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氷点下を操りし剣聖  作者: 氷菓
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もう1人の楓

 剣と剣がぶつかり合う独特の金属音が廃墟区域に響き渡る。所々には楓が造り出し少女に斬られた氷の残骸が散らばっていた。

「どうして俺を狙うんだ」

 お互い一度距離を取り楓は少女に尋ねた。

「そういう命令だから」

 少女は刀を構え直す。その瞬間楓の懐に一気に飛び込んできた。

「なっ !」

「そういうことだから、じゃあね」

 少女の刀が楓の脇腹を貫く……はずだった。少女の刀は脇腹を貫くことはなく楓の体を吹き飛ばすだけで終わった。

 吹き飛ばされた楓はビルに叩きつけられた。その衝撃で土埃が舞い上がり楓の姿が見えなくなった。

「どうして、今のは不意をついたはずなのに」

 舞い上がっている土埃の中から楓がほぼ無傷の状態で姿を現した。

「何で…… ?」

「秘密はこれだよ」

 楓が取り出したのはボロボロになった校章だった。

障壁プロテクト、本当は模擬戦やランキング戦に使う物だけど万一の事を考えて張っておいて正解だったみたいだ」

 楓は落ちていた自分の剣を拾う。

「でも、今の一撃でもう使えそうにないよ」

「なら、もう一度同じように斬るだけ」

 少女は同じように刀を構える。再び一瞬で懐に入る。今度は貫くのではなく横に刀を払った。

 しかし、その一撃は綺麗に受け止められた、

「同じ手、じゃないけど似たような手はくらわないよ」

 楓はそのまま攻撃を受け流し攻撃体勢をとる。

「桐原流剣術一ノ型 骸龍むくろりゅう

 頭上から振り下ろされた剣が少女に届く直前、楓と少女の間で何かが爆発し2人とも飛ばされた。

 飛ばされ2、3回転して受け身をとって身を持ちこたえた。

「何だ」

 起き上がった楓は少し奥にいた少女の姿を見た。

 長い黒髪が風で靡き隠れていた左目は眼帯をし、首には黒を基調とし中央に赤く小さな光る球体が付いた首輪のような物をしていた。

 少女が耳につけていた小型通信機から男の声がした。

『今のは1つ貸しだ。奴相手に能力を使わずに勝てると思うな。助けることはさっきの一度限りだ』

 それだけ言って通信は切れた。少女はその場でただ立ち尽くしたままだった。

「悪いけど拘束されてもらうよ」

 楓は少女に手をかざすと同時に能力の氷が出現し少女に向かっていく。

「私は私だけの未来を手に入れる」

 直撃すると思われた氷は少女の目前で粉々に砕け散った。

 まさかの出来事に楓は驚きを隠せなかった。

「これは貴方の思い描いた未来じゃない、私が選択した未来」

 少女の左目にあった眼帯は外れ目には幾何学模様が浮かび上がっている。

「これが私の変化チェンジ無限の可能性(ループ・オブ・ループ)》、未来の決定権は私にある」

 そう言って近くに落ちていた瓦礫がれきを拾う。

「貴方はこれを避けることは出来ない」

 瓦礫が目の前まで飛んで来た瞬間、全ての時が止まった。


 目を開けると楓は濃い霧がかかった場所にいた。

「ハハハッ、久しぶりだね楓」

 背後から聞き慣れた声がした。振り向くとそこにはもう1人の楓が立っていた。しかし、その雰囲気は別人だった。

「何しに来た ?」

「何って、お前をからかいに来たんだ。お前がこっちに来ることなんて無かったからな」

 そう言ってもう1人の楓は腰にかけていた剣を楓の足下あしもとに投げた。

「今はアナザー、そう呼んで。でも、楓は2人も要らない。僕かお前、どっちが本物か決めようぜ」

 アナザーは氷で剣を造り出した。

「僕が勝ったらお前の身体貰うぜ」

「俺が勝った場合のメリットは ?」

 アナザーは顎に手を当て少し考えた。

「俺の持ってる能力を全てお前に託す、これでどうだ ?」

「いいよ」

 楓はアナザーが投げた剣を拾って鞘から剣を引き抜く。

「行くぜっ !」

 アナザーは楓に斬りかかった。楓はギリギリ反応して受け止める。

「少しはやるじゃねえか。なら、これはどうだ」

 競り合っている剣を左手だけで持ち右手を上に向けた。

 その途端、楓の足元から大量の氷が湧き出てきた。

「クソッ」

 楓は宙に投げ出される。アナザーは楓を追ってジャンプし目の前まで来る。

「骸龍 !」

 アナザーの剣が楓の右肩から斜めに斬った。傷口は剣で斬ったとは思えない乱雑な傷がついていた。その威力は凄まじく楓は地面まで吹き飛んでいく。

「終わりだ、氷武の乱撃(アイシングバリュート)

 楓が地面に叩きつけられる間際、アナザーの後ろに色々な武器の形をした氷が出現する。楓に向けて指を指すとその全てが楓に突き刺さり虫の標本のように地面に固定される。

「僕の勝ちだな。バイバイ、楓」

 氷をつたって楓の血が地面に流れていく。楓は空を見上げたまま動かなかった。


 目の前まで来た瓦礫は空中で固まった。

「避けられないなら、止めてしまえばいい」

「誰 ?」

 少女は雰囲気の変化に気が付いた。

「僕は桐原楓。さあ、仕切り直しと行こうじゃないか !」

 突如少女の身体は氷に覆われた。

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