369.大学の不思議な
2月に入り、大学の後期が始まった。エミリアはルールーからの資料を参考にしつつ乗り切っていく。
もちろん大学講師としての仕事自体は、軌道に乗れば多くない。
ので、魔術ギルドの仕事も並行ではあるが……。
そんなある日。ギルドの事務所へ精算に行くと、フローラから応接間へと呼ばれたのだった。
「妙な依頼が来たのよね」
「ほうほう」
「大学でモノが――食べ物がなくなるという噂は聞いているかしら」
「はい、まぁ……あの大学ならあり得るかなぁと」
イセルナーレ魔術大学の敷地は広大で、茂みも林も人の立ち入りが少ない建屋もある。
なにせ馬も飼っているんだし。
うっかり食いしん坊な動物が住み着いても不思議ではないだろう。
「それがどうも精霊なんじゃないかって」
「……精霊? 大学に通っていますが、精霊の気配はなかったような」
とはいえ、エミリアの感知力も万能ではない。
あまりに小さい精霊ならすり抜けることもある。
「そうよねぇ。エミリアさんが察知できないとなると、相当に小さい精霊よ」
紅茶をひとすすりして、フローラがカップを置く。
「依頼というのは、その謎の食いしん坊を見つけることなの。見つけてどうするかは、その時次第。まずは調査ということらしいわ」
「大学で調べないのでしょうか」
「結構、依頼料が安いのよね」
……なるほど。
大学の正規職員の給料からしたら、見合わない。
だから外部に安く調べさせよう、ということか。
(大学の運営費は寄付や税金からだから、しっかりしているなぁ……)
「精霊関連かもとなるとやれる人が限られるし……」
「ふぅーむ……。今の大学に詳しいのも少ないかもですしね」
「そうそう。だから声がけをしたのだけれど」
フローラの口振りからして、エミリアが断ってくることもすでに含んでいそうだ。
エミリアはそこでひとりの顔が思い浮かんだ。
「……セリスはどうでしょうか?」
「彼女? 確かに……精霊魔術も習得しているわ」
「あとは動物が大好きなので。喜ぶと思います」
セリスならどういう動物が相手でも真剣に、やれるところまで調べるだろう。
調査料との兼ね合いは、当人が考えることとしても。
「初夏までに色々とやらなくてはいけなくて……」
「――雲を掴む依頼でもあるし。エミリアさんも後期で教えるのは初めてだものね」
◆
そして後日。
エミリアの家にセリスが勢いよくやってきた。
「あの依頼、譲って頂いてありがとうございました……!」
セリスは感動しながらぶんぶんとエミリアの手を握り、振っている。
「いえ、むしろ押し付ける形にはなっていないかしら……。私が断ってしまった結果でもあるのよ」
「そんな、全然です! いいじゃないですか、謎の動物……もしかしたら精霊なんて!」
「精霊と決まったわけではないのよ?」
「しかし普通の動物なら、さすがに捕まるような……。大学の精鋭からも逃げ続けているのでしたら、精霊かもです!」
そこでフォードが読んでいる本から顔を上げた。
「どんな精霊なんだろー」
「きゅーい」
ルルがふにっと羽を掲げる。
「きゅっ」
「食いしん坊なら、お仲間かも……? うーん?」
そこまではわからない。
ただ、今のところつまみ食いと隠れんぼ以外の行動はしていないようだ。
果たして精霊なのかどうか、セリスの調査に期待するしかないだろう。
つまり、これは新しい――。
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