368.セリド家の兄ディーラ
やはり、と思うほかなかった。
エミリアの両親はすでに亡くなっており、セリド公爵家は兄のディーラが継いでいる。
しかし……あの兄はエミリアを血の繋がった家族とはみなしていないだろう。
ロダンがちらりとフォードとルルのほうに視線を送った。
「……大丈夫よ。続けて」
「モーガンの杯について、シャレス殿はウォリスには内密にする方針を取った。ウォリス王家がどこまで知っているか不確かなのもあるが、余計な情報を与えることは好ましくないという判断だ」
「賢明ね。私もそれでいいと思う」
セリド公爵家の持つ杯について、ウォリスの王家はほとんど何も知らない――とエミリアは思っている。
(あの儀式を知るのは、公爵家の血を引く者でも多くなかった。当主の直系と2親等くらいかしら……)
セリド公爵家の領地はウォリス政府の代官が統治していたとはいえ、内々の儀式を知る余地はなかった……はず。
「残っている墓堀人もいるかも知れないしね……」
「その通りだ。そして君を交流会のメンバーにしたことで、セリド公爵家と接点を持つ必然性も生まれた」
「ふむふむ、そうね」
「普通ならイセルナーレに来た君との面会や実家への訪問程度は問題ない……というところだろう。普通ならな」
「……でもまぁ、ウチは普通じゃないしね」
どんな反応をしたのか、エミリアにはなんとなくわかる。
そういう家だからだ。
ロダンがじっとエミリアを見つめる。
「シャレス殿がウォリス経由でセリド公爵家に問い合わせたが、一切拒絶されたそうだ。面会も訪問も参加も。何もしたくない。が答えだった」
「でしょうね」
もし普通の家なら、元夫とのアレコレの時にエミリアも実家を頼っている。
だが、そうならないからエミリアはフォードを連れてイセルナーレへ来たのだ。
「色々と飴を用意しても不許容だったそうだ。初めてのケースでシャレス殿もいたく困惑したらしい」
「『大変申し訳ありません。そういう家だから』と伝えてほしいわ」
苦笑せざるを得ない。
まぁ、前世の知識を持ってから、エミリアもようやく異常性に気付いたのだから。
「それで奥の手を使ったとシャレス殿から連絡が来た」
「何となく想像はつくけれど……」
生半可なことではセリド家は動かない。それでも話をまとめた、ということは……。
「俺と君が親しい仲であるとほのめかしたそうだ」
「やっぱりね」
ふぅんとエミリアは椅子に深く腰掛けた。あの兄が興味を持ちそうなことは、そのぐらいしかない。
自分のいないところでロダンとの仲を吹聴されるのは――少しアレだが、今さらである。
あの夜会からエミリアとロダンの仲について、貴族界では公然のはず。
「シャレス殿からは代わりに謝っておいてくれ、と言われている。すまなかった」
「いいの。……いつかは決着をつけるべきことだったし」
ロダンと結ばれることについて、ディーラの許可は必要ない。
だが、一報くらいは入れようと思っていた。
それが今、別の機会とともにやってきたというだけだ。
「じゃあ、フォードとルルも連れていけるのよね?」
「ああ、そうだな。それと大学経由で連絡があるはずだが、有望な学生も連れていくことになるだろう」
「……有望な学生ね」
ぱっとふたりの顔が思い浮かぶ。
ガネットとキャレシーだ。
「いつ向かうのかしら」
「予定よりも手の込んだことになったからな。夏季休暇くらいになりそうだ」
大学の学期は2月から6月まで。
7月から8月が休暇だ。
「結構、時間があるわね」
「その間、シャレス殿は用意を整える。君も……まだ先だが、心構えはしておいてくれ」
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