↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
74/210

豹変

オズワルド様は私たちを見ることもなく、一瞬で横を通り過ぎる。

背中の方からサソリたちを撃退している音がした。


あれが、あの温厚なオズワルド様なのだろうか?


「………化け物」


マルグリッドがかすかな声でそう言った。


「…僕たちの村で暴れていた…あの化け物」


アルフレッドも震えながら言う。


えっ?どういうこと?

表情や反応から、単なる気のせいではないことが伺える。

しかしそれだと、二人の村を襲ったのはオズワルド様だということになってしまう。


そんなことがあっていいのだろうか?


ゴーレム出現から始まり、サソリの襲撃、オズワルド様の豹変、それに怯える双子。

目まぐるしく状況が変わり、私も混乱しかかってしまう。


まずはここにいちゃだめだ!


私はサソリが少ない所を探す。

サソリは下から登って来ているようで、上の方は比較的少なかった。

その内でも高く盛り上がった岩には一匹もおらず、私は足に氣をめいいっぱい集中させて駆け上る。

そこにはスペースがあり、私は二人を岩の上に下ろす。


二人は四つん這いのまま、サソリたちと戦うオズワルド様を見ている。

大量に群がってくるサソリを、荒々しく蹴散らすその姿はたしかに化け物と言えなくない。


「ねぇ…本当に村で見たのは、あのオズワルド様なの?」


二人は何も応えてくれない。

だた俯き、地面に顔を伏せる。


そんなわけない。そんなことあってほしくない。

でも、記憶の奥底にたしかに刻まれていたその姿。

現実と記憶と願いの狭間で苦しんでいる。


そして私も選択を迫られていた。

オズワルド様との約束通り、二人を連れて山を下りるか。

それとも…。


「ねぇ」


私は二人を抱き寄せる。

私と頬をすり寄せ、二人の意識が少しだけ戻ってきた。


「二人は…どうしたい?」


二人の肩を強く寄せる。


「オズワルド様は二人を逃がすために戦ってくれている。だけど、あの数じゃいつかやられちゃう」


仮にすべてを倒せたとして、自力で山を下りることができるのか?

それだけじゃない。

もし、もしそうなった時、本当のことをオズワルド様から聞けないままになってしまってもいいのか?

私は一番そこを心配した。

二人のことを想い、厳しくも優しく育ててくれたのはオズワルド様だよ。

このままでいいわけ…ないよね?


アルフレッドが私の腕からすり抜ける。


「…助けよう」


そう言って、リュックを下ろすと中から何かのパーツを取り出し、それをマルグリッドに見せる。

それを見たマルグリットもリュックを開け、別のパーツを取り出す。


パーツは1つではなく、色んな形の物が出てきて、それが一つの武器に組み上がる。

言うなれば、それは小型のガトリング銃。

ただし打ちだすのは弾丸ではなく…。


「手裏剣…」


チェーンのように繫がれた長い手裏剣の列が、ガトリング銃に取り付けられる。


「お姉さんが投げ方を参考に作った僕たちの新しい武器」

「二人でなら、これで戦える」


二人の目からギラギラとした光が灯る。

戦う覚悟を決めた男の子の目をしていた。


その覚悟に、私は応えることを決める。


「それ、どこまで狙える?」


私は飛び出る準備をしながら二人に尋ねる。


「オズワルド様がいる辺りだと、誤差5メートルくらい…。

ごめん、まだ実戦で使えるレベルにはなっていないんだ」

「だけど、あのサソリを倒せる威力は保証するよ」


「それだけ聞ければ十分」


私は二人に指示を出す。

そして、私はオズワルド様のもとへと跳躍した。


それと同時に、地上の方からけたたましい射撃音が聞こえてくる。

砂が舞い上がり、岩が砕け、サソリたちが次々と倒されていく。

手裏剣の雨はオズワルド様を避けるように弧を描いて伸びる。


少し遅れて、私は最初の着弾点に着地する。

クノイチが間違っても手裏剣を踏むことなんてありえない。

近くに落ちている手裏剣を何枚か拾うと、オズワルド様の所へ駆けつける。


圧倒的な強さを見せつけていたオズワルド様も、限界が近づいてきていたのかダメージを受けて始めていた。

前のいるサソリに気を取られ、背中に一匹しがみ付かれる。

それを振り払いたいが、他にも襲い掛かってくるサソリがいるので手が回らない。


「たあ!」


そのサソリが噛みつこうとしたところを、私が蹴り飛ばす。

それと同時にオズワルド様の肘打ちが私にとんできた。

当たる寸前で受け止めると、オズワルド様と目が合う。

瞳は黒く沈み、血走った猟奇的な目。


「オズワルド様!!」


私は至近距離なのに大声で呼んだ。

ついでに声に氣を乗せ、辺りのサソリを振動によって鈍らせる。


それでもオズワルド様の攻撃的な姿勢が変わらない。

怯んではいるが、まだ私に攻撃を仕掛けようとしている。


これがオズワルド様の本性なのだろうか?

いいや、そんなことあっていいわけない。

あなたはイケメンナイツでしょ。

そして、あの二人のお父さんでしょ!


「しっかりしてくださいオズワルド様!

アルフレッドとマルグリッドが待っていますよ!!」


私は両手でオズワルド様の両頬をひっぱたいた。

パーン!といい音がなる。


すると、オズワルド様の目に光が戻り始める。


「セ…セツナ様?」


「話は後で、オズワルド様はあの道に沿って先に行ってください」


私は視線だけで、行先を指す。

それは、ガドリング銃で作った下山コース。

手裏剣が大量に落ちているが、それを警戒してサソリたちが近づけなくなっている。


「二人も大丈夫だから!」


それを聞いて、オズワルド様は私の指示通りに走り出した。

私は再び動き始めたサソリを躱し、二人のもとへと戻る。


「「さすがお姉さん!」」


歓喜の声で二人が迎えてくれる。


「二人も上手だったよ」


私の指示通り、ここから抜け出すための道を作ってくれている。


「私たちも逃げるわよ」


最後に、岩の真下と手裏剣の道を繋いでもらうと、二人にリュックを下敷きに飛び降りるように指示した。


「大丈夫、私を信じて」


そう言って二人の頭を撫でる。

そして、まず私が手裏剣の上へと飛び降りる。


「土遁の術:流砂川柳」


地面に氣を送る。

落ちてきた手裏剣が私を起点に次々と回転し始める。

それが地面を削ると同時に砂と砂利に動かし、川のように流れを作る。


続いて二人が下りてくる。


「風遁の術:先帆流れ」


私の後ろから突風が吹く。

風が私と双子をふわりと浮かせると、砂の川に着地する。

私たちはその流れに乗って、サソリの群れの中を抜けながら山を下って行った。


手裏剣の道は途中で途切れ、その先は崖になっていたが構わず飛び出す。

私は二人を空中で担ぐと、坂道を滑り降りる。


その先には、オズワルド様が走りながら私たちの合流を待っていた。

数は少なくなっているが、サソリはまだいたので、オズワルド様が先に倒しておいてくれている。


「二人とも、走れる?」


この先はしばらくなだらかな下り坂が続く。

二人から返事をもらうと、私は二人を下ろした。

二人はすぐにリュックを背負うと、オズワルド様を追いかけるように駆け出す。

私もまだ残っていたサソリを倒しながら追いかけた。


「アルフレッド…マルグリット…」


二人が追いつくと、オズワルド様が名前を呼ぶ。

だけど二人は黙って走り続けた。

まずはここから逃げ出すのが第一。その後でじっくり話をしよう。

そんな想いが伝わってくる。


最後の力を振り絞り、双子が私たちの前を走る。

その後ろを、サソリを警戒しながらオズワルド様も走る。


父と子。

不思議なもので、その後ろ姿がなんとなく似ていると思った。


秘密を抱えながらも二人の子供を守り続ける男性と、

その男性を信じて助けに出た二人の男の子。


愛だよねー…。

まだ気を抜いていい状況じゃないけれど、あの三人を見ていると心が安らぐ。

こうやって人は支え合って強くなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。