379.大学に潜むアレ③
丸っこい影はピザを持ってかくわえてか、器用に走っていく。
(なかなかの速度……!)
そして影は走っていって、茂みの角を曲がった。そこから先はごく小さな公園、緑の区画になっている。
区画の広さは普通の家程度……。
セリスとフォードたち(ルルはセリスに抱っこされている)も少し遅れて茂みを曲がる。
「……あっれー?」
「いませんね」
ふたりとも首を傾げる。
おかしい。
緑の区画には芝生と数本の樹木があるだけだ。
しっかりと追ってきたはずなのに、丸っこい影はいなくなっていた。
「どこかの茂みに入ったのかなぁ?」
「うーん、音はしませんでしたよ」
丸っこい影はルルに近いサイズ。
あの速度で茂みに突入すれば、必ず音がするはず。
だが、耳にも集中していたセリスはそのような音を捉えていなかった。
「きゅきゅい」
「ピザの跡もない? 確かに……」
茂みに入ったのなら、ピザのチーズやら欠片やらが痕跡としてあるのではというルルの指摘だ。
それはその通りで、茂みの周囲にピザを引っ掛けたような後がなかった。
「あの影はどこに行ったのでしょう……」
「きゅーい」
セリスとルルがうーんと唸る。
緑の区画にはあと樹木が数本あるだけで、丸っこい影は消えていた。
「……あ」
「どうかしましたか?」
「あそこ! 上にいる!」
フォードがずびしっと緑の葉が生え始めた樹木を指差した。
そこにはこんもりとした丸っこい影……が、もにもにと動いている。
どうやらをピザを食べているらしい。
絶妙な光加減で影の正体はわからないが、そこにいた。
「ま、まさか木登りを?」
「きゅーい!」
びっくりー!
と、ルルは頬をむにむする。
丸っこい影がびくっと反応して……動きを止めた。ピザを高速で食べ切ったらしい。
(木登りもできないこともありませんが……)
山のウォリス育ちであるセリスは、ある程度の運動神経を持っている。
この程度の木登りなら可能――しかし、角から消えて目を離した10秒ほどで丸っこい影は登っていたのだ。
さすがにそこまでの速度は出ない。間違いなく丸っこい影のほうが木登りは早いだろう。
「くぅ……」
丸っこい影は少し震えると、枝の上をぽふぽふと走っていった。
向かう先はすぐ近くの樹木の枝。
「あっ……!」
ぴょーん。ほんのわずかな距離ではあるが、影は跳躍して隣の樹木へと移っていく。
そのまま影はさらに進んでいき、どんどんと樹木の枝伝いに闇の中へと消えていった。
「……行っちゃった」
「ですね。まさか木登りから枝から枝へとジャンプできるとは」
「いいの?」
ふむ、とセリスはフォードの黒髪を撫でた。
「大丈夫です。謎の動物が捕まえられなかった訳が、少し解明できましたから。これは前進なのです」
えへん、とセリスは胸を張った。
大人の成果としては充分である。
「きゅーん」
「……うん、モグラじゃなさそうだよね」
「候補はかなり減りましたね」
もしあの影が精霊だとして。
魔力らしきものはほとんど感じなかった。
今、セリスの腕のなかにいるルルよりも弱い。
精霊のパワーは魔力に比例する。
あの魔力では身体能力を大幅に無視した行動は不可能だろう。
つまり元になった動物タイプもまた、木登りが可能だということだ。
成果はあった。影は取り逃がしたが、報告書に書ける内容(報酬に関係する!)は掴めたのだ。
【お願い】
お読みいただき、ありがとうございます!!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、
『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!
皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!
何卒、よろしくお願いいたします!







