376.ふたりの夜
「あなたにも多少の好き嫌いがあったのね」
「そのまま濃すぎる野菜や果物はどうしていいかわからなくなる。飲めない、というわけではないのだが」
ロダンはほとんど何でも食べて、好き嫌いはなかったように思った。
評価の高低はあるにしても。
「ウォリスにいた時も、あまり好き嫌いはないように思えたのに」
「根菜の類は、かなり戸惑ったぞ」
チーズ&クラッカーを食べながら、ロダンが述懐する。
「初めて聞いた。ウォリスには野菜が多いけど……根菜、苦手だった?」
山に囲まれた内陸国のウォリスには、野菜料理がとにかく多い。もちろん根菜料理も多い。
「バードラックの茹でて、そのままの料理は特殊だ」
「ああ……」
バードラックとはゴボウだ。
前世の記憶にあるゴボウとはちょっと味わいが違うけれど細長く、土に埋まっている。
ので、私はゴボウの仲間だと思っているのだけど。
「マズかったわけじゃないでしょ?」
「うむ……味は複雑で、苦味があって悪くはなかったが。こう、ビジュアル的にな」
「ロダンの美的センスには釣り合わなかったと」
「あれならそのまま出さず、切ってもいいような」
ふふりとエミリアは微笑んだ。
留学時代、ロダンは様々なカントリーギャップに苦しんだと思う。
その中でまさかゴボウが出てくるとは。
「根菜類もそのまま食べるのが、ウォリスでは上等と見なされているからね〜」
「そこは後々に理解した。だからストロベリージュースも……だ」
「あー、そのまま過ぎるってことね。確かに」
イセルナーレでは果物や野菜は香辛料や調味料を使い、形を変えて調理することが多い。
対してウォリスにおける野菜は結構シンプルだ。エミリアも実家で根菜類を洗って切った……ぐらいで食べたことがかなりある。
「ふー……」
ワインを飲んでいるといい気分になってくる。エミリアが椅子の上で脱力していると、ロダンが椅子を寄せた。
「疲れたか」
「シャレス殿との話はさすがにね」
シャレスがいたときよりも、遥かにロダンとの距離が近くなった。
よしよし。いいワインにロダンが近くにいて、エミリアは上機嫌になる。
それから他愛のない話をいくつかして――大学の話になった。
「最近ね、食いしん坊の動物が大学に紛れ込んでいるみたいなの」
「ほう、面白いな」
「ロダンのほうでそんな話は聞く?」
「いいや。まぁ、ネズミや野良猫程度の話は常にあるが……」
「実は今夜、セリスが大学に行って調べるみたいなんだけど。進展があるかしら――」
◆
一方、まだ夜の始まりの時間。
セリスはフォードとルルを連れて、大学に来ていた。
「眠くありませんか、フォード君」
「うん! 全然眠くないよー!」
セリスと手を繋ぎながらフォードが頷く。今日はエミリアの許可のもと、ふたりを連れてきていた。
「きゅい」
フォードの背にあるバッグの中に、ルルも収まっている。
その目は若干、とろんとしていた。
「ルルちゃん、頑張ってください。野生動物を見つけるのなら、ルルちゃんの視力が頼りなんですから」
「きゅ……!」
ルルの視力はペンギン特別視力であり、かなり良好。
その上、人間にはわからない微細な違い(肉の細かい焼き加減さえ)を判別できる。
ただ、なのでふたりに来てもらい……夜の大学へとやってきたわけだ。
食いしん坊動物は昼だと警戒心が強く、見つからない。少なくとも単純な罠にはかからなかった。
なので、夜。向こうのフィールドで調べてやろう――ということなのだ。
「さて、少しは成果を出さないとですね〜」
眼鏡をくいっとしながら、セリスは夜の大学へと進んでいく。
とりあえずは学食の近くから調べてみようか。
例の動物はルルではありませんので……!
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