、終業式の日だ。
それだけなら、明日から夏休み、と単純に浮かれることもできたんだが、俺、正確には漫画の龍賀玲旺にとって、この日は特別な意味を持つ。
なぜなら、空き教室で望愛の初めてを無理やり奪うのがこの日だからだ。
ただ、この世界はすでに漫画と違う流れになっているし、俺自身に望愛を襲うつもりなんてこれっぽっちもないため、当然漫画と同じ展開にはならない。
それでも、やっぱり思うところはあって、朝から妙に落ち着かなかった。
今日に至るまで、自分の中で明確な答えを見出せていないこともその原因なんだろう。
まあ、そもそも望愛からはまだ何も伝えられていないんだけどな。
もしかしたら、一学期中と言っていた昇との話し合いが実現できなかったのかもしれない。
そんなことを色々考えながら学校に来た訳だが、当然、帰りのホームルームまで何事もなく終わった。
けど、一つだけ。
教室で、最近すっかりなくなった昇の視線を感じたんだよな。
しかも、俺が気づいて目を向けたら、昇はサッと顔を逸らしたんだが、そのときあいつは、見間違いかと思うくらい、すげー醜い歪んだ笑みを浮かべてやがった。
あまりに気持ち悪くて、見た瞬間、思わず鳥肌が立っちまったぜ。
なんで俺を見ながらそんな顔をしてたのかはわかんねえが、その一回だけで、二度目はなかったから気にしないようにしたけどよ。
漫画では本当、普通の高校生って感じだったのに、この世界では、望愛との関係が漫画と全然違う形になってるし、結構拗らせてんのかもしれねえな。
そして、クラスメイトがそれぞれ思い思いに、下校したり、部活に行ったり、望愛のように教室に残ってお喋りしたりしている中、俺は、荷物を教室に残して、屋上へとやって来た。
別に何かある訳じゃない。
なんとなく、すぐ帰る気にはならなかっただけだ。
そうして、ボーっと突っ立ったまま、ぼんやりと景色を眺めていたら、扉の開く音がした。
「やっぱりここにいたんだね」
「美涼?どうかしたか?こんなところまで来て」
声でわかっていたが、振り向くとそこにいたのは美涼だった。
俺に何か用でもあるのだろうか。
「どうもしてないんだけどね。なんとなく、玲旺君の教室を見に行ったら、鞄があったから、もしかしてここにいるのかな、って。玲旺君こそどうして屋上に?」
「理由なんてねえよ。俺もただなんとなく来ちまっただけだ」
「そっか。ん~~、明日から夏休みだね~。玲旺君は何か夏休みの予定ってある?」
美涼は、俺の隣に並ぶと一度グッと伸びをしてから、訊いてきた。
「特にねえよ。強いて言えば、今年も海の家で短期のバイトをするくらいか」
漫画では、このバイトもサボって、夏休み中はあらゆるところでずっと望愛とヤってばかりだったけどな。
今となっては自分のことだが、普通に考えたら、マジでヤバい野郎だぜ。
どんだけ望愛にのめり込んでんだって話だ。
そのくせ、結局最後は捨てるしよ……。
「玲旺君、海の家でバイトしてるんだ!?すごいね」
「なんもすごくねえよ。美涼は?何か予定あるのか?」
「私は毎年、家族で旅行してるよ。後は友達と遊ぶくらいかな。でも、今年は受験があるから勉強も頑張らないとだけどね」
「美涼は受験生だもんな。けど、旅行も遊びもいいじゃねえか。息抜きにもなるだろうしよ」
家族旅行なんて、玲旺の記憶がある俺には、感情的に全くいいモノに思えないが、一般的には楽しいモノなんだろうからな。
「ふふっ、そうだね。……ねえ、玲旺君。夏休みにさ、玲旺君と望愛と私、三人でも遊んだりできるかな?」
「……俺は基本暇だからな。お前らの予定が合えばできんじゃねえか?」
なんでその程度のことを訊くだけで、そんな不安そうな顔してんだよ。
「そっか。…うん、そうだよね!」
そのとき、俺と美涼のスマホが同時に震え、バイブ音が重なった。
思わず顔を見合わせた俺達はそれぞれスマホを取り出し確認する。
届いていたのはメッセージ。
俺はそれを見た瞬間、頭が真っ白になり、固まってしまった。
「望愛からだね。けど、『た』って何だろう?」
美涼の声がやけに遠く感じる。
望愛のメッセージは俺達三人のグループに送られていた。
だが、そんなことはどうでもいい。
俺は、全身に悪寒が走り、心臓が早鐘を打っていた。
「なんで……」
頭が混乱して、そんな言葉しか出てこない。
『た』だけのメッセージ。
それは、漫画に出てくるものだ。
受け取ったのは昇。
玲旺に襲われそうになった望愛が、咄嗟に助けを求めようとしたのだが、すぐにスマホを玲旺に奪われてしまい、そのとき、偶然最初に入力した『た』だけが送られるのだ。
その後、メッセージを受け取った昇は、意味がわからず、メッセージを送ったり、電話したりするが、一向に望愛とは繋がらず諦めてしまう。
今まさに、望愛が玲旺に襲われているとも知らずに……。
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