374.下準備③
それは逆転の発想。
モーガンの遺産を破壊するための計画に、モーガンの遺産の情報を使う。
「なるほどな、一案ではある」
しかしやはり、シャレスは良い顔をしなかった。渋い顔で頷くだけだ。
ロダンもやや目を見開いて、驚いているようだった。
「盲点ではある。あえてこちらから釣り出すのか……」
「どのような経緯で杯がセリド家にあるのか、私もそれは知りません。しかしアレが秘匿された儀式に用いられていること、当主と近しい人間しか知らないことを考え合わせると――モーガンそのものが関わっているかと」
そこで扉がノックされる。絶妙なタイミングで料理の皿がやってきた。
チーズやソーセージの盛り合わせ、小皿が色々と。重い料理はひとつもない。ただ、ストロベリージュースとは合いそうだった。
料理の皿を置いたウェイターが早々に部屋から退室する。
クラッカーの上に乗る濃い乳白色のチーズ……。エミリアはひょいとつまんで口へと放り込む。
さくっとした音と強めの塩味。そこにまったりとしたチーズの旨味が融合する。
それでも塩味が強いのだけれど、ストロベリージュースの甘みとはよく調和する。先ほどよりもずっと良い。
「ふむ、ふむ……確かに、その通りだ。モーガンの情報で引き出せるものがあるやもしれぬ」
「杯さえ破壊できれば、情報を渡すことに問題はない――ですよね?」
「他に波及しなければ、な」
シャレスの懸念もわかる。
モーガンについての情報はそれ自体が危険要素を含んでいる。
「ロダン、君はどう思う?」
「現状、強硬手段を取らないならば良策かと」
シャレスはそこで長いこと考え込んだ。
エミリアは仕方なく、さらにソーセージへとフォークを伸ばす。
決してお腹が空いているというわけではなく。
(いや、こんな真面目な雰囲気じゃお腹は空くけれど……)
ジューシなーソーセージを、はむはむ。こちらも結構な胡椒と塩気。
だけど肉がみっちりと詰まって、脂と旨味は凄い。何もかも濃い味だ。
もしかすると、この店は全部が濃いめなのかもしれない。
「モーガンの遺産を使う件は、前向きに検討しよう。セリド家の現状、支障は少ない……だろう」
シャレスも冷静に考えて、エミリアと同じ結論に達したようだった。
その後は小皿の料理を食べながら、魔術交流会の話へと移っていく。
「メンバーを選抜しなければならんが、向こうの警戒を解く必要もある。人選は慎重にしなければな」
「何人か推薦できる人がおります」
エミリアがガネット、キャレシーの名前を上げる。ロダンもふたりは知っているので、同意してくれた。
「このふたりは才能ある学生です。エミリアとも交流があり、適切かと」
「わかった。問題がなければ、メンバーに加えよう」
あとは交流会での希望や流れ、その素案を聞かせてもらう。
本来であればエミリアが聞くのはもっと後なのだけれど……まぁ、まぁ。
そしてある程度、話が終わるとシャレスは先に帰ることになった。
「少し会議があるものでな。ここで失礼する」
「お疲れ様です……」
相変わらずシャレスは忙しそうだ。
まぁ、外務大臣なので自分たちとは比べ物にならない。
で、エミリアはロダンと残されてディナーを共にすることになった。
まだロダンのストロベリージュースは残っているのだが……。しれっと顔色を変えないまま、ロダンが言い放つ。
「レモネードで割るか」
さすがのエミリアも、それには同意するしかなかった。
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