364.これからの
新年の花火が終わり、ふたりはうとうとしながらソファーで話をした。
昔の話、イセルナーレに来てからの話、そして今後の話も。
「カーリック家は、俺の代で終わりになってもいいと思っている」
「ロダン……」
彼が自分の実家について、複雑な想いを抱えていたのは充分に知っている。
。
ただ、彼自身からはっきりと聞いたのは今が初めてのように思う。
それは今日が特別だからだ。
「イセルナーレの貴族特権は徐々に剥奪され、市民の時代になるだろう」
「そうね、法治と市民の時代がくる。魔術の分野ではまだ……歩みは少し遅いけれど」
魔術においてはまだ家柄や血統主義が蔓延っている。
だが、それも変わるだろう。
イセルナーレ魔術大学では家柄で差別することはない。
少なくともエミリアが関わる部分において、点数付けの加減をするよう指示もなかった。
ウォリスはまだまだ露骨だが、きっと血統主義的ではなく世俗的な教育機関が主導権を握るようになる。
「大学で試し合いをしても感じた。人が増えて才能がきちんと見出される世界になれば、俺や君のような人間は必須でなくなる」
エミリアはセリド公爵家の器として生まれ、育てられた。
「今から振り返ると、結構しんどかったわ」
虐待に等しい魔術の訓練。そしてフォードに才能は引き継がれなかった。
しかし、それがどうだと言うのか?
フォードは好奇心旺盛で読書が好き。このまま学業に精を出してくれれば、どうにかなる。
「俺も……結局のところ、人に俺と同じ道を歩ませる気にはなれない」
ロダンの超絶的な魔術にも異常な訓練と努力があったはずだ。
二重の意味があるとエミリアは気付いていた。フォードと……。
エミリアはロダンの手を取った。
「カーリック家はイセルナーレとあなたのものよ。私がどうこうしようとは思わない。あなたが望むことが、きっと正解だと信じてる」
「……ありがとう」
ロダンとの未来。
それはイセルナーレの貴族制と密接に結びついている。
「シャレス殿もおおむね、俺の見解に賛成している。貴族制は役割を終え、市民による時代がくると」
「魔術においても、彼ならそう考えるでしょうね」
「墓堀人やモーガンの遺産を破壊しようとするなら、そう考えるのが自然だ。魔術は一部の特権階級による武器ではなく――市民の扱う技術として」
「嵐の杖のようなものがある世界より、ない世界のほうが……私はいいわ」
強力な兵器を持つと人の心は変わってしまう。過ぎたる力は人を恐怖させ、駆り立てる。
精霊魔術もそのような側面があるが、完全には制御できない。
それは精霊という気まぐれな存在に依存しているからだ。だから全てが人の手にあるわけではない。
ウォリスも世界最高の精霊魔術国家でありながら、世界最強の国からは程遠い。
「俺もそう思う」
ロダンの手がエミリアの黒髪を撫でる。この数日でずいぶんと遠慮がなくなった気がする。
でもこれはいいことだ。彼が触れてくれるのだから。
(ロダンはちょっと遠慮がちなのよね。そこが可愛いところだけど)
ロダンの白い手がエミリアの耳をかすめる。
ふにふに。
耳を触られると妙な感じがするが、全然嫌ではなかった。
強いて言うなら……彼の触り方がルルのお腹を触っていた時とすごくよく似ている気がする。
(私の耳はルルのお腹と同じ感触? それともそーいう触り方なだけ?)
わからぬ。けどまぁ、それだけ愛らしいのだと前向きに都合良く考えることにしたのだった。
動物と似たような触り方をしてしまう。
そんなこともあると思います。
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