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マリーの出迎え

魔物討伐へ出発してから約二週間。

私はようやくお城へ戻って来た。


いやー、今回はかなりの遠出になってしまった。

さすがにちょっと疲れた。


お城の中で停められた馬車から降りる。

見慣れたお城の風景が私を安心させてくれた。


「セツナ様!」


少し離れた所からマリーの大きな声がした。

駆け寄って来るその表情は心配の一言。


「怪我をされていませんか?つらいところはありませんか?」


「大丈夫だよマリー。今回は怪我無しだから」


それを聞いてマリーがほっと胸を撫でおろす。


「魔物と一緒に飛んで行ってしまったと聞かされた時は血の気が引きました。

どのような形でそうなったかはわかりませんが、本当に無理はなさらないでください。

無事だったと後から言われても、この目で確認するまでは心配でなりません」


「あはは…気を付けます」


うーむ、客観的に聞くとたしかに破天荒な印象を受ける。

でも、心配させて申し訳ない反面、こうして心配してくれる友達がいるのはうれしかった。


「今日は部屋でゆっくりお休みください。紅茶やお菓子を用意してあります」


そう言ってマリーが私の手を取る。


それには内心ちょっと驚いた。

こんな積極的なところは今までなかった。

誕生会を経て、私たちの間で遠慮してきたものが少しだけ無くなったことを実感する。


「…どうかされましたか?」


「えへへ、なんでもない」


帰って来たんだ。

マリーが迎えてくれるこのお城が私の帰って来る所。


「嬢ちゃん、魔物討伐おつかれさん」


ロック様がいつもの大剣を持たずにやって来る。

私たちは一旦手を離してロック様の方を向く。


「ロック様もお疲れさまでした。今回は結構危なかったですね」


「…セツナ様?」


あらら、うっかり口がすべってしまった。

やっぱり危険だったんじゃないですかー、という目を向けられてしまう。


「確かにそうだったな。嬢ちゃんがいなかったら、俺はどうなっていたことか…」


ロック様らしくない、しおらしい事を言う。


「そんな、ロック様と私と、あとボガードで力を合わせて倒したんですよ」


「そう言ってもらえるとありがたくはあるんだが、俺が言いたかったのはそういうことではなくてだな」


ロック様が頭の後ろをポリポリと掻く。


「あれだ…その、嬢ちゃんに前へ出るなと言っておきながらあの結果だ。だから、その…なんだ。悪かったな」


そう謝られて、そういえばそんなことを言われたなと思い出した。

あの後すぐに戦闘になったから、申し訳ないけどすっかり忘れていた。

ゲームの設定などといい、私ってもしかして忘れっぽいのかも?


だが思い出したとはいえ、ロック様が何に対して悪いと思っているのかがわからなかった。

前へ出るなと言ったこと?それとも、私を前へ出させてしまったこと?

もしくは、私を前へ出させてしまったロック様自身のこと?


「いえ、私は何も気にしていないです。次回も頑張りましょう」


わからなかったけれど、ロック様に悪気が無いことは明らか。

あんなことは気にせず、今まで通りでいてほしい。


「おう、俺ももっと精進するよ」


ロック様は拳を作ってやる気を見せてくれると、部下たちの所へと戻って行った。


「マリー、私たちも部屋に戻ろうか」


「はい」


今度は私がマリーの手をとった。


「セツナ様。そうです、その前に」


「なに?」


「お帰りなさいませ」


「うん、ただいま」


--------------------------------------------------


部屋に戻ると、ドレスには着替えず楽な格好をさせてもらう。


「よろしかったらマッサージをお呼びしましょうか?疲れが取れると思いますよ」


マッサージですと?

生まれてこのかたマッサージを受けたことがない。

疲れても食べて寝るだけ。

お城で受けられるマッサージとはいったいどのようなものなのか?

エステみたいに、いい匂いがするオイルを塗りながら足とかを揉まれるのだろうか?


「い、いいの?」


「もちろんです」


私はこくこくと頷いた。


「かしこまりました。すぐ手配致しますね」


マリーが一旦部屋を出る。


私は紅茶を両手で持って、どんなマッサージなのか想像した。

楽しみだなー。

あっ、でもテレビとかで見たあれって、裸にタオルかけるだけだったような。

マッサージ中もマリーは近くにいるのかな?ちょっと恥ずかしいな。


どこでやるんだろう?

浴場の近くにあるイメージだけど、それっぽい部屋なんかなかったような…。


あれこれ考えていると、ドアがノックされてマリーが戻って来た。

そして、数人の女性と共にベッドが運ばれてくる。


「えっ?マリー、それって?」


「はい、マッサージ用のベッドです」


「まさか、ここでするの?」


「そうです。お疲れのセツナ様を移動させるわけにはいきません」


マリーがそう説明してくれている間に、エステシャンらしき女性たちが簡単に部屋を片付けながら、ベッドがセッティングされていく。


「準備が整いました」


「わかりました。セツナ様、どうぞこちらへ」


えっ、えー…。

参ったな、心の準備が全然できていない。

恐る恐るベッドへ近づいていく。


「では、お召し物をお脱ぎになってください」


「へっ?ここで?やっぱり?」


いやはや、ここにいるのは全員女性だけど、真昼間の人がいる普通の部屋で裸になるのは抵抗がある。


「あのさマリー、服の上からってわけにはー…」


一人のエステシャンが見るからに高そうなビンを持っていて、そういうわけにはいかないのを察する。


私が二の足を踏んでいると、マリーがツカツカと近づいてきて、私の服のボタンに手をかける。


「申し訳ありませんセツナ様。ボタンも外せないほどお疲れになっていたに気が付かず、私としたことが…」


「マ、マリー?」


今起こっていることに頭がついていけず抵抗できない。

ボタンを外された服がすとんに床に落ちる。

さらにマリーが私の下着に手をかけた。


「わかった。わかったから。あとは自分でできるよ」


ようやく心の準備が整い、タオルを巻かせてもらって下着を脱いだ。

その間に、マリーのちょっと満足そうな顔が目に入る。

…もしかして、心配をかけた腹いせだったりした?


そして私はうつ伏せでベッドに寝かされ、巻いていたタオルが取られるとお尻の上にだけかけられる。

私は枕を抱え、その上に顎を乗せている状態。

後ろでチャプチャプと何かを混ぜている音がする。

すごくいい匂いがしていくるのだが、裸になっているせいか、なにやらいやらしい気分になってドキドキしてくる。


うわー…、このまま私どうなっちゃうのー?


「セツナ様、それでは始めさせていただきます」


マリーがそう言うと、エステシャンが一斉に動き出したのを感じた。

そして、背中、両足と同時にオイルが塗られる。


「ひ、ひゃー」


これはまったく予想していなかった。

考えるよりも先に変な声が出る。


初めてのことなので、最初は敏感になっていたせいかぞくぞくしてくすぐったかったが、次第にオイルの甘い香りが心を落ち着け、エステシャンの指が筋肉をほぐしていくたびにポカポカと温かくなってくる。


や、やばい…これ、気持ち良すぎる…。


まるで絡まった糸がほどかれていくように脱力していき、まぶたがとろんと閉じようとしている。

口元もだらしなく開き、うっかりしていたら涎を垂らしてしまいそうだ。


「いかがでしょうかセツナ様?」


「き、きもひいぃれす」


しっかり呂律を回すのがめんどうくさくなっている。

先ほどまであった羞恥心は溶けてなくなっていた。


「ご満足いただけているようでなによりです」


もうそのあとは為すがままだった。

仰向けにされたり、だいぶ恥ずかしい所までやられた気がするけれど、どうでもよくなっていた。

もう、これ無しでは生きていけないかもしれない…。


………。

……。

…。


一時間みっちり揉み解された私は、水を飲み、椅子に座ったまま放心状態になっている。

エステシャンたちは退出していて、マリーがうちわで軽く仰いでいてくれていた。


「なんだったの?あれ?すごすぎない?」


「はい、今回は特別に超一流のモノだけを取り揃えていました。

王国一だったといっても過言ではないかもしれません」


マリーもなぜか満足そうにそう言った。


「超一流かー…、通りで…って、今回は?」


今回という言葉が引っかかって私はマリーの方を向く。


「はい、国王様から許可をいただいてご用意させていただきました。

あのクラスのマッサージは、セツナ様といえどそう簡単には受けれません」


「そ、そんなー…」


初めてであんなすごいのを経験してしまって、他で満足できなくなってしまっていたらどうするの?

うっかりあれの虜になっていたら、禁断症状とか出たりしない?

あれをエサに私に何かさせようとしたりしていない?


マリーはいつものやさしい笑顔でほほ笑んでくれる。

だけど今だけは、マリーの裏を疑わずにはいられなかった。

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