363.新年にあなたと
年末の一日。
フォードとルルがお昼寝に入り、残されたロダンとエミリアはふたりでリビングにいた。
外からは笛や太鼓の音が聞こえてきている。さほど大きな音量ではなく、ロダンと話しているとかき消えてしまうくらいだ。
「年末のお祝い?」
「ああ、終わる年と新しい年を祝してな」
イセルナーレは何かにつけて街並みも色濃く、陽気な雰囲気だ。
つまり騒げる時は騒ぐというべきか。そのような機会では飾り付けや音曲を逃さない。
「うるさくはないか?」
「大丈夫。むしろ心地良いわ」
音楽は無秩序ではなく、一定のリズムとほどよい音量で続いていた。
この辺りは規則主義的だ。
フォードとルルも起きる様子はなく、すやすや寝ている。
エミリアもロダンの腰にくっついて……うとうととしていた。
「なら、良かった」
ロダンの手がエミリアの黒髪を撫でつける。その手つきは優しく、心の底から安心できた。
「ねぇ……」
「なんだ?」
「……ロダンは眠くならないの?」
「ふむ……」
ロダンが少し考え込む。
「正直に言うと、少し眠い」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「……実は君が起きる少し前に目を覚ましていてな。もう一度眠ろうと思ったが――緊張して眠れなかった」
「えっ……」
エミリアが顔を上げると、ロダンが横を向いた。
恥ずかしがっている……!
「悪いか」
「ううん。あなたでもそんなことがあるんだと思って」
「俺も初めてだ」
ロダンが顔を戻し、エミリアの頬に手を添える。
「君が俺の懐に潜り込んでくるからだな」
「あはは……」
それを言われると反論できない。
気持ち良く酔っ払って、ロダンに甘えてしまったのだから。
「でも意外だ」
「な、なにが?」
ロダンの声が低く、甘くなる。
「今もだが、エミリアから俺にくっついてくるなんてな」
そうかもしれない。
あの頃は自分からこんなにベタベタしたがるなんて、思いもよらなかった。
ウォリスにおいて、貴族同士の結婚に情熱はない。家柄だとか打算がとても大きいからだ。
でも、今は違う。
エミリアは祖国を捨てて、ロダンもまた家柄を捨ててエミリアを見ていた。
心の結びつきと情熱がそうさせるのだ。
「俺もまだ、君のことを言うほど知らないのかもな」
「そうかもね。お互いに……不安?」
「いいや」
ロダンが優しく微笑む。
「楽しみだ」
◆
それからエミリアとロダンも昼寝をして、また夜になって。
新しい年の節目となる零時がやってきた。
フォードとルルは耐えきれずにすやぁ……と新年を過ごすわけだけれど。
「さすがに5歳が起きてるのは無理だったか」
「まぁまぁ、来年もあるから」
窓から新年のイセルナーレを眺める。
王宮から花火が打ち上がり、ぱっと赤色の花が夜空に咲いた。
新年を祝う花火だ。
遠くから歓声が聞こえる。
さらに何発か、王都の色々なところから花火が打ち上がる。
青色や黄色。とにかく大きな花火が夜空を照らす。
「……綺麗ね」
「ああ」
ロダンは午前中には屋敷に戻り、次の出勤に備えるのだとか。
なので一緒にいられるのはあと半日もない。
惜しいようだが、それほど寂しくはなかった。彼と心の距離が近いおかげだ。
「今年もよろしく、ロダン」
「こちらこそ」
ロダンがエミリアの額に口付ける。
温かくて、嬉しい。
空の星は輝き、人の手による花火が咲いては散る。
最高の新年の始まりだった。
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