ランキング戦 《一回戦》
会場に着いた楓は一人の男に呼び止められた。
「待て、桐原楓」
「誰ですか?」
「俺は生徒会メンバーの寺島竜也だ。桐原、お前には一回戦を辞退してもらおう」
放たれた言葉に楓は少し驚いた。
「なぜですか?」
「お前のことは会長から聞いている。一年の期待の新人だと」
「それは嬉しいことです」
「だが、俺はお前のことを認めない。俺はお前より強いと思っている。戦ってもお前が負けて恥をかくだけだぞ」
楓は笑みを浮かべた。
「そこまで言うなら、なおさら先輩と戦ってみたいじゃないですか」
「そうか、言っとくが俺は甘くないぞ」
そう言って寺島は去っていった。
「負けませんよ、寺島先輩」
不気味な笑みを浮かべ楓もその場を去った。
「Aブロック 一回戦第五試合。三年 寺島竜也、一年 桐原楓、試合時間になりました。両者、準備が完了次第指定されたゲート前に待機して下さい」
そのアナウンスが聞こえた時には、楓はすでにゲート前にいた。
「やっとか」
楓は緊張と興奮を抑える為一度深呼吸をした。そうしていると再びアナウンスが鳴った。
「両者準備が完了しました。それでは、両者入場して下さい」
こちらです、と係員がゲートを通るように案内され楓はステージに出た。
一方、反対側のゲートから寺島も出てきた。その手には巨大なハンマーが握られていた。
「それではこれよりAブロック 一回戦第五試合を始めます。戦闘開始」
それを合図に二人は動きだした。
楓は剣先を地面に引きずる基本の型の構えで正面に走った。寺島は、ハンマーを肩に担ぎゆっくりと楓に近づいていった。
“先手必勝”
そう思った楓は型を変えた。走っていたスピードを全て殺し引きずっていた剣を振り上げ寺島に剣先を向けた。そして、剣を持った腕をおもいっきり後ろに引いた。
「桐原流剣術一の型 一閃」
後ろに引いた腕を一気に寺島に向け突きだした。
楓の剣から放たれた斬撃はすぐに寺島を襲った。しかし、寺島は軽々と避けた。
「そんな攻撃当たり訳が……」
反撃に転じようとした寺島だったが、目の前の光景に目を疑った。
そこには楓の放った斬撃が通った場所に分厚い氷の壁が出現していたのだ
「それが氷壁ってやつか」
「そうです」
「意外に脆そうだな!」
寺島はハンマーで氷壁を殴った。だが、氷壁にはひびすら入ることはなかった。
「どうなっているんだ」
「今回は模擬戦で使った時とは別物ですよ。なんたって、僕が造った物ですからね」
「ふん、裏の方か」
「ええ、先輩もご存じでしょう。会長が知っているなら先輩も知っているはずですから」
「表の方は主に剣術メイン、それとは逆に裏の方は変化メインで戦ってくる。そう聞いてはいたが、ここまで能力に差がつくとはな」
「勝負はここからだ!」
そう言って楓は剣を構え走り出した。
「行くぞ!」
寺島もハンマーを握り直し楓に向かっていった。
そしてステージの中央で二人の剣とハンマーがぶつかった。楓は寺島のハンマーの威力に押され数歩下がった。
「ハンマーの威力は凄いが押しきれない程でもない」
再び楓が寺島に斬りかかろうとした。
「それを待ってたぜ!」
寺島はハンマーを地面に叩きつけた。その瞬間、楓の体が急に重くなった。楓はその重みに耐えきれず剣が寺島に届く前に地面に手をついた。
「超重力。これが俺の変化だ。お前や山城のような世界級ではない。せいぜい上位がいいとこだろう。だが、それでも俺は生徒会に入ることが出来た。何故だかわかるか?」
「こんな状態の俺がまともに話を聞けるとでも?」
「なら、正解を教えてやる。正解は」
寺島は大きくハンマーを振りかぶった。
「俺が強かったからだ!」
楓にハンマーが迫った。だが、寺島の渾身の一撃は楓の周りに張られた薄い氷の壁に受け止めた。
「なんだ、これは」
「なにって、ただの氷ですけど」
「そんなの見ればわかる。どうしてこんな物で止められたのか聞いているんだ」
そう言うと楓はニヤリと笑った。
「先輩がいろいろお喋りしてくれたおかげでこっちにも準備する時間がたくさんあったんですよ。おかげでこんなことまで」
楓は指をパチンと鳴らした。たちまち寺島の足元から氷が現れ寺島の体を氷の中に閉じ込めた。
「くそっ、こんな物壊してやる」
「壊せる訳な……」
楓が言葉を言い終わる前に寺島についた氷がバラバラと砕け散った。
「ここからが最終決戦だ」
寺島はハンマーを構え走り出した。楓との間合いはすぐ縮まった。楓が間合いに入ると同時にハンマーを降り下ろした。
楓はバックステップでギリギリでハンマーをかわした。しかし、寺島は攻撃の手を緩めない。
「超重力」
また楓に重力の嵐が襲った。なんとか重力に抗うも地面に膝をついた。
「これで終わりだ」
寺島は安堵した表情でハンマーを振り上げる。
「いや、まだ終わらない。氷針」
楓は即座に巨大なつららを造りだし寺島向け放った。寺島は楓を倒すのを中断し守りに徹した。
しかし、その判断が間違いだった。楓が放った氷針はどんどん寺島に当たり障壁にダメージを与えていく。ようやく氷の連撃が終わり寺島が顔を上げた時には楓の姿がなかった。
「どこいった?」
「ここだ」
声のした方向を向くと寺島のずっと後ろに楓の姿があった。
「そんな所から何が出来る」
「この距離じゃないと駄目なんだ」
「何?」
突如楓は走り出した。
「桐原流剣術基本の型 城崩し」
気が付くと楓の姿は寺島のすぐ後ろにあった。障壁も破壊させていた。
「Aブロック 一回戦第五試合 勝者、桐原楓」
その瞬間、会場が一気に歓声に包まれた。そんな会場を尻目に楓はその場を後にした。
一方、他の会場でも次々と一回戦が終了していた。
「Bブロック 一回戦第三試合 勝者、白石 紗也」
「上出来でしょ」
「Cブロック 一回戦第七試合 勝者、片山 結斗」
「これならどんどんいけそうだね」
「Dブロック 一回戦第二試合 勝者、ティナ・アリファロート」
「余裕ね」
他のクラスのメンバーが順調に一回戦を勝ち抜いているなか山城だけは違った。
「Dブロック 一回戦第八試合 勝者、隼田 奈霧」
「どうして俺が……負けたんだ」
「よくもまあ、その実力で生徒会に入れてくれなんて頼めたものね。桐原にも勝てなかったのに」
「くそぉぉぉぉ!!」
悔しさで叫ぶ山城を見下して隼田は上機嫌にスキップして会場を出た。




