ピンク髪ヒロインとの新たな約束
望愛の熱が、触れ合っているすべてのところから伝わってくる。
……本当、何やってんだろうな、俺は。
美涼を抱きしめてるときも思ったが、今はそのとき以上に強く思う。
それはさっきの望愛と同じように、顔だけを覗かせて、こっちを見てるヤツに気づいてしまっていることも原因の一つで間違いない。
「の、望愛ってば、自分からあんなすごい格好して……。エッチすぎるよ……」
口が動いているから、なんか呟いているんだろうが、ここまで届く声ではなかった。
やっぱこの状況カオス過ぎるだろ。
男女の関係がある訳じゃない。付き合ってる訳でもない。
そんな女がこの部屋には二人もいて、片方に見られながらもう片方を順番に抱きしめてるって……。
そのとき、望愛が小さく笑った。
「……やっぱりいい匂いだわ」
「またお前はそういうことを―――」
こいつ。固まってると思ってたら、俺の匂いを嗅いでやがったのか!?
いったいどういう感性してんだよ。
俺からすれば、望愛と美涼の方がよっぽどいい匂いがするっての。
「私、玲旺くんの匂い好きよ」
苦情を言ってやろうと思ったのに、望愛の言葉で止められてしまった。
それどころか、聞いた瞬間、心臓がどくんと跳ねた。
今のは、なんだ……?
「……言ってろ」
なぜか、さっきまで言おうと思ってた言葉は一つも出てこなかった。
それからまた望愛は黙ってしまった。
時折小さな笑い声がするくらいだ。
ただ、頭をぐりぐりしたり、腕の力が強まったり、腰の位置を調整したりと動きはある。
今も匂いを嗅がれてるのかと思うと妙に落ち着かないが、言葉が出なかったのは俺なんだからしょうがない。
もう一度あらためて口にする気にはなれなかった。
「……ねえ、玲旺くん」
そうしてしばらく時間が流れ、望愛が呼びかけてきた。
「なんだよ?」
「私ね、昇くんから連絡が来たら、きちんと向き合って、話をしてくるわ」
「ああ。話せるみたいでよかったな」
「ええ。そして、その日を最後にするわ。たとえどんな結果になっても、私の中でちゃんと終わりにできると思うの。一方的なものじゃなくてね?」
「そうか」
すると、ここで望愛が顔を上げた。
どちらかがもう少し顔を動かせば触れてしまうほどの近い距離だ。
望愛は頬を染め、真っ直ぐ俺を見つめる瞳は切なげに潤んで揺れていた。
「……それでね、話し合いが終わったら、私……、玲旺くんに伝えたいことがあるの。聞いて、くれるかしら?」
自分がこれからどうしていきたいのか、わからないと思ったのは少し前のことだ。
だが、どうやらそんなことを言っていられる時間はそう長くはないらしい。
「……わかった」
俺は覚悟を決めて、頷いた。
「~っ、あ、ありがとう……」
俺が返事をしたら、望愛は急にバッと俯いてしまい、その声は小さく、微かに震えていた。
なぜ、どうした、なんてことは思わない。
俺の視界には、柔らかそうなピンク色の髪と少し赤くなっている可愛らしい耳が映っているからな。
「礼なんていらねえよ」
今さら恥ずかしがる望愛がなんだかおかしくて、俺は声には出さず、小さく笑っていた。
だが、少しの沈黙の後、続けられた望愛の言葉で雰囲気は一変する。
「……れ、玲旺くん?なんだかお尻に固いモノが当たってる気がするのだけど、これってもしかして―――」
再び上げた望愛の顔は真っ赤になっていた。
「違う。断じて違うぞ、望愛。それはズボンの金具だ」
俺は最後まで言わせまいと即座に否定した。
こいつ、いきなりなんてこと言おうとしてやがる。
照れ隠しだとしても、それはねえだろ!?
こっちは反応しないように抑えてるってのによ。
そもそも、俺のが本当に大きくなってたら、気がする、なんてレベルじゃねえぞ。
なにせ、漫画で龍の如しと言われていたくらいだからな。
「そ、そうなのね。私てっきり―――」
「わかったから、そこから離れろ。でなきゃ床に降ろすぞ」
「ご、ごめんなさい」
望愛は謝りながら、俺に離れないと伝えるかのように腕の力を強くした。
「ったくよ……」
この変になっちまった空気どうすんだよ。
ってか、これマジでいつまで続くんだ?
美涼のときは望愛が終わらせたが、もう同じくらいの時間はとっくに経ってるんじゃねえか?
そんな俺の思いが届いた訳ではないだろうが、そこで美涼の遠慮がちな声が響いた。
「の、望愛~?そろそろ終わりじゃないかなぁって。料理、再開しない?」
見れば、美涼がさっきと変わらず、顔だけ覗かせている。
ただ、こちらから唯一見えている美涼の顔は望愛と同じように真っ赤だった。
ってか、位置もほぼ一緒じゃねえか?もしかして、ずっと見てたとかじゃねえよな?
意識の外にあったから、正確なところがわからねえ。
「美涼さん。そうですね。料理しましょうか。ということで玲旺くん。名残惜しいけど、私のお願いはこれで終わりよ。約束、忘れないでね?」
望愛が俺の首に回していた腕を戻す。
「おう」
「あ、待って望愛!?立つときはスカートに気をつけて!下着見えちゃうよ!?」
「ふふっ、わかってますよ、美涼さん」
俺はたとえ事故でも見えてしまわないように視線を逸らすのだった。
その後、少し早めの夕食が始まった。
望愛が作ってくれたのは、トマトソースのロールキャベツとポテトサラダ。
美涼が作ってくれたのは、しみしみの大根とゆで卵が入った豚の角煮とれんこんのきんぴらだ。
どれも見た目からしてすげー美味そうで、そこに、ご飯とみそ汁が用意されている。
みそ汁は美涼が作ってくれたそうだ。
ただ、この家にはこれほどの食器類はない。ってか、初めて見るものが多い。
そのことを聞いたら、二人で百均に行き、買ってきてくれたとのことだった。
俺は、美味い、めちゃくちゃ美味い、マジで美味い、すげー美味いなどと自分の語彙をフル活用して、二人に感想や礼を伝えながら、バクバクと食べ進めた。
そんな姿を二人に微笑ましく見つめられても、ちょいと気恥ずかしいだけで、食べにくいというほどではなかった。昼の弁当を食べさせてもらっていた経験のおかげかもしれない。
二人のお願いを叶えていたときとは全然雰囲気も違っていて、俺達は、三人で楽しく食事を進めることができた。
結果、俺は、二人から勧められるまま、おかずの半分以上を一人で食ってしまったのだった。
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