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街で大活躍2

大きな鳥の魔物を倒した翌日。

私たちはカザンガという街にいる。


魔物の飛んでいた方角がカザンガの方だったため、私の忍術が街の見張りの目に入った。

何が起こったのか確認するために街から兵士が派遣され、その人たちに救助してもらったという流れ。

兵士の中にロック様を知っている人がいて、宿泊や伝令などスムーズに事が進んだ。


あとは、あの魔物と戦ったことで知らなければならない事ができた。

それは魔力の属性というもの。


あの魔物はたしかに燃えていたが、羽はほとんどダメージを受けていなかった。

触った感じからも特に変わった様子はなく、あれはどういうことだったのか、救助の馬車の中でロック様に質問してみた。


ロック様はその質問に答えられなかったが、代わりにボガードが答えてくれた。

解析してみないとわからないが、おそらくあの魔物は火の属性を持っていたからだろうとのこと。


属性を持つというのは、四大元素のいずれかの加護を受けていることを指すらしい。

加護を受けると魔力がその属性に染まるため、その属性にめっぽう強くなる半面、それ以外はからっきしになるとか。

属性を持つ事はとても珍しいことなのだが、今回はあの状況でさえ羽が燃えなかったという常識では考えられない事が起こったので可能性が高い。


そう教えてくれながら、ボガードが回収していた魔物の羽の一部を見せてくれた。

大きさはともかく、触ってみると普通の羽。

ロック様が火を近づけてみると、焦げ目がついたもののたしかに燃えなかった。


その様子を見ていると、ゲームにもそんな要素があったような気がしてきたが、残念ながらまったく思い出せない。

なにせ私は課金ですべてを片付けていたからね。戦闘を優位に進めるとか考えたことはなかった。


なので、属性については至急勉強をする必要がある。

今回のように何も知らずに戦ったりすると、また足を引っ張ってしまうかもしれない。

どの道、魔物自身で油やロープを燃やしていたかもしれないけれど、私のせいでその事を気づかせてしまったかもしれないのだ。

ゲームとは違い、知らなかったでは済まない場合もある。


魔力についてならジル様に聞いてみるのが一番である。

また何か変な手伝いをさせられるかもしれないけれど、背に腹は代えられない。


…なんてことを思い返していながら、私は宿屋のベッドでごろごろしていた。


お城に帰るのは明後日になるらしい。

あの広い草原を横断するわけだから、それなりに準備がいるのだろう。

ロック様は責任者として当然色々とお仕事をしている。

ボガードはどこで何をしているのかわからない。


となると、一人で過ごすしかない。

この街もなかなか栄えているし、また食べ歩きみたいなことができたらいいな。


でもさ、一人ってのはどうなの?

一応、乙女ゲームと同じ世界で、私はヒロインである聖なる巫女なんだよね?

合っているよね?

だったらさ、こういう時ってデートのお誘いとかあるタイミングじゃないの?

それが無いってさ、やっぱり好感度が低いってこと?

ボガードは告白してくれたのに来ないってことは、フラグってやつが立っていないってこと?


まぁ、もうそういうのにも慣れてきてしまっているんだけどね。

武道着しかないのでそれを着て、私は街へとくりだした。


カザンガという街は、芸術が盛んな街らしい。

似たような建物が並んでいたゴールグとは異なり、こちらは様々なデザインが施されている。

公園に立ち寄ってみると、絵を描いている人や、何か芸を披露している人が多く、音楽も至る所で演奏されている。

その優雅な雰囲気は眺めているだけで楽しかった。

食べ物の値段がちょっと高くて吟味する必要があるのが玉にキズだが、命がけの戦闘をした後なので心が癒える。


私は露店で焼き鳥の盛り合わせみたいな食べ物を買うと、噴水の前にあるベンチに腰掛けた。

感動するほどではないけれど、外で食べるのって楽しいよね。

追いかけっこなんかをしている子供たちを眺めながらほっこりする。


あっという間に全部食べてしまい、物足りない。

でも、明日のことも考えると無駄遣いできないなー…。


遠くの大道芸が目に入る。


………。


忍術でどうにかならないだろうか?

そんなやましい気持ちが私の中で芽生える。


大道芸人は玉乗りやジャグリングなどを披露して、たまに小銭をもらっている。

どの世界にもこういう文化があるらしい。


焼き鳥の入れ物が小銭入れに使えそうだった。

さて、どうしよう?

いきなりやってみて人に見てもらえるほど甘いものではないと思うけれど…。


私が試行錯誤していると、追いかけっこをしていた子供たちが私の目の前で立ち止まった。

二人とも楽しそうに笑いながら、息を切らせて休んでいる。


ちょっと試してみようかな?


「ねー、君たち」


私は二人の子供に声をかける。

子供たちは私の方を向いて、なに?と答えてくれた。


「ちょっとだけ、私の芸を見てみてくれない?」


「芸?おねーさんは芸人なの?」


「まぁ、そんなところかな?

今日からデビューしてみようと思っているんだけど、自信が無いから君たちの感想を聞いてみたいの」


一人の子供がどうする?ともう一人に尋ねる。

少し考えた後、いいよと引き受けてくれた。

二人が私に少しだけ近づいて、私の芸を待ってくれる。


「じゃあ、みててね」


私は右手の人差し指だけを出して、その上に焼き鳥の串を立てる。

串は倒れることも揺れることもなく立ち続ける。


「それだけ?」


しばらく展開が無く、子供がそう聞いてきた。

私はそれを待っていましたと言わんばかりに閉じていた右手を開くと、すべての指に串が乗っている。


左手で右手を下からぽんと叩き、すべての串が宙に浮き、すとんと指の上に戻る。


「おー!」


出だしは上々。


次に、私が串をすべて右手で握り込み、手首を回して再び開くと串はなくなっている。

そして、もう一度手首を回すと一本だけ手に戻ってくる。

串を持っている指をこすり合わせていくと、二本、三本と増えていき、最後に扇のように広げてみせる。


「すごい!」


うん、子供がちゃんと喜んでくれている。

ここからはもっと大道芸っぽいことをやってみよう。


私は立ち上がって、座っていたベンチの裏にまわる。

ベンチの背もたれの上に一本串を立てて、右手の人差し指で上から押さえる。

指と串に氣を集中させる。


子供たちは黙ったまま期待の目を向けてくれていた。


「ここからが本番だよ」


私はそう言うと、指一本で串の上に逆立ちする。

ベンチの上に串が立ち、さらにその串の上で、指一本だけでバランスをとってみせた。


「えーー?!」


楽しいよりも驚きが上回ってしまい、子供たちは口をあんぐりと開けていた。

折れない串を見て、指一本しか使っていないのを見て、わずかにしか揺れていない私を見て、もう一度串を見る。


ふふふ、これ結構きついんだけど、楽しんでくれているようでよかった。


続いて、私は左手でもう一本串を添えて二本を並べる。


「いくよ」


掛け声と共に宙返りをして、二本の串の上に右足で着地してみせる。


どう考えてもありえない芸当に、ついに子供たちは言葉を失った。


さらに私は一回転してみせたり、ペン回しのように串を高速回転させてみせたりと、思いつく限りの技を披露した。

最後はバク転でベンチの上から降りると、お辞儀をして幕を下ろした。


「どうだった?」


子供たちはぽかんとしたまま、反応してくれない。


あ、あれ?ダメだった?

ちょっと危険過ぎたかな?


なんて不安になったけれど、少し遅れて力いっぱい拍手を送ってくれた。


「すごすぎだよおねーさん。こんなの見たこと無い!」


そう言ってもらえた後、パチパチと子供たち以外からも聞こえてきた。

遠巻きに見ていた人たちも私のところまで寄って来て、面白かったと褒めてくれた。

さらに、本当に焼き鳥の入れ物に小銭を入れてくれる人まで現れて、最終的には焼き鳥代を取り戻すまでに至った。


あぁ、なんかいいなーこれ。

お金を払ってもらえるって、評価してもらえたってことをすごく実感できる。

クノイチをやっていた時も、もう少しお金に興味を持っていたら、少しだけ任務に対する態度も変わっていたかもしれないな。


見てくれていた子供たちに別れを告げ、私は稼いだお金で次の露店へと歩き始める。


大道芸は終わり、人だかりもなくなっている。

それなのに、まだ私に視線が一つ向けられている。

しかも、この感じは一般人ではない。


私は立ち止まり振り返った。

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