371.下準備②
ならば、エミリアが止めることなど何もない。
キャレシーはもう未来を見ているのだから。
「キャレシー、あなたの決断は素晴らしいわ」
「そ、そうかな? ぱっと先日の試し合いで思い付いただけ……だよ」
キャレシーが頬をかく。
「思いつきで構わないのよ」
「…………」
「よく考えても思いつきでも、そんなことは関係ない。運命の分かれ目というものは、通り過ぎるまでそうだとはわからない――ことだって多いから」
「運命の分かれ目……」
「そうよ。でももうひとつ、忘れないでね。人生の道は数多く枝分かれしているの。違うと思ったら、変えていい。それも自由だから」
「センセーって、やっぱり変わってるよね」
キャレシーの言葉にエミリアは微笑む。これでもかなりの経験を経てきているのだ。
「普通の先生は、そんなことは言わない……と思う。でも今のあたしには、すごくありがたいかも」
ほっとしたようなキャレシーの顔。教え子のそんな顔を見られて、エミリアもまた内心でほっとした。
教職の役目は人を教え、導くこと。
それは様々な角度から道を示すことだとエミリアは思っている。
「実は今度、7月8月の夏季休暇に大々的な魔術交流会を行う予定なの」
「へぇ〜。センセーにぴったりじゃん」
「成績優秀者な学生も参加できるんだけど……」
このくらいまではロダンから言っていいと許可を貰っている。
どのみち、やるならちゃんと……ということらしい。
「キャレシー、参加してみない?」
「あたし……? 1年生だけど。あたしより凄い学生が上にはいない?」
「今の予定では各学年から選抜するから、学年で優秀なら構わないわ」
「……なるほど」
選抜自体は当然、夏季休暇より前に行う。できれば試験より前の5月には色々と確定させたいらしい。
「まぁ、無理にとは言わないけれど。場所はウォリスだし」
「えっ、そうなんだ……」
キャレシーが腕を組む。
「ウォリスには行ったことない」
「なんと」
「すっごい山の国とは聞いてる」
「アンドリアからすぐ北なのに……」
「野菜が美味しいんだってね」
「そこ……?」
「あたしの周りだと、ウォリスの印象ってそんくらいだよ」
なんてこったい。
ちょっとしたカルチャーショックだ。
しかし考えてみると、鉄道が普及しているとはいえ観光でもないとウォリスには行かない気もする。
なにせ技術的にはイセルナーレのほうが進んでいるし、大国だ。
あえて山や川、自然を楽しもうという人でない限り……向かう理由には乏しいのかも?
「あたしでオッケーということは、ガネットも対象?」
「まだ当人には聞いていないけれど、そうなるかな」
ただ、ガネットは来そうな気がする。魔術交流会は未来の有望魔術師たちの人脈作りにも有用だ。
そのような機会を見逃すとは思えない。
「だよね、うん」
キャレシーはうーんと唸った。
「ガネットはさ――」
「ええ」
「あたしのこと、どう思ってるんだろ」
「……」
エミリアの見る限り、ガネットは特段キャレシーのことを恋愛的な意味で愛してはいない。
(どちらかというと、ライバル……? 同類?)
ガネットはかなりのガキだ。
異性よりも力。
贅沢よりも力。
その辺りは一貫している。
(キャレシーのほうが、先に意識してきてるもんねー……)
本当は逆のほうが良かったかもだが、難しい。これは様々な経験値としてガネットのほうが上だから仕方ないのだが。
「あなたのことをとても気に入っているとは思うわよ」
とりあえず無難な言い方で、エミリアは伝えることにした。
【お願い】
お読みいただき、ありがとうございます!!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、
『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!
皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!
何卒、よろしくお願いいたします!







