365.息子の心
そして翌日、やや日が高くなってロダンは屋敷へと帰ることになった。
本当に忙しいことだ。
「んーむ、ロダンお兄ちゃん……またね」
「ああ、またな」
まだパジャマ姿のフォードが目をこすりながらロダンを見送る。
「きゅい」
「ルルもまた」
ルルが頭を差し出し、ロダンがふもふもと撫でる。
「また動物の話、聞きたい〜」
「……すぐ会えるさ。俺も不思議な動物のことをもっとよく調べるよ」
「約束だよー!」
こうしてロダンはエミリアの家から去っていった。
片付けをして落ち着いてから、エミリアはフォードに問う。
真剣な問い……のつもりだった。
これからのロダンとの関係について。フォードからも聞かないといけない。
どくどくと心臓が動く。
でも、どこかで確かめないといけない。
「ロダンと一緒にいて、どうだった?」
「んー? 楽しかったよ」
「きゅい!」
フォードはロダンと相性が良さそうだった。でも……まだわかっていないだけかもしれない。
「例えばだけどロダンが家族になったら?」
「家族……ルルみたいに?」
ふにふに。フォードがルルのお腹を両側からもみもみする。
うーんと考えてから、フォードはルルの頭に顎を少し乗せた。
「そうなってくれたら嬉しい、かなぁ?」
「きゅー」
「……お父さんはお母さんを泣かせてた。でもロダンお兄ちゃんはお母さんを笑わせてる。だよね?」
「きゅっ!」
エミリアの胸が苦しくなった。
フォードは本当によく見ている。オルドン――元夫といたときはそうだった。
フォードは……よくわかっていた。
(でもそれはフォードの気持ちじゃない……わよね)
エミリアはロダンと一緒にいたいけれど、フォードはどうなのだろうか。
結局のところ、それが大事なのだ。
「ロダンお兄ちゃんがずっといてくれるなら、嬉しいよ」
フォードはまっすぐにエミリアの瞳を見て、言い切った。
「安心できるもん。ねー、ルル?」
「きゅーいー」
「……ロダンのこと、好き?」
「うん、大好き!」
フォードがにこっと微笑んだ。
もちろん全てがこのままかどうか、わからないけれど。
でもお泊りしていったロダンに対して、フォードは抵抗がないようだった。
ふぅ……と心の中で一安心しながらエミリアがちらりと時計を見る。
早くも昼食の時間だ。
と、そこで玄関の呼び鈴が鳴った。
「誰だろうー?」
「きっとセリスよ。新年の挨拶に来たんだわ」
彼女もイセルナーレにとどまり、新年を迎えると言っていた。
玄関まで出向いてドアを開けると、やはり訪問者はセリスであった。
「新年、おめでとうございますー!」
「おめでとう、セリス」
フォードもしっかりとセリスにお辞儀をする。
「おめでとー、セリスお姉ちゃん!」
「きゅーいー!」
「んふふ、フォード君もルルちゃんも元気良く新年を迎えられたみたいですね! いいことですっ!」
セリスがフォードとルルの前に屈んで、むぎゅーと抱きしめる。
そこでセリスがエミリアにこそっと聞いてくる。
「……お邪魔ではないですよね?」
「え? 全然大丈夫だけれど」
何をもってお邪魔と考えていたのだろうか。
と、セリスがルルの背中をさわさわしながら続ける。
「いえ……ただならぬ魔力の持ち主がいたような気がしたもので」
どきり。
エミリアが心の動きを顔に伝えないよう、注意を傾ける。
「わかるの?」
「それはまぁ、貴族学院ではそこそこの成績でしたので」
そうだった。セリスもイセルナーレ魔術ギルドにストレート合格できる程度には上澄みの魔術師だ。
もちろんいつもならロダンも魔力を隠し切るだろうが、昨日今日は隠匿が甘くなっていた可能性が……ゼロではない。
まぁ、隠すようなことでもないのだけれど。
「こほん、大丈夫よ……!」
「それなら……ふふ、エミリアさんも幸せそうですものね」
んふふ、とエミリアはセリスの笑みに同調する。彼女はウォリスとイセルナーレを知る大切な友人だ。
「さぁ、上がって。クラッカーを食べて、お茶しましょ」
「うん、一緒にお話しよー!」
「はーい、お邪魔します!」
こうして新年はだらだらと……仕事もなく楽しくエミリアたちは過ごしたのだった。
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