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双子と取り引き

「二人とも、ここでは静かにするようにいつも言っているでしょう」


オズワルド様が入ってきた双子を注意する。


「それはお祈り中のことでしょ?」

「今日はお姉さんとお話するだけって聞いたよ」


双子は走るのをやめて声のトーンも落としたが、態度は改めなかった。

私が座ったまま振り返ると、双子はにこっと笑う。


「お姉さん。魔物討伐お疲れさま」

「ねぇ、どんなやつだったか教えてよー」


双子は私の後ろまで来ると、背もたれに手を置いて両サイドから私に顔を近づけてくる。

ちょっと汚れているけどつやつやの肌に綺麗な瞳、子供とはいえキス寸前の距離まで顔が来るとドキリとする。

ここが神殿でなければ吸い寄せられていたかもしれない。


「やめなさい二人とも、セツナ様が困っているではないか。

申し訳ありません。まだ子供でして…」


オズワルド様が教壇から降りながら謝罪する。


「大丈夫です。二人とは知り合いですし、それに…先ほどお話したメンバーでもあるんです」


「なんと、この二人がですか?」


さすがのオズワルド様も少し耳を疑ったような反応だった。

双子はなんのことかわからずぽかんとする。


「二人はもうお仕事終わったの?」


「ううん、ちょっと早めのお昼休み」

「もちろんやることはやったよ」


へへんと双子は得意気に言った。

同じ職場のおじさん達も認める実力だから本当なのだろう。


なんか、この二人って将来有望過ぎない?

あと数年したらたくさんの女子が放っておかない存在になるのでは?

それにこんなかわいいんだもん。イケメンに育つのはもはや決定事項でしょ。

そう思うと今のうちに唾を付けておくみたいなゲスな発想が浮かんできてしまう。


「オズワルド様とのお話はまだ終わってないの?」

「すぐ終わるなら、僕らもここにいていい?」


「えーと、ちょうど終わったところ…ですよね?」


オズワルド様に確認すると、こくりと頷いてくれる。


「やったー」

「じゃあ次は僕らの番」


注意されたばかりなのに双子はまた騒ぎ出す。

それをオズワルド様が再び注意しなかったのは、たぶん双子が私に必要な存在だと知ったから。


「マリー、この後って予定あったっけ?」


「この後は国王様との面会がありますが、しばらく時間があります」


「お話するなら外へ出ようか」


そう言って私は立ち上がる。


「オズワルド様、今日は貴重なお話ありがとうございました。

とてもためになりましたので、次もよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願い致します。

私が知っていることでしたらすべてお話します」


オズワルド様が双子に向く。


「二人とも、セツナ様をあまり困らせるのではありませんよ」


「「はーい」」


なんか先生と生徒…というより父と子?


最後にオズワルド様と挨拶をすると、双子とマリーと一緒に神殿を出た。

外へ出て階段を下りながら、双子にちょっと聞いてみる。


「ねぇ、オズワルド様とはどういう関係なの?」


「関係?そうだな、僕らを助けて育ててくれた人」


双子が顔を見合わせた後、アルフレッドがそう答えた。


そうだったんだ。

言い方がちょっと良くないけどその設定は初めて知った。

いやーだって全員攻略するお金はあっても時間がなかったからね。


「そっか、じゃあ二人にとってお父さんみたいな人なのか」


私がそう言うと双子が反応に困りだす。

感謝はしてても言葉にするのはちょっと照れるといったところでしょう。

双子から素直な気持ちを聞けるのはまだ先のようだ。


神殿の周りは綺麗な芝生になっているが、座れるものは何も無い。

天気がいいから地面に座ってもいいのだけど、どうしたものか?

錬金工房に行ってもいいけどあそこはちょっと暑いからなー。


どこで腰を落ち着けるか考えていると、錬金という単語で私の中にあるアイデアが生まれた。

それを実行するためには、まずマリーにちょっと離れてもらう必要がある。

今ちょうどいい口実があるとすれば…。


「そうだ!ここで一緒にお昼ごはんにしない?」


私はひらめいたとばかりに人差し指を立てて提案する。


「ここでと言いますと?」


「マリー、今日のお昼ごはんをお弁当みたいにして、何か敷く物と一緒に持ってくることってできる?今日はここでピクニック気分で食べましょうよ」


「いいじゃん!」

「面白そう!」


我ながら良い案である。双子からの支持も得られた。


マリーがうーんと少し考えた後、目途が立ったようでお昼ごはんを取りにお城の中へ向かった。

私は心の中でマリーに謝り、お昼ごはんを食べるのにちょうどいい木陰まで双子と移動する。


「うん、いい感じ」


「ねぇ、魔物討伐の話を聞かせてよ」

「お姉さん強いから楽勝だったでしょ?」


うーん、このヒーロー的扱いは素直に喜んでいいのか微妙なラインである。


「わかったわ。でもその前に私のお願いを一つ聞いてほしいんだけど、いいかな?」


腰を屈めて双子と同じくらいの目線になって、両手を合わせてお願いをする。


「「…なに?」」


特に嫌な顔もせず双子は私の話を聞いてくれた。


「えーとね、私がいつもお世話になっているマリーの誕生日が近くて、誕生日プレゼントをあげたいんだけど、私って何かを作ったことがあまり無いから手伝ってほしいなと思って」


小話一つで優秀な錬金術師を無料で使おうとしている。

私ってこんなにゲスだったっけ?

でも、物作りは苦手だし買い物も簡単に行ける身じゃないからしかたないということで。


「ふーん、どんなものがほしいの?」

「ペンダントとかだったらすぐできるよ」


とても良い返事がかえってくる。

ペンダントとかならすぐ?やっぱり優秀過ぎでは?

しかもすぐアクセサリーを提案してくるあたり、侮れない?


「そうだなー…、それもいいんだけど、絵を描いていたって言うし筆とかスタンドとか?」


マルグリットが少し考えてこう言った。


「作れなくないけど、お姉さんが入る余地がない気がする」


うっ…、職人としての的確なアドバイスありがとうございます。


そうだ!とアルフレッドが手を叩く。


「じゃあさ、お姉さんがデザインして、それを僕たちが作れば共同作品になるんじゃない?」


天才か?

イメージを描いたり伝えるくらいなら私にもできそうだ。


「それでお願いできるかな?思い付いたらすぐに持っていくから」


「「いいよ」」


やったー!プレゼントはこれでほぼ解決だね。

後はちょっとした食事会的なことができるといいんだけど…。

あっ、あの人に聞いてみようかな。まだどこにいるのかわからないけれど。


その後、双子とちょっとアイデアを出し合っているとマリーがサービスワゴンでお昼ごはんを運んできてくれた。


「いい、マリーには内緒だよ?」


「わかっているよ」

「任せておいて」


三人で秘密を共有してにっと笑うと、マリーを手伝いに向かった。

敷物を敷いて、サンドイッチやチキンを並べる。


「いただきます」


「「いただきます?」」


「あぁ、ごはんを食べる前の挨拶だよ。私がいた国ではこうしていたんだ」


「へー、いただきます」

「いただきます」


双子が私の真似をする。

かわいいなーこいつらはもー。


私はごはんを食べながら、約束通り魔物討伐の話をした。

この手の話をするのは後輩クノイチ相手で慣れているので、話し方は心得ている。


序盤はまだ飲み食いしながら聞いていたけれど、幻覚魔法のあたりから手が止まっていた。

マリーも初耳になる話なので、なんとなくハラハラしてくれている様子だった。

こうして無事ここに私がいるのだからハッピーエンドなのだが、語り手としてはうれしい限り。


「ついに私も幻覚魔法にかかってしまう。

…いないはずの大きな魔物が次々現れ、幻覚だとわかっていてもその恐ろしい姿に足がすくんでしまう」


ちょっとだけフェイクを混ぜる。


「しかし、幻覚魔法は強い心で跳ね返すことができる。

いくら魔物が大きくても弱点はかならずあるもの。

私はその魔物を倒し、ボスまで辿り着くイメージを膨らませる。

すると、その魔物がすーと消えていったんだよ」


双子の眩しい笑顔が私の口を滑らかにする。

男の子相手に武勇伝を話すのがこんなに楽しいとは。


「幻覚魔法さえ解けてしまえばこっちのもの。

逃げようとするボスを一気に追い込み、トドメを刺したってわけ。おしまい」


パチパチパチパチ


双子が割れんばかりの拍手を送ってくれる。


「すげー!さすがお姉さん」

「聖なる巫女は最強だ!」


うーん…、いいんだけどさ。やっぱりちょっと違うんだよなー私が求めているものとさ。


ちらりとマリーを見ると小さくだが拍手をしてくれている。

まぁいいか。

私にはきっとこれが一番合っている。

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