集うイケメンナイツ
アッシュの復活劇から一週間が経った。
魔人の襲撃や、魔物群れの発生が続いたため警戒体勢が強められていたが、特に何事もなく平穏な日々を送った。
そして今日。私にとって、ちょっとした記念日になる。
私はマリーに案内されながら、とある部屋へと向かっている。
なんだか緊張する。
ついにこの日が来たかと思うと胸が高まった。
その部屋のドアまで来ると、マリーが無言で私の方を向いた。
私は深呼吸をすると、こくりと頷く。
コンコンとノックをして、マリーがドアを開ける。
私は部屋へと足を踏み入れる。
ここは広めの客室になっていて、長いテーブルが真ん中にある。
その周りに、9人の男性が私のことを待っていた。
「セツナ様、おはようございます」
正統派イケメンにして第一騎士団の団長を務めるキョウヤ様がさわやかに挨拶する。
イスには座らず、ドアの近くに立っていた。
「おっ、ついに主役の登場だな」
ワイルド系イケメンで同じく騎士団長のロック様、私を見るなり獣耳がぴくぴくと動く。
こちらはイスに座り、テーブルに頬杖をついている。
「………」
ミステリアスでちょっと恐めなイケメン魔術師のジル様は、ちらりと私を見るだけですぐに外の方へ視線を戻してしまった。
窓際に寄りかかり、一人ぽつんと立っている。
「待ってましたセツナちゃん」
同世代でちょっとチャラいムードメーカーのアッシュが手を振る。
ロック様の横に座り、背もたれに寄りかかって楽にしていた。
「「おはよう、お姉さん」」
将来有望なキュート&ジーニアスの双子、アルフレッドとマルグリッド。
知っている人たちとは言え、関わりが少ない大人ばかりの部屋で少し緊張気味に座っていた。
「おはようございます。いい天気ですね」
元傭兵であり今はやさしき神官のオズワルド様が笑いかけてくれる。
双子の隣に座り、一人だけ紅茶を飲んでいた。
「おい、これはいったいなんの集まりなんだ?」
口は悪いが自分に素直で、意外にいい奴なボガードがぎろりと視線を送ってくる。
テーブルの端に一人で座り、いい姿勢で腕を組んでいる。
「あっ…セ・セツナさん…」
気弱だけれど神技を持つ曲芸師、クリスさん。
唯一知っているボガードに寄らず離れずの距離で、縮こまっていた。
私が全員と視線を合わせている間にマリーがドアを閉める。
部屋の奥へと歩いていき、マリーが引いてくれたイスの前に立つ。
「クリスさん、お久しぶりです。よかった、ちゃんとお城に来てくれたんですね」
居心地が悪そうにしているクリスさんを気遣って声をかける。
「ま・まぁ、国王様から直々に呼ばれたって団長が喜んでましたから…。
でも、これはいったいなんの集まりですか?…っていうか、なんで僕だけ?」
「急にごめんなさいね。それをこれから説明します」
部屋を一回見渡し、小さく息を吸う。
「みなさん、おはようございます」
少々固めな挨拶をする。
みんな知っている人たちなのに、全員にってなるとなぜかかしこまってしまう。
しかしまぁ、なんて見事な景色なんだろう。
私の視界の中に、イケメンナイツが勢ぞろいしている。
この時をどれだけ待ちわびたことか…。控えめに言っても感動している。
神々しいと言ってもいい。
私は目を閉じ、この瞬間を確かに記憶した事を確かめる。
これから私は、この方たちと…。
「ふふ…」
つい照れ笑いが零れてしまう。
「なに一人で笑っているんだ?」
ボガードにつっこまれて現実に戻ってくる。
「ごめんなさい。こうしてみんなを目の前にしていると、色々と思うところがありまして」
「あっ、もしかして、この中から誰を選ぶか決めたの?」
アッシュの発言で一瞬ピリッとした空気が流れる。
あれから、アッシュ復活後の出来事には誰も触れなかったのに、わざわざみんながいる所で言ってのけるあたり、わざとだとしか思えない。
うやむやにはさせないよ?とでも言いたいのだろうか?
上等です。
私も心の準備をしてから、ここへ赴いているのですから。
「今日はみなさんに、大事なお話しが3つあるため、ここに集まっていただきました」
事前に何を伝えるかオズワルド様に相談して、人知れずリハーサルもしっかりやった。
あとは、照れずに全部出しきれるかだ。
「1つ目は、聖なる巫女の守護者についてです」
「守護者?」
ロック様が頬杖をつくのをやめて、こちらに体を向ける。
「はい。実は、聖なる巫女には7人と1組の特別な存在がいます」
「7人と…1組…」
アッシュが一人一人指をさしながら数える。
この部屋にいる人数と一致して、少し驚いてみせる。
「そうです。みなさんがその守護者…ィ…イケメンナイツなんです!」
だ…だめだ。言っていて恥ずかしい。
なんでこんなストレートな名前を付けたのだろうか?
でも、守護者なんて曖昧な表現だと他の何かと混同してしまうかもしれないから、正式名称を使う他なかった。
「イケメン…ナイツだぁ?」
ボガードが声に出して言う。
あっ、これもしかして日常的に飛び交うようになる?
そう思うとやめればよかったかな?と少し後悔した。
「ナイツはたしか騎士のことですよね?…イケメンとはどういう意味なのですか?」
キョウヤ様がいたって真面目に質問をしてくる。
「そ・それは…、私がいた世界の言葉で…"聖なる"という意味です」
"イケてる面貌"とはさすがに言えなかった。
「僕らが…」
「聖なる騎士?」
双子を顔を見合わせる。
「そう、今まで黙っていましたがみなさんは特別な存在で、魔物を倒すためには欠かせない人物なのです」
「ま・魔物を…倒す…?」
クリスさんにとってはまったくの寝耳に水。
いきなり一人でお城に来いと言われ、実は魔物を倒すことになりますなんて…。
私のせいとは言え、同情してしまう。
「クリスさん、本当にごめんなさい。不意打ちのような真似をしてしまって。
でも、どうしてもあなたの存在が必要だったんです」
私は頭を下げて謝罪する。
私を責めたわけではなかったので、真剣に謝られて口ごもってしまった。
「それは何を基準に決まっているんだ?」
少し離れた所にいたジル様が近づきながら訪ねてきた。
「それについては、私がこの世界に来る前から決まっていたとしか言えません。
だけど、それがみなさんなのは絶対です」
私がそう言い切ると、それぞれが顔を見合わせ合う。
納得がいく人選から意外な人物まで、統一性は感じられない。
それもそのはず、このメンバーは決して魔物を倒せる強さで決まっているわけではないのだから。
すべては、乙女たちの好みに応えるため。
なので、魔物が強くなってきていて、魔人なんていう私も知らないモノまで出てきた以上、その現状を放置しておくわけにはいかない。
もう、アッシュが石化させられてしまったような失敗をしたくない。
「そして2つ目は、みなさんにはこれから本格的に氣の特訓を受けてもらいます!」
そのために真っ先にやらなくてはいけない事。
それは、みんなにイケメンナイツであることを自覚してもらった上で、戦えない者は戦えるように、強い者はより強くなってもらう必要がある。
さらにもう一つ理由がある。
ガルマと名乗った魔人は相当手強かった上に、まともにダメージを与えられたのは一撃だけ。
ただ、なぜその一撃だけは効果があったのか?
私が導き出した結論は、氣だった。
あの時、私は氣を使って戦っていたが、直接氣を相手に向けたのはあの一撃のみ。
魔法がどうかは不明だが、少なくとも物理攻撃は無効と考えた方がいいだろう。
となれば、イケメンナイツにとって氣をマスターすることは必須になる。
「みなさんには氣の特訓に集中してもらうため、他の業務は誰かに引き継いでもらいます。それについてはすでに国王様から許可をいただいているので、各々引き継ぎ先を考えておいてください」
オズワルド様が簡潔に補足してくれた。
「なんだいいじゃねぇか、俺は大賛成だぜ」
元々氣に関心が強いロック様が喜んでいる。
「俺は最初から一人だから、あまり関係ないな」
ボガードもひねくれた言い方で問題無いことを伝えてくれた。
「氣の特訓ですか…セツナ様の強さに近づくためには必要ですが…」
色々と責任が多いキョウヤ様は戸惑っている。
同じく自分の研究を持っているジル様もいい顔をしなかった。
しかし、これは我慢してもらうしか他ない。
最終的には王国の平和に繫がると信じて。
そして、私は3つ目について話を始める。




