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10−8. 逆襲

 気流の流れの変化から、上空の雲は雨に変わった。強風から一転して土砂降りに晒された侵攻・反乱連合部隊はパニックに陥っていた。

「何で急に雨が!?」

「こんな草原の中心じゃあ、隠れる場所がないぞ!?」


 そして、貴族達上位の指揮官達は平原の外の天幕にいた為、現場指揮官は味方を密集させる以外の指示が出せなかった。本来は丘の上の魔法師部隊とその護衛が指示を出す手筈だったのだが、そこには墜落死体以外は存在しなかった。


 アンジェリーナは塹壕前面の降雨の一部を風魔法で吹き飛ばした。そして、平原西部の林の中から進軍ラッパが吹き鳴らされた。塹壕とその前に盛られた土は敵魔法から味方の身を守るものではなかった。アンジェリーナの作る嵐の強風から兵の身を守る為のものだった。その魔法攻撃が終わった以上、その部隊の仕事は『待機』から『襲撃』に変わった。


「進め!侵略者と反乱者どもを殺せ!」

指揮官の叫びに兵達は唸り声を上げて答えた。


 それでも塹壕と敵の部隊の間には1マイル弱の距離があった。そして地面は濡れていたので、皇帝側の兵の進軍は素早いものでは無かった。とは言え、皇帝側の弓兵は雨の間は林で雨を凌げた。そして歩兵の後を進軍してきた弓兵は敵部隊に向けて弓を放った。


 数百の弓が飛んで来るのを見てから侵攻・反乱連合側は命令を出した。

「盾で弓兵を守れ!弓兵は射返せ!」

先制攻撃を受けてからの迎撃は勢いが無かった。何より部隊の戦列は崩れていたから、弓矢は乱れ、皇帝側の兵士を押し留める事が出来ず、突出部に攻撃が集中した。


「ぎゃあ!」

「このぉっ!」

突出部は皇帝側の兵士に有効な反撃が出来ず、死屍を晒す事になった。

「急ぎ戦列を整えよ!」


 侵攻・反乱連合の前線指揮官達は個別の指揮で何とか対抗しようとしたが、元々寄せ集め部隊だった。各指揮官を調整する中級指揮官が存在しなかったから、中級指揮官が寸前の戦力を調整している皇帝側に徐々に押されて行った。それでも数が多い侵攻・反乱連合の兵に対し、皇帝側の部隊は敵を漸減していくのがやっとだった。


 30分を越える戦闘で、皇帝側の攻勢は止まりつつあった。両軍は防御態勢を整えながら、一部の部隊を交互に前進させる方法で攻防をコントロール出来る様になった。


 そこで、北部から馬の鳴き声が聞こえた。北から皇帝側を横撃する侵攻部隊の一派が到着したんだ。侵攻部隊の前線指揮官が大声で叫んだ。

「ケイス伯爵の部隊が到着した!形成逆転だ!逆襲せよ!」

侵攻部隊側の士気は好転したが、軽騎兵は林から出て横隊を組むのに時間がかかった。


 そして、平原北部を覆う様な巨大な魔力が流れた。

「何だ!?」

それは中央の侵攻部隊ですら感じる強い魔力だった。平原北部の風は回転し、騎馬の列を取り囲んで、上昇気流となった。

「な!?」

「うぁわ!?」

馬の嘶きも加わった。騎馬も騎兵も風に翻弄されながら舞い上がった。その数は60騎…60の馬と騎兵が回りながら宙に浮かんでいた。そして、魔力が止まり、馬も騎兵も地面に落下していった。


 侵攻部隊側の好転した士気は、再びの惨劇によりまた最低にまで落ち込んだ。人は、頼りにしたものが失われると絶望するものだ。


 そして、丘近辺にまた巨大な魔力が流れ込み、風が流れ込んだ。侵攻部隊の兵達は、二度見せられた惨劇の再現を想像した。

「うわぁ!嫌だ!!」

「無理だ!あんなの!!」


 もちろん、味方の兵がいるところで竜巻を発生すれば巻き込まれてしまう。だからこれは只の牽制だった。それでも、既に『負け戦』をイメージしていた侵攻部隊・反乱連合の兵達は戦意を失った。


 戦場には3種類の人間がいる。立身出世を夢見る者あるいは猪武者で、最後まで前に進みたがる者。他に、上手く振舞って生き延びるか、逃げてもバレないタイミングで逃げようとする者。そして、最初から生き延びる事以外考えていない者。


 既に侵攻部隊・反乱連合の6割以上の兵が逃亡を選択していた。戦線は崩壊した。

 濡れた地面を小走りに進むのは大変そうですね。でも、現在ウクライナでも歩兵達は自分の足で走っている様ですよ。装甲車は『鳥』が飛んできて鉄の棺桶になりますから。

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