ピンク髪ヒロインの近況報告
そうして俺達は、駅前の雑居ビルにあるデザートビュッフェの店にやって来た。
ちなみに、この店を打ち上げ会場に選んだのは望愛と美涼だ。
去年オープンしたそうだが、二人ともまだ行ったことがなく、一度行ってみたいとずっと思っていたらしい。
俺だって当然行ったことなどないが、甘いものは嫌いではないし、何より二人が目を輝かせていたので、即オッケーした。
ただ、そういう店は女性客が多いはずで、少々不安になったため、俺みたいなヤツが行っても大丈夫なのかと、恥を忍んで、自分の顔面を指差し、二人に聞いてみたのだが、揃って今の俺なら大丈夫という回答が返ってきた。
なぜか、答える前に一頻り大笑いされたが……。
どうも、俺がこんなことを気にしたのが相当おかしかったらしい。
自分が極悪な人相をしていることは自覚してるし、学校とか街中での、これまでの俺に対する反応を考えれば、気を遣うのも当然だろ。
俺だって、折角なら気分よく楽しみたいからな。
笑われたときにそう伝えたのだが、返ってきた答えが、大丈夫、だったのだ。
理由は全然わからなかったが、結局俺は、自信満々な二人の言葉を信じることしかできなかったって訳だ。
店内に入ると、平日の昼間ということもあってか、席はそれなりに空いていたが、案の定大半が女性客だった。
何人かの客が、何の気もない感じで俺達の方に目を向ける。
視線に気づいた俺は内心、悲鳴を上げられるんじゃねえかって構えたんだが―――、そんなことは一切なかった。
女性の店員も自然な接客で俺達を席に案内している。
案内されながら、望愛と美涼が、ほぼ同時に俺の顔を見て、クスッと笑いながら「大丈夫だったでしょ?」と言ってきた。
二人とも俺が懸念していたことをしっかり覚えていたらしい。
なぜ?という疑問はあったが、何事もないならそれに越したことはない。
俺は、今日はとことん食うぞ、と気持ちを切り替えることにしたのだった。
席に着いてすぐに、俺達はそれぞれ食べたいものを取りに行く。
店内を見渡せば、中央には色とりどりのケーキやタルト、プリンやゼリーなどがこれでもかと並んでいる。フルーツコーナーやチョコレートフォンデュ、ソフトクリームもあり、さらには、自分でトッピングを楽しめるワッフルとパンケーキまである。そしてあまり目立たない位置だが、パスタとピザが三種類ずつあった。
大皿を手に持った俺が一発目に選んだのは、ピザとパスタだ。
昼飯がまだのため、まずはとりあえず普通の食事をして、二発目から色んなスイーツを腹いっぱいになるまで食べるつもりでいる。
望愛は、大皿にワッフルとパンケーキを載せている。ワッフルはチョコソースやナッツのトッピング、パンケーキはベリー系のフルーツとソースをトッピングしたようだ。どちらもホイップが盛り盛りになっていた。
美涼が大皿に載せていたのは、皿いっぱいの可愛らしいケーキやタルトだった。
さすがは女子といったところか。俺と違って、スイーツも昼飯代わりになるらしい。
そして、ドリンクバーからジュースを取ってきて準備は完了だ。
席に着き、全員がジュースの入ったコップを持つ。
「二人とも期末テストお疲れ様。今日はたくさん食べて、ぱ~っと楽しもう。乾杯」
「「かんぱ~い」」
美涼の音頭で俺達はコップをコツンとぶつけ合い、打ち上げが始まった。
最初のうちは、食べる方がメインで、雑談をしながら食べては、おかわりするというのを繰り返していたのだが、制限時間の半分が過ぎた頃には、全員かなりお腹も満たされてきて、食べながらのトークがメインになっていった。
そんな、まったりとした雰囲気の中でのこと。
「勉強の邪魔になりたくなかったので、テストが終わる今日まで黙ってたんですけど、私から美涼さんと玲旺くんに報告したいことがあって。聞いてもらえますか?」
「もちろん」「ああ」
望愛のそんなあらたまった言葉を受け、俺と美涼は注目する。
俺には望愛がどことなく嬉しそうに見えた。
「実は私、玲旺くんの家で話を聞いてもらった週末に、昇くんへメッセージを送っていたんです」
「そうだったの!?」
美涼も驚いたみたいだが、そんな早く実行してたなんて、俺も内心ちょっとびっくりだ。
「はい。ただ、既読はすぐについたんですけど、返信はすぐには来なくて……」
「そっか……」
予想はできてたことだが、美涼としても残念なんだろう。望愛が対話を望んでいたことを知ってるからな。
だが、当の望愛はそこでクスリと笑った。
「でもですね、テストが始まる直前に、夜、昇くんからメッセージが届いて、わかった、って。ただ、最後に一度だけちゃんと話したいから、テストが終わったら一学期中にはまた連絡する、って。私もできることなら話はしたかったので、今はその連絡待ちなんです」
「っ、よかったね、望愛!本当に!」
「ありがとうございます。美涼さんと玲旺くんのおかげで、昇くんも私の気持ちをわかってくれたみたいなので、もう別れることはできたと言える状況ではあるんですけど、最後にきちんと話をして、もしかしたら、お互い納得した上で、それぞれ前に進んでいけるようになるかもしれません」
……なんだ?このざわつく感じは?
望愛と美涼が笑い合ってる中、俺は言い知れぬ不安を感じていた。
なぜかは俺自身わからない。
望愛に関しては、漫画の知識も全く当てにならないしな。
けど、望愛の話を聞く限り、いい感じに話がまとまりそうなのは間違いないんだ。
……それなのに、なんでだ?
俺の中で何かが引っかかっていた。
こんなの、俺の杞憂であってくれよ?……頼むぜ。
俺は、ここにいない、見ることもできない何かに対し、無意識に祈っていた。
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