レオナさんの恋愛
「レオナさん、お疲れさまです」
「あっ、セツナ様」
イケメンナイツに氣の使い方を伝授し終え、自室に戻っているところ、女性の護衛を主な任務としているレオナさんと出会った。
アッシュを石化から助ける時に少しだけお話しできたけれど、ちゃんと顔を合わせることができたのはマリーの誕生会以来になる。
相変わらず美しかっこいい。
こんな女性に気さくに話しかけられるってだけでうれしくなってしまう。
「最近忙しいみたいですね」
「はい、色々と行事が重なる時期でして…」
少しだけ立ち話をして、お互いの近況を報告し合う。
「セツナ様、噂で聞いただけなのですが、アッシュやロックさんなどの騎士たちと一対一で交流を始めたというのは本当なのですか?」
「あっ、はい、その通りです」
レオナさんのことだから、きっとオブラートに包んで訪ねてくれている。
実際の噂はもっと品が無いものかもしれない。
聖なる巫女とはいえ、注目の的である男性たちをとっかえひっかえしているのだ、何を言われていても不思議ではない。
「説明しにくいのですが、これから魔物と戦うにあたってみんなの力が必要でして、その準備をしているだけと言いますか…」
「そうだったんですね」
レオナさんがふと何かを考え始める。
すると、レオナさんの心拍数が少し上がり、顔が火照り始めたのに気が付いた。
「あ、あのですね…セツナ様」
なにやらすごく言いづらそう。
「その、失礼を承知で相談させていただきたいことがあるのですが…」
「な、なんですか?」
「わ、わ…私に、男性との関わり方を…教えていただけないでしょうか?」
「………えぇ?」
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場所を移して、私の自室。
マリーが用意してくれたお茶とお菓子を囲い、私とレオナさんがテーブルに座っている。
相談させてもらっている手前、レオナさんがだいぶ固くなっている。
それ以前に、私に相談していること自体が間違いである。
私が噂通りの女子であるなら、有意義なアドバイスができたと思う。
しかしその実態は、全員惚れさせると息巻いておきながら、何もできずに二人目が通過している。
私は複数人の男性から好意を寄せられている。レオナさんにはそう見えているのだろう。
いや実際そうなのだろう。自分で言うのもあれですが…。
だけど、私の何がよくてそうなっているのかは、わからないのが正直なところ。
ここ最近、たくさん褒めてもらえているけれど、自分ではやっぱりわからない。
とはいえ、こうなってしまった以上私にできることをしましょう。
「レオナさん、男性との関わり合い方なのですが、具体的にはどういったことなんですか?
その、私からしたらレオナさんの方が詳しそうな気がするのですけれど…。
男性に混じって訓練したり、ロック様たちとお酒飲んだりしているんですよね?」
「はい、たしかにそこらへんは慣れたものと言いますか、日常になっていると言いますか」
レオナさんから、なかなか具体的な話が出てこない。
こうなってくるとさすがの私も察してくる。
「もしかして、いつか言っていた今のお仕事を紹介してくれた人と関係があります?」
ぴくりとレオナさんが反応する。どうやら当たりだったようだ。
ということは、これは恋愛相談確定である。
こっちまでドキドキしてくる。なにせ真面目に恋愛を話すのは人生で初めてになるからだ。
「わかりました、私も覚悟を決めます。まずは私の話を聞いていただけますか?」
視線を合わせてくれなかったが、レオナさんがぽつぽつ心境を教えてくれた。
その人のことを、最初は人間として尊敬していた。
お城に来てからもちょくちょく面倒を見てくれたし、ロックさん達とも繋いでくれた。
ある時、飲みの席で男性たちが女性の好みについて話し始めた。
その時、その人の好みが自分であったらいいなと願った事と、そうでなかった事にショックを受けた自分に気が付き、その人の事を男性として好きだったことを自覚したそうだ。
「ですが、かと言って何かできるわけではありませんでした。
私たちは任務は違えど、同じ王国の戦士。そういう私情を持ち込むべきではない…と思っていました」
レオナさんはとても真剣に話している。
私はというと、その生々しい感情の動きにずっとドキドキしながら聞いていた。
ヘタなドラマを観ているよりずっと興奮する。それを押さえるのが一苦労だった。
「実は最近、その人と私の関係に近い男女が結婚することになったのです。
それを聞いてしまったら、なんだか自分の気持ちを誤魔化せなくなってきてしまいまして…」
か、かわいい…。今のレオナはすごく乙女に見える。
顔を赤らめ、声を震わせながらその人への想いを語る。
なんとなく聞き始めた私も、その気持ちを助けてあげたいと思うようになってきた。
「ですが今更どうにもできないです。
仲間として関わることができても、お…女として関わることができなくなっていまして…」
ここでしばらく沈黙してしまう。
「あの、レオナさんと同じ任務をしている人たちとかには、聞けなかったのですか?
できるなら、その結婚した人とか」
「それも考えたのですが、その、自分でいうのも恥ずかしいのですが、急に私らしくないことができなかったと言いますか…」
…なるほど。
レオナさんは誰にでも、私の第一印象通りのキャラできているのだろう。
ただ、なぜかアッシュには好きな人がバレて、結果的に他の人より仲が良くなったと。
ん?それってちょっとまずくない?
好きな人に勘違いされていたりしないかな?
「それで、経験豊富、かつ、まだ自分をさらけ出す余地があったセツナ様に、相談させていただいた限りです」
だいたいの事情は把握できた。
私に相談してきたのもやむなしと言ったところ。
しかし、いったい何を言ってあげればいいのやら。
「えーと、そうですねー…。まずはアピールするチャンスとかってありますか?」
「それが近々あるのです」
おわっ、とりあえず時間稼ぎで聞いてみたら話が進んでしまった。
「実は、その人と二人きりで特殊な任務にあたることになりまして、これで何もできなければ私にはもうチャンスが無いと思っています」
「と言いますと?」
「こ…恋人同士と偽っての潜入捜査です。演じるにあたって、少し準備期間的なものが設けられました」
…これはまたベタな。
「任務に私情を挟むのは厳禁ですし、潜入中は当然何もできませんが、自然とその人に近づける機会にこれ以上のものはないかと」
「たしかに色々とやれる口実を作れそうですが、任務に真面目ってことで片づけられたりしませんか?」
「わかっています。だから、何か一つでも手ごたえがあれば、あの…えと…その…、いっそ告白してしまおうかと」
お…おぉ…、これはまた大胆な。
今まで何もできなかった分思い切るのは良さそうな事だけど、これはこれで危うさを感じる。
「なので、女性として男性に関わる方法、強いては女性が恋人に実際にしていることを教えてもらえればと思っています」
覚悟を決めたと宣言しただけあり、かなりの意気込みを感じる。
問題は、私がそれに答えれるだけの力量が無いということ。
アッシュにも聞いてみたら?と言いたいところだけれど、おそらくアッシュの方から余計なお世話をすでにしている気がする。
となると、まずできそうなことと言えば…。
「マ、マリーはどう思う?なにか似たような話を聞いたことがあるとかある?」
私は後ろで聞いていたであろうマリーに聞いてみる。
「そうですねー…」
マリーが少し考える。
「どうも男性はやさしくされると好意を抱く傾向があるようです。結構ささいな事でもそうらしいです。ただ、すでに親しくされていているとなると、ちょっと私にはわからないですね」
んん?さり気なく経験豊富そうな感じを出さなかったマリー?
「やさしく…ですか?具体的にどうってのはありますか?」
「具体的にですか?そうですね、大変そうだから手伝ってあげたり、何かのついでに飲み物をあげたり、そういう当たり前のことがいいらしいですよ」
ねぇマリー?いつかその話を聞かせてもらってもいいかな?
「なるほど、献身的な女性が好まれやすいということでしょうか?
母親的な要素を求めているということかもしれませんね」
レオナさん、プロファイリングみたいになっていますけど、そのやり方でいいのかな?
「しかし、今回は恋人という設定があります。そのくらいの気遣いでは、足りない気がします…」
レオナさんが肩を落とす。
「そうなりますと…」
マリーが少し遠慮がちにこう言った。
「周りに見せつけるくらいの…スキンシップがいいのではないでしょうか?」
「ス…スキンシップ…」
レオナさんの顔から火が出る。
「恋人同士という設定があるのでしたら、手を繋ぐどころか腕を組むのも普通かと思います。
あまり良いとは言えませんが、ある程度露出が多い服を着たりして、多少強引でも、まずは女性として意識してもらえるようにするのが大事かと」
私そっちのけで話が進んでいく。
もうこれからマリー先輩と呼んでもいいでしょうか?




