接触
謎の襲撃者により傷を負った山城は、戦闘の一部始終を見て駆けつけた楓が呼んだ救急車によって学園附属の病院に運び込まれた。
楓は一応祝勝会をしていたメンバーにメッセージを送った。もう夜も遅かった為集まらないと思っていたが、ほどなくして全員集まった。
「桐原君、山城君の容態は ?」
白石は心配そうに楓に尋ねた。
「重症だけど命に別状はないそうだよ」
「そう」
そう言って白石は近くにあった長椅子に座った。
他の皆も立ったまま壁にもたれたりイスに座ったり様々だが、共通点は誰も口を開こうとしないことだった。
そこに中里が急ぎ足でやって来た。中里に何があったのか聞かれた楓は見ていたことを話した。
楓から話を聞いた中里は最後に
「今日はもう遅いから帰りなさい。周りには気を付けてね」
その日は解散になった。
次の日、目覚めると外では雨が降っていた。
「あまり気持ちの良い朝じゃないな」
楓はそんなことを呟いて学園に行く準備を始めた。テレビをつけ朝のニュース見る。そこには二人のスーツを着た男が映っていた。一人はスーツをピシッと着ていたがもう一人は少し着崩していた。
「本日の注目ニュースは世界序列が大きく動いたことです」
「いやー、まさかのまさかでしたね」
「先日まで序列12位だったアリニシトアがS級の異生物を2体討伐して襲われていた街を救ったようです」
「そのおかげでアリニシトアは6位まで序列を上げたようですが上位5位にはさすがに入れませんでしたね」
「上位5人は人間離れしてますから」
そこで楓は時間に気が付きテレビを消した。そして急いで寮を出た。
学園に着いたのはギリギリだった。チャイムがなる寸前に教室に入った。結斗や白石、ティナはもう席に座っていた。そのまま山城の席に目が行く。当然のごとく、そこには山城の姿はなかった。
「おはようございます」
先生は少し緊張した面持ちで教室に入ってきた。
「えー、気が付いている人も当然いると思うけど、今日は珍しく山城君が休みですね。実は昨日事故にあって今は入院中です」
どうやら学校側は昨日の件をあくまで事故として処理するみたいだった。もちろん、それが一番懸命な判断なのかも知れない。下手に襲われました、なんて言えば恐怖心を煽るだけだ。
「だから山城君は少しの間休みということになりました」
少しざわついていた教室もすぐに落ち着きを取り戻していった。
「後、不審者がいるという報告も入っています。下校時などは十分に注意して下さいね」
先生はそう言って教卓に置いていた書類を片付け始める。クラスメイトもそれを見て話は終わったと察し好き勝手に立ち歩く。
「ちょっと桐原君良いかしら ?」
ついさっきまで書類の整理をしていたはずの先生が俺の方に近づいてきた。
「なんですか、先生」
「昨日の件は出来る限り他の生徒には知られないようにして、最悪今回のランキング戦2回戦以降が無くなるなんて話も職員会議で出てたから」
「善処はします」
「お願いね」
先生はにっこり笑って教室を出ていった。
「全く面倒なことになったな」
俺は軽くため息をついた。
時計の針が3時30分を指しこの日最後の授業の終わりを告げるチャイムがなった。
「じゃあ今日はここまで。帰れる人から帰っていいよ」
そう言われ俺が帰る準備をしていると結斗が寄ってきた。
「楓、今日暇なら山城君のお見舞いでも行かない ?一応ティナは誘ってみたんだけど忙しいらしくて断られちゃった」
「わかった、行くよ。白石は誘ったの ?」
「いや、まだ誘ってない」
「じゃあ一応白石にも誘いを入れてから行こうか」
「そうだね」
俺と結斗はもう教室を出たであろう白石の後を追った。
教室から走りなんとか白石に追いつけた。
「私は行けない」
「どうして ?」
そう聞かれて白石は顔を伏せた。
「私にはそんな資格ないから」
白石は少し震えた声で言った。
「山城が襲われたのは白石のせいじゃない。責任があるとすれば襲われる直前に山城を見ていた俺の責任だ」
「楓の言うとおり白石さんは悪くないよ」
そこまで二人で言ってもまだ顔を上げようとはしない。
「もし仮に白石が自分に責任があると感じているんだったら、その責任をとるためにお見舞いに行ってあげれば良いんじゃないか ?そうすれば山城も責めたりなんかしないだろ」
白石は少しの間じっと黙った。
「わかったわ、私も行くわ」
顔を上げた白石はどこか吹っ切れた顔をしていた。
校門を出るとそこには1台の黒い高級車とおぼしき車が止まっていた。楓たちが一瞬そこで止まると中から高そうなスーツをビシッと着こなした一人の男性が出てきた。
「桐原楓様でございますね ?」
男は楓に向かってそう尋ね自身のスーツが乱れていないかを確認しつつ返答を待った。
「そうですけど」
すると男はにっこりと笑った。
「うちの所長が貴方様にお会いになりたいと申しておりまして。申し遅れました、私は世界異能研究所日本支部所長補佐を務めさせて頂いております天風と申します。以後お見知りおきを」
天風と名乗った男は丁寧に全員に名刺を渡した。
「それで桐原様、来て頂けますでしょうか ?」
「もし断ったら ?」
「所長が我々に命じて桐原様を捕まえにいくことになるかもしれません」
楓は結斗と白石の顔を見た。
「行ってきなよ。お見舞いならいつでも行けるからさ」
結斗は笑いながらそう言ってくれた。
「また後で時間があれば合流するよ」
「わかった」
結斗と白石は天風に一礼してから病院のある方へと歩いて行った。
「では桐原様、こちらに」
天風は慣れた手つきで丁寧に車のドアを開けた。




