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オズワルド様参戦

「し、しかし…」


雰囲気や装備からオズワルド様がただの神官でないことは察しているだろう。

だけど、その実力は未知数。キョウヤ様は聖なる巫女を任せるのに値するのか悩んでいる。


「キョウヤ様、私たちなら大丈夫です。オズワルド様の強さも私が保証します」


キョウヤ様が私に振り向き、少し驚いた顔をする。


「それに、魔物と戦いに行くのではありません。

キョウヤ様は、少しでも早く街の人達を助けてあげてください」


まだわずかに納得していない様子。

私のお墨付きになったオズワルド様を改めて観察する。

立ち姿はいつもと変わらないが、防具や武器が馴染んでいる。


「ロックさんはすでに街へ向かわれましたが、魔物の数は相当多いようです。

セツナ様を心配するお気持ちはわかりますが、騎士団長としての役目を果たしてください」


オズワルド様にそう言われ、キョウヤ様は小さく頷く。


「…わかりました。オズワルドさん、セツナ様と二人…あとアッシュのことをお願い致します」


「はい、この命に代えてもお守りすることを約束しましょう」


二人は少し視線を交わし合った後、これ以上は語らず入れ違う。


「キョウヤ様!」


私に呼び止められ、キョウヤ様が再びに私に振り返る。


「あの…アッシュを助けたら、少しお時間いただけませんか?

その、最近あまりお話できていなかった気がして」


なんか、ここで約束しておかないと、また疎遠になってしまう気がした。

でもこんな時に何を言っているんだろうと思い、私はちょっと照れてしまう。

そんな私をキョウヤ様はくすりと笑う。


「はい、かならず。お気をつけてセツナ様」


そう返事をしてくれて、キョウヤ様は走って来た騎士と合流してお城の中へ入って行く。

オズワルド様は運転手に一言挨拶すると、馬車に乗り込んだ。


「こんな老いぼれでは頼りないかもしれませんが、かならずお役になってみせます」


「そんな、頼りないなんて…」


山や洞窟へ行くことを考えると、元傭兵の方が頼もしいのではないかと思えてくる。

なんか自然も相手にしているイメージがあった。


それに、準備万全で来てくれたあたり、最初から同行するつもりだったと思う。


「オズワルド様、やっぱり二人が心配で…」


「そうですね。止めても二人は行きそうでしたから、ならば私も行くしかないと」


双子は照れているような、申し訳なさそうにしているような、妙な態度だった。


「セツナ様とアッシュさんが開いた誕生会でしたか?どうもそれがえらく楽しかったようでして、またみんなでやりたいと言っていたのですよ」


そっか、変なからみ方もしてしまっていたけれど、楽しんでくれたみたいでよかった。

そして、アッシュのために勇気を出してくれてありがとう。

私は二人に笑いかける。


「アッシュを助けて、今度はアルフレッドとマルグリットの誕生会をしましょう。

きっとアッシュも二人にお礼がしたくなるだろうし」


「「うん!」」


二人は同じ笑顔で笑い返してくれた。


ドワーフの村へ向かうのは、聖なる巫女である私と、錬金術師の双子と、元傭兵のオズワルド様。

なんだか不思議なメンバーになったけれど、この四人なら絶対になんとかなる。

私はそう信じた。


---------------------------------------------------------


その日の夜。

私たちはお城の近くにある小さな隣町に辿り着く。

そこで宿をとり、早朝に出発する予定となっている。

晩ごはんを済ませた私は、部屋で一人椅子に座っていた。


自分の両手を見つめ、握ったり閉じたりしてみる。

手の平に氣を集中させてみてから、それを発散させる。


まだ完全復活できていないけれど、ドワーフの村に着く頃には回復していると思う。

カルディアを探しに行くだけだけれど、簡単に手に入るわけではなさそうだから万全で望みたい。

それに、もしもの場合もある。

その時は、あの二人を庇いながらになるから一層注意が必要だ。


マリーのおかげで、かなり冷静な状態でいられている。

城門であんな風に言ってもらえなかったら、私はまだ余裕が無かったかもしれない。

焦っても仕方ないとわかっていても、アッシュの命がかかっているとそう簡単な事ではない。


今日はもう寝ておこう。

少しでも体と氣を休めることにする。


そう考えて立ち上がると、コンコンとドアがノックされた。

返事をしてドアを開けると、訪ねて来たのはオズワルド様だった。


「お休み中に申し訳ありませんセツナ様」


「いえ、まだ起きていましたから大丈夫です。どうされましたか?」


私はドアを広く開け、オズワルド様を中へ招き入れる。

オズワルド様は少しお辞儀をして中へ入って来た。


「あのですね…ドワーフの村へ行くにあたり、あの二人について少しお話しておこうと思いまして」


「アルフレッドとマルグリットの事ですか?」


「はい」


「わかりました。そこに座ってください。お茶を入れますね」


「ありがとうございます」


もしかしたら遠慮されるかもと思ったけれど、喜んでくれたようだ。

紅茶好きかもという私の推測が信ぴょう性を帯びてくる。


紅茶を入れてオズワルド様に差し出すと、それを早速一口飲んだ。


「おいしいです」


「よかったです。これでもマリーに鍛えてもらいましたから」


「あの侍女の方ですか。いいですね、あの方はお城の中でも淹れるのが上手な方だと思います」


おぉ、マリーの評価がかなり高い。

…私もちょっとはそういう女子っぽいことで褒めてもらいたいな、なんて。


「それで、あの二人の事とはどういったことでしょうか?」


二人の村は魔物に滅ぼされてしまっている。

それを考えると、楽しい話ではなさそうである。

少々不安げに聞いた私を見て、オズワルド様が静かに話し始めた。


「これから向かうドワーフの村はあの二人の故郷です。

しかし、数年前に魔物に滅ぼされてしまっている。

あの二人は明るく生活していますが、その時のことをしっかり覚えているはずです」


それはきっと、とてもつらい記憶。

再び目にすることで、当時のことを鮮明に思い出してしまうかもしれない。


「二人はそれなのに…」


それなのに、私とアッシュを助けるために立ち上がってくれた。


「アッシュさんのことが心配で、セツナ様のことが好きで、あの二人は今ここにいます。

私が忠告するよりも早く、二人にはわかっていると言われてしまいました」


オズワルド様がその様子を思い出しながら苦笑する。


「ただ、それでもあの二人はまだ子供。

大人でもトラウマになる悲惨な経験をしています。ですから…」


「わかっています。何があっても二人を責めるようなことはしないです」


「ありがとうございます」


そんなことするわけない。

アッシュが助かる可能性を示してくれただけで、あの二人には感謝しているのだ。


オズワルド様も、わざわざそんなことを言いに来るなんて、二人を大切にしているんだな。

血は繋がっていなくても、素敵な父親だなと思う。


ふと、オズワルド様について答えたアルフレッドの言葉を思い出す。

そういえば、"助けて"育ててくれたと言っていたような。

ということは、魔物との戦闘にオズワルド様がいた?


紅茶を飲んでいる姿は、戦いなんて知らなそうなやさしいおじさんである。

けれど、身のこなしは只者ではなく、キョウヤ様をちょっと怯ませる威圧感も持っている。

元傭兵であることは確実なのだけれど、何があって今は神官をしているのか?


とても気になったけれど、ちょっと聞きにくい。


「それとなのですが…」


紅茶を飲み終わったオズワルド様がカップを置く。


「もし、もしも戦闘になるようなことがあれば、セツナ様は二人を連れて逃げていただけませんか?」


「ど、どうしてですか?」


二人の安全が第一なのはわかる。

だけど、私も参戦した方がみんなで無事に戻れる可能性が高いはず。

いくら私が聖なる巫女だからと言っても、それはオズワルド様も承知だと思うのだけれど。

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