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リオンとアメリア(仮)  作者: 絶対守護天使ちゃん
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第5話 アメリア・マジック

「そういえば、まだコーサスさんの娘の事教えてもらってないですよ」


「そうだったっけ?」


「そうですよ」


「でもまあ、会えばわかると思うし。もしかしたら私よりも詳しいかも」


 今、俺とアメリアはエントランスの前で、コーサスの娘が来るのを待っているところだった。時間はとっくに過ぎているが、いまだに来る気配はない。

 昨日、コーサスの娘が来るとアメリアから伝えられてから、コーサスの時のような指示は受けてなかった。アメリアは自然に対応してくれたらいいと言っている。今日はその言葉を信じることにした。


「今日は上手くいくといいですね」


「そうね」


 家の外から馬車特有の音が聞こえてきた。昨日も来た音と似ているが、昨日よりも音が大きい。その音が速い速度で近づいてくる。馬車はこんなに早く走れるものなのかと、考えていると、その馬車が屋敷に突っ込んできた。止まるか不安で少し体を引いたが、アメリアは引くことをしなかった。なれたことかのように、馬車はアメリアの直前で止まった。


「お久しぶりです。エイール・ルミアート様」


「わー!久しぶりー、リオンくん!」


 馬車から飛び出た女性は出迎えたアメリアをスルーして、俺の方に飛び込んできた。ほんとの文字どおりに飛び込んできた。何とか受け身の姿勢はとれたが、俺は後ろに倒れてしまう。


「誰かと、思えばエイール様だったんですね」


「学校卒業して、リオン君の職場であったとき以来だね!元気にしてた?」


「エイール様も元気そうで何よりです」


「ありがとー!見ないうちに、またかっこよくなってない?」


「あのそろそろ、降りてもらっていいですか」


 いま、倒れた俺はエイールに馬乗りされた状態でいる。エイールとは、学校で同学年であり、その頃から彼女はこんな感じだった。


 そんな、親の横にいたアメリアはいつもの事かと、咳払いを入れた。


「そろそろ、移動しませんか?用意しているお茶菓子が冷めてしまいますので」


「そうね、私ったらはしゃぎ過ぎちゃった。さ、いこっかリオンくん」


 エイールは倒れた俺の腕を引っ張り上げ、立ち上がらせる。そして、勝手を知っているかのように屋敷の中にどしどしと入っていった。


 エイールは俺の中で一番接してきたことの多い貴族だ。俺の貴族へのイメージの大部分が彼女によって構築されている。彼女を一言で説明するならザ・お嬢様で金髪縦ロールは標準装備、学校ですらアクセサリーをジャラジャラとつけていた。それに、似合うだけの容姿を持っていることが、なおさら彼女の性格に拍車をかけた。


「リオン君、その口調何とかならないの?」


「何とかならないのと、言われましても……」


「えー、学校の時はもっと尖ってたじゃん!そっちの方が私は好きだなぁ、もちろん今もかっこいいけど」


 エイールをコーサスと同じ応接間に通したのはいいが、アメリアをそっちのけで俺と話をしてばっかりだ。それに、アメリア自身もエイールの邪魔にならないように、俺の横で何もしゃべらずお茶をすすっていた。


「あの頃の俺は、なんというか……社会を斜めに見ていたところがあるので……」


「そうだったのー?でも、一人称が俺なのは変わらないんだね」


「はは、僕とかはしっくりこなかったんです」


「確かに、リオン君はおれだね」


 アメリアに言われたように、なるべく自然に話せるようにしていた。しかし、コーサスの時のように台本がないので、言葉を返すのにも一苦労だ。緊張感はあの時よりましであるが、エイールとのほうが身体的には大変だ。


 エイールの受け答えに付き合っているところで、唐突にアメリアが口を開いた。


「エイール様はご結婚とか考えてらっしゃいますの?」


 アメリアが口を開いてくれたのは、助け舟といったところだ。だが、その内容は状況を悪くするようなものに感じられた。別に結婚の話そのものが悪いわけではないのだが、俺とエイールはほんの少しの期間だが恋人だったことがある。もちろん、他の誰にも言えないし、言ってもいないが、その話をエイールに出されるとまずいことになりそうだった。


「そうそう、結婚ね。実は——」


 エイールには珍しく、声量を絞った語り出しだ。そして、エイールが言った名前に一番動揺したのは、俺だった。


「モーテムと結婚を考えている?」


「ええ、やっぱりあの人しかいないかなって」


 俺が驚いたのは、エイールの言った男が平民だったからだ。平民と貴族をほんとに気なにしないというか、エイールの場合はただの面食いである。それに、モーテムという男を俺は知っている。まさしく俺と一緒に学校に通っていた学友だ。俺と別れた後、モーテムに行ったという噂は本当だったのか。でも、彼には学校に入る前からの婚約者がいたような気がする。


「そうなんですね、エイール様」


「彼はとってもかっこいいのよ。それに、私の言うとおりに動いてくれるしね」


「もう、叔父様にはお話を?」


「ううん、まだ。もっといい出会いがあると思ったら、まだ踏み切れなくて。そう、今のリオン君と私のように、ね」


 エイールは俺をつかんで自分に近づけた。俺は耐えを引かれ、前かがみになる。


「はい?」


「ねぇ、リオン君、私と結婚しない?アメリアの御付きなんてやめてさ」


 モーリスはただのキープだったのか。それに、エイールは俺のことをアメリアの御付きといった。まだ、俺とアメリアが結婚を考えていることを知らないようだ。アメリアの手紙では言ってなかったのだろう、それに、モーリスもこのことを娘にも言ってなかったのか。


「それでですね、エイール様?」


「私も結婚を考えていますの」


「そうなの!?早く教えてくれればよかったのに!」


「そこで、エイール様にお願いが」


「なあに?」


「叔父様に私の結婚を認めてもらえるよう、説得していただけないでしょうか」


 ついにアメリアが本題に入った。それにしても、結婚相手が俺であることを隠すような言い方だ。平民とも言っていない。


「いやだわ」


「そこを何とか、なりませんか?」


 エイールの解答は拒否だった。エイールはもともと他人の頼みごとを受けるような人でない、分かり切った答えだ。俺もこのことは知ってるくらいなので、幼馴染で昔から昔から面識があるアメリアも分かっていると思うが。


「いやですけど。でも、なにか。それに見合うお返しがあるなら——」


 エイールは少し返答を鈍らせた。


「エイール様、ありがとうございます」


 アメリアはエイールのこの言葉を待っていたのだろう。エイールが口に出したところですぐさま食いついた。

 

 アメリアはエイールの求めるものを提示できるのだろうか。いや、できる見立てがあったからこそこの言葉を待っていたのだろう。それに、エイールがお返しと言ったとき視線が俺に向いていたような気がする。


「ここからの話は、私とエイール様だけで話しましょう」


「もちろん、かまわないわ」


「そういうことだから、“御付き”の君は部屋を出てもらえる?」


 この部屋にいるは俺とアメリア、それにエイールの三人だけだ。御付きなんて呼ばれる人は誰もいない。御付きと口にしたアメリアの目は俺を見ている。——つまり、そういうことなのだろう。理由は分からないが俺をここでは御付きとしたいらしい。それに対して俺はアメリアに言われたとおり、自然に対応をする。


「かしこまりました。お嬢様」


 すっと、立ち上がり一礼してから部屋を出ていく。エイールからは「また後でね、リオン君」と言われ、アメリアからは、何もなかった。


 その後、二人がどんな話をしていたのかは知らない。応接間から出た俺は書斎に戻って本の続きを読んでいた。いつでも呼び出されても良いように服は崩さずに待機していたが、次に呼び出されたのはエイールの見送りの時だった。


「じゃあね、リオン君」


 それだけ言い残して、屋敷から去っていった。去っていくときも、来た時と同じで馬を全力で走らせていった。


 もっと、話が長引くのではと考えていたが、あっさりとした別れの挨拶だった。帰るときのエイールは来た時よりもご機嫌だった。あんなに機嫌がよさそうだったのに、別れにたった一言しかしゃべらなかったことに、俺は少し恐怖を覚えた。一体、俺が応接間を出たあと二人はどんな話をしたのだろうか。


 エイールが訪れてから、二日後。コーサスから結婚を認める旨の手紙が届いた。手紙には、この地区もアメリアが引き継ぐことも書かれている。最後には『Cousas,M』とコーサスのサインも。


 ——俺とアメリアは本物の夫婦になった。


元カノがいるのに、修羅場にならない!?さすがアメリア様。

次はアメリアからの種明かしです。

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