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9−3. 大使との話し合い

 フレドリックとしては、こうも外交的配慮を欠く兄には王になる資格が無いと考えざるを得なかった。


 一方、この短絡的な兄が偽アンジェリーナ…アンナの事を知れば、彼女の生命が危機に晒される様な行動を取り兼ねないと思わせた。だから、帝国大使にまず話をつける必用を感じた。

「侍従を一人、帝国大使館にやってくれ。これから訪れると伝えてくれ」


「殿下におかれましてはご機嫌麗しく、この様なお時間をいただきありがとうございます」

「急に時間を取らせて済まない。だが、相談したい事があって、急ぎ訪問させてもらった」

「急ぎの話題ですか。一体何事でしょうか?」

「他でもない。帝都に偽皇女が現われた等と言う噂が流れており、皇女殿下が心を痛めている。大使館の方から公式声明を出して鎮静化を計れないのだろうか」


「それについては、何者かの意図で流されている噂です。こちらが何らかの意図の声明を出しても、それを利用される恐れがあります。しばらくは相手の出方を見て、相手の意図を見計らってから対策を取りたいと考えます」

「しかし、それでは王国内でデマが広がる一方ではないか。貴方方は、国家元首を貶めるデマを放置するのか?」


「それこそ、我々が王国に要請する事ですよ。王国側がそれらのデマを取り締まる事が、両国の友好関係の為に必要だ」

「だから、その前に大使館からの公式発表が必用なのだ。帝国大使館からの公式発表を受けてからこそ、王国側のデマを戒める動きが正統なものとなる」

「とは言え、誰が今のデマを流しているか分からない以上、我々は動きづらいのですよ。もしかすると、本国経由で誰かが動いているのかもしれませんので」


 頑なにデマ否定を拒否する大使に、フレドリックも現在のデマを流しているのが帝国大使館であると確信した。

「王国側としては帝国側に歩み寄る努力をしているのだが、大使は協力を拒否するのか?」

大使は余裕の表情だった。

「我々としては本国の指示に従うのみです。ただし、王国側からご助力をいただけるなら、それは好意的に受け止め本国にも報告させていただきます」


「助力は考えているのだがね…帝国大使館が動かずに我が国側が動くという事は無い。前回の偽皇帝事件で、王国内の帝国への感情はここ数年で最悪の状態だからな」

「それならそれなりに動いていただければよろしいかと存じます」

「どういう意味かな?」

「我々は本国の意向で動きます。だから、本国の意向が変ればそちらのご希望に沿った動きが出来るかもしれません」


「君達大使館が動かせないものを、我々が圧力をかけて動かす事もないぞ。我が国は貴国と友好関係を望んでいる」

「そうでしょう。ただし、我々と貴方方が協力して本国を動かす事は出来ると思いますよ」

「…王家が主導して隣国との緊張を強める事もない」

「いえ、もう貴国の新興貴族の方々とタカ派の方々は、この緊張関係下での強気の外交姿勢をお望みです。国内世論を背景に動かれるのは、政治家として必用な事と思いますよ」


「それが皇女殿下の立場を改善するとは思えない」

「いえ、もう誰かが皇女殿下を偽物扱いする事を望んでいるのです。それを改善するには、皇女殿下を偽物扱いしようとする者達を排除するのが最も有効な策と考えます」


(一方で偽皇女を使って皇帝達の評判を下げる、一方で偽皇女の助力をしたい私を動かそうとする…)

本来、偽皇女の末路はアンナ嬢の危惧していた通りだろうとフレドリックは思う。皇女を名乗る女が王国で死ぬ、だから帝国にいる皇女は偽物と言う論法だ。この大使…そのバックにいるレノックス公も、一人の少女の生命なぞ何とも思っていない。


 思い悩むフレドリックに、大使はもう一押しする発言をした。

「我々は良いのですよ。本国の指示する通りに動けば。その責任は本国にありますので、心を痛める事もない。ですが殿下は心を痛めていらっしゃる。お優しい事で、敬服いたします。ただ、ならばすべき事は王国内の世論をバックに、皇女殿下に危害を与えようとする者達を排除する事ではないでしょうか」


 フレドリックは言外に示された偽皇女の未来も理解した。皇女を詐称した者を、帝国皇室が許す理由が無い。フレドリックはじんわり背中に汗をかいていた。


 大使はもう止めのセリフを言うだけだった。

「帝国議会で本件が議題に上がる予定です。その際、殿下にも出席していただければ、国内世論が何を望んでいるかご理解いただけると思いますよ」

その言葉にフレドリックは、すでにレノックス公の息のかかった前大使・現大使による貴族達への買収工作が相当に進んでいる事を悟った。

「少し考えさせてくれ…」

「良いご返事をお待ちしております」


 フレドリックが帰った後、大使に大使館員が話しかけた。

「馬鹿は丸めこみやすくて助かりますね」

「馬鹿でも何でも王子だからな。ヤツが王国の対帝国侵攻部隊に参加してくれれば、それでこちらの目的は達せられる」

「外国の侵略に、皇室は立ち上がらざるを得ないですからね」

 イアンの言う事を聞かないからこういう事になってる…


 友好→有効 修正しました。

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