333.母とセリスと家族と
「はっ!? 動物学……!」
セリスが今気付いたような顔をした。
「そういえば魔術以外にも頑張れば道があるのでしたね。貴族学院では想像外でしたが」
「確かにね」
ぽりぽりぽり。
ふたりしてクッキーを食べる。
今度は小麦粉と乳製品の味が強め、のったりしたクッキーだ。
生地もしっとりと力強く、乳製品の風味がある。
紅茶とセットでなければ、かなり強めの主張だ。
「チーズが練り込んでありそうな?」
「多分そうね、なるほど……」
含まれたチーズはそれほど多くはない。だが、やはりそこはチーズ。
少しの量でも主張は激しい。
「でも美味しいですね。さらなる満腹感も得られるような」
「チーズは暴力的でもあるからねぇ」
前世の地球ほど調味料の揃っていない、この世界。
チーズなどの発酵製品の出番、役割は多い。
エミリアはしないものの、迷ったら酢やチーズ、コンソメスープを使っておけという風潮はある。
「んぐっ、今なら魔術以外の道もあり得るというのは……盲点でした。実家でもそのような話は存在しなかったです」
「ふふっ、私もよ」
ウォリスの女性貴族は貴族学院を卒業すると、結婚して家庭に入るのが一般的だ。
それは選択ではなく、風習――つまり積極的な理由が無い限り反対できないことを意味する。
「今も学院を卒業したら結婚が一般的?」
「私の周りはそうですね。男爵や子爵などは緩やかになりつつあるようですけれど」
下級貴族では変化が起きつつある、ということか。
それでもイセルナーレに比べれば非常に遅い歩みではあるが。
(セリスはどうなんだろう……?)
離婚の事情に巻き込まれ、セリスはここにいる。
今の仕事について……セリスは問題なく出来るが、好きかどうかを考える余地はなかったかもしれない。
彼女には色々な道を見てもらい、好きなところに進んで欲しい――と思っている。
「何かやりたいことがあったら、相談してね。力になるから」
「ありがとうございます……!」
というところで用意したクッキーも食べ終わり、セリスも帰っていった。
エミリアも寝支度を整えて寝室に向かう。
ベッドではフォードと彼の腕に抱かれたルルがすやすや寝ていた。
「きゅる〜……」
ルルは布団の端をふにふに噛んでいる。
そのくちばしの動かし方は、クッキーを食べている時と同じだった。
「ごめんね、ルル……それはクッキーじゃないの」
エミリアは布団の端をすすっとルルのくちばしから外す。
しかしルルのくちばしはまだもにょもにゃと動いていた。
「……こっちのタオルでね」
綺麗だが最悪ダメになっても良いタオルをルルのくちばしにセットした。
はむ……。
ルルはタオルをはみはみする。
(よほど美味しかったのかしら?)
それはそれで嬉しいことではある。
タオルは犠牲になるしかないが……。
エミリアは布団に潜り込んで、ふたりのそばで目を閉じる。
「うーん……お母さん……」
フォードがほぼ寝たまま、エミリアに寄ってきた。
「きゅー」
ルルもタオルをくわえたまま、エミリアの胸元に転がってくる。
でも起こしたわけじゃなさそう。
よかった。
「……うふふ」
幸せそうな寝顔のフォードとルル。このふたりのそばにいられるのはエミリアの喜びだ。
「明日も頑張ろーっと」
試験の採点やら何やらがある。
日々は回る。母は色々とやらねばなのだ……!
タオルくん、さようなら……;
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