377.大学に潜むアレ①
「ふっふふふーん」
フォードはご機嫌に夜の大学を歩いていた。セリスがフォードを覗き込む。
「ご機嫌ですね」
「うん、今日お母さん外出だから」
それはどういう意味なのだろう。と、セリスはドキドキしながらセリスは続きを促した。
「そ、それでご機嫌なのです?」
「お母さん、ウォリスにいた時はずっと閉じこもって……お家にいて、元気がなかったんだよ。でも本当に最近は楽しそうで――だから僕も嬉しいんだ」
フォードがそこでにこりと微笑む。
そこには一点の曇りもなく、母を案じる姿だけがあった。
セリスはエミリアについて、かなりのことを知っている。オルドン公爵の絡みで……並々ならぬ家庭環境であったと知っている。
虐げられ、家から出ることもほとんど許されなかった。実家も頼りにならず、まさに【閉じ込められ】ていたのたのだ。
「だから、お母さんが外出してる時は僕も嬉しいんだ。お仕事なんでしょ?」
「ええ、カーリック伯爵と打ち合わせだとか」
「ロダンお兄ちゃんなら、お母さんも安心だし! ね、だからご機嫌なの!」
うぅ……なんと賢くて、健気なんだろうか。
セリスはぎゅーっとフォードを抱きしめた。
「でも何かあったらすぐに言うんですよ?」
「うん、そうするー」
ぽむぽむと抱き合っていると、セリスの心も温かくなる。
「きゅー!」
そこでルルがぐいっーと茂みの中を指すように羽を伸ばした。
夜の闇が大学全体を覆い始める頃、ルルが何かを見つけたのだ。ルルの急な動きにセリスがびっくりしてルルの羽の方向に首を向ける。
「おわっ! やはり夜に!?」
「う、うん! 何か動いたって!」
セリスとフォードが離れ、ルルの示した茂みをじっと見つめる。だが、数十秒そのまま待っても、動きはなかった。
「あれー?」
「どうやらもう移動したようですね」
「速いんだね〜」
「ただ、悪いことではありません……。今まで私が昼に来て調べても手がかりはありませんでしたから」
ほえーとルル、フォードが頷く。
「えーと、見つかるかもってこと?」
「ええ、やはり人の少なくなった時間に来て正解でしたね」
この1か月、昼間の調査は完全に空振りだった。やはり警戒心が強いらしい。
ただ、今回は夜の始まりで人がぐっと減っている。そしてそこで目標……かもしれない動物に動きがあったかもなのだ。
「今の茂みの音からすると、サイズはそこまでではないかも……」
「きゅーん」
セリスもウォリス育ちでかなりの動物を知っている。
(馬は論外として、大型犬でもなさそうですね。大型の猫くらい……?)
茂みから即座に姿を消したことからすると、鳥でもなさそうだ。
さすがに鳥だと、茂みではそこまで機敏に動けないはず。
(爬虫類まで考えると切りがありませんが……)
「フォード君、例のものを」
「はーい!」
フォードが背中のバッグを前に下ろし、ルルを取り出す。
「きゅっ!」
「ルルを持ってて〜」
「はーい」
フォードからセリスへルルが渡される。それをセリスが上機嫌に抱えた。
「でー、ピザの箱を取り出してー」
ルルの足元には硬い紙の薄箱に収められたピザの箱があった。もちろんピザ丸ごとではなく、ホールの四分の一、クォーターサイズである。
それをルルが踏んでも大丈夫な紙の薄箱にいれていたのだ。
「じゃーん!」
フォードがピザの箱を取り出す。これは撒き餌である。
今のところ、目標は食べ物がない限り現れないようだ。
そして数々のインタビューの末、ピザがベストだと判断して用意したのである。
(大学に言っても準備してもらえるのですが、とりあえずこちらで複数用意して……反応を見てみましょうか)
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