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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
4-2 ふたつの因縁

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363/368

363.新年にあなたと

 年末の一日。

 フォードとルルがお昼寝に入り、残されたロダンとエミリアはふたりでリビングにいた。


 外からは笛や太鼓の音が聞こえてきている。さほど大きな音量ではなく、ロダンと話しているとかき消えてしまうくらいだ。


「年末のお祝い?」

「ああ、終わる年と新しい年を祝してな」


 イセルナーレは何かにつけて街並みも色濃く、陽気な雰囲気だ。


 つまり騒げる時は騒ぐというべきか。そのような機会では飾り付けや音曲を逃さない。


「うるさくはないか?」

「大丈夫。むしろ心地良いわ」


 音楽は無秩序ではなく、一定のリズムとほどよい音量で続いていた。


 この辺りは規則主義的だ。


 フォードとルルも起きる様子はなく、すやすや寝ている。


 エミリアもロダンの腰にくっついて……うとうととしていた。


「なら、良かった」


 ロダンの手がエミリアの黒髪を撫でつける。その手つきは優しく、心の底から安心できた。


「ねぇ……」

「なんだ?」

「……ロダンは眠くならないの?」

「ふむ……」


 ロダンが少し考え込む。


「正直に言うと、少し眠い」

「あ、やっぱりそうなんだ」

「……実は君が起きる少し前に目を覚ましていてな。もう一度眠ろうと思ったが――緊張して眠れなかった」

「えっ……」


 エミリアが顔を上げると、ロダンが横を向いた。

 恥ずかしがっている……!


「悪いか」

「ううん。あなたでもそんなことがあるんだと思って」

「俺も初めてだ」


 ロダンが顔を戻し、エミリアの頬に手を添える。


「君が俺の懐に潜り込んでくるからだな」

「あはは……」


 それを言われると反論できない。

 気持ち良く酔っ払って、ロダンに甘えてしまったのだから。


「でも意外だ」

「な、なにが?」


 ロダンの声が低く、甘くなる。


「今もだが、エミリアから俺にくっついてくるなんてな」


 そうかもしれない。

 あの頃は自分からこんなにベタベタしたがるなんて、思いもよらなかった。


 ウォリスにおいて、貴族同士の結婚に情熱はない。家柄だとか打算がとても大きいからだ。


 でも、今は違う。


 エミリアは祖国を捨てて、ロダンもまた家柄を捨ててエミリアを見ていた。


 心の結びつきと情熱がそうさせるのだ。


「俺もまだ、君のことを言うほど知らないのかもな」

「そうかもね。お互いに……不安?」

「いいや」


 ロダンが優しく微笑む。


「楽しみだ」



 それからエミリアとロダンも昼寝をして、また夜になって。

 新しい年の節目となる零時がやってきた。


 フォードとルルは耐えきれずにすやぁ……と新年を過ごすわけだけれど。


「さすがに5歳が起きてるのは無理だったか」

「まぁまぁ、来年もあるから」


 窓から新年のイセルナーレを眺める。


 王宮から花火が打ち上がり、ぱっと赤色の花が夜空に咲いた。


 新年を祝う花火だ。

 遠くから歓声が聞こえる。


 さらに何発か、王都の色々なところから花火が打ち上がる。


 青色や黄色。とにかく大きな花火が夜空を照らす。


「……綺麗ね」

「ああ」


 ロダンは午前中には屋敷に戻り、次の出勤に備えるのだとか。

 なので一緒にいられるのはあと半日もない。


 惜しいようだが、それほど寂しくはなかった。彼と心の距離が近いおかげだ。


「今年もよろしく、ロダン」

「こちらこそ」


 ロダンがエミリアの額に口付ける。

 温かくて、嬉しい。


 空の星は輝き、人の手による花火が咲いては散る。


 最高の新年の始まりだった。

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