375.ロダンの一面(非甘党)
「やっぱり濃かったのね?」
「甘さは嫌いではない。ケーキ類も嗜むしな。だが、このジュースは……訓練の後に飲みたい味だ」
「あっ、激しい運動の後ってことよね? それには同意するわ」
シャレスも帰ったことだし、お互いにふふりと微笑みあう。
さすがに外務大臣の前でイチャイチャするのは不可能だったので。
「この店は俺も初めてだ。ウェイターに色々と意見を聞いておきたいところではあるな」
「賛成、そうしましょ!」
早速、呼び鈴を鳴らしてウェイターに来てもらう。
そろりと個室へ来たのは、若い男性のウェイターであった。
「このストロベリージュースだが、美味ではあるもののイチゴの味に慣れていなくてね。レモネードで割ろうかとも思うのだが……」
ロダンがグラスを揺らしながら、気を遣って話す。そう、このような場では店へもどこへも気遣いが大切。
するとウェイターがやや眉を寄せる。
「え、ええ……ほとんどのお客様はレモネードや水で割っております……」
「…………」
な、なんだってー!?
エミリアはにこやかな顔のまま、心の中で叫んだ。
(うっそ、店もそのつもりだったの?)
「原液のようなものでございますので、相当に濃いかと。もちろん、そのままお飲み頂く方もいないではございませんが……」
「………」
つまりシャレスがストロベリージュースを飲んでいたのは……自分の趣味だった。完全にそういうことだ。
(よほど疲れてるのでは?)
ほろり。シャレスの胃腸と精神はもう甘い物でないと救われないほどだったということにしておこう。
エミリアのそんな思考が伝わっているのかは不明だが、ロダンは軽く咳払いした。
「ではレモネードで割るとしよう」
「ありがとうございます。お嬢様にはいかがいたしましょうか」
お嬢様、という立場ではないのだけれど。まぁ、悪い気はしない。
「連れと空けるから、ワインボトルを持ってきてくださらないかしら」
「かしこまりました」
ウェイターが頭を下げ、意味深な目線を送ってくる。
「ご予約頂いた方より、飲食代はすでにお預かりしております。食事をさほどされないのであれば、上等なワインをお出しできますが……」
おっと。シャレスは気が利く。
予算内であれば良いワインを飲めるらしい。
「では、そちらで。良いワインは常に飲みたいものですもの」
「承知いたしました」
店は高めのワインを出せて、エミリアたちはそのワインを飲める。
Win-Winと言っておこう。
ウェイターが一旦退室してほどなくレモネードのグラスとワインボトルを持ってきた。
料理も少々追加注文してウェイターは退室した。
ウェイターがいなくなってから、ロダンは優雅な手つきでレモネードをストロベリージュースに注ぐ。
しゅわしゅわ〜。
エミリアもワインボトルからグラスへと赤紫の液体を注ぐ。
香りは上々。結構良さそうだ。
「では、あらためて乾杯」
「乾杯〜」
エミリアがワインに口をつける。
ぐっとくる渋さと濃厚なコク。たとえるなら古木の味わい。
だが、味に対して余韻は重くない。
さーっと味が通り抜ける。
「いいワインね」
「これを飲んだら、俺もワインを頂こう」
ロダンが薄まったストロベリージュースを飲む。こちらのほうはお眼鏡にかなったようで、静かに頷いていた。
にしても、シャレスとの話は話として――ロダンのこういう一面が見られるとは思っていなかった。
これもまた、付き合いの面白いひとつだろうか。
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