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8−10. 帝都の残党

 帝城から第一騎士団本部に移動するアンジェリーナに従い、スチュアート・モントローズは口を開いた。

「深刻な話題にはならなかった様だな?」

「その理由が『興味が無いから』では笑えないわ」

「気にするな。親父さんやら護衛やらがその分可愛がっているではないか」

「…可愛がっているというか、後輩やら部下やらを育てているつもりでしょう。これは」

「そんな事は興味の無い子供にはやらせないだろう?」


 アンジェリーナは眉を顰めて前を向いた。

「何、人並みの愛が欲しければ、この護衛が二十分に与えてあげよう」

「全てが終わった後にまだそんな事を言う余裕があったら、食事くらいは付き合うわ」

「約束だぞ?」


 第一騎士団本部では前騎士団長と前諜報部長イーノックが戦況を示すテーブルの前で待っていた。

「帝城の方は落ち着きましたか?」

「ヴィクトリア妃とエゼルウルフ氏は西塔に隔離となった。アンリエッタ妃の方は現時点で罪は確認されていないのでそのままだ」

「それでは、後はレノックス公の帝都での活動を押さえれば良い訳ですな」

「そうなる。現状はどうか?」

「バークシャー邸近辺の動きが活発で、そちらの追跡は維持しております。

レノックス邸はまだ動きがありません。リンジー邸が僅かに動きがあり、追跡しております」

リンジー伯爵も南部貴族でレノックス派と言える。


「ゲッコー一味の残党とまだらの蛇一家はまだ破壊活動をする人員が残っているのか?」

「動くのは使い捨ての連中ですから、幹部が残っていれば動くでしょう」

「レノックス邸への警戒網は維持する様に」

「お任せください」


 最初に火の手が上がったのは商店街の外れの倉庫だった。商店街の消防組織が消火と火付け犯の捕縛を行った。次いで平民街でも火の手が上がり、こちらも平民達の消防組織が消火と火付け監視を行った。ここまでは騎士団が出ずに済んだが、更に下位貴族街でも火の手が上がり、第一騎士団が出ざるを得なくなった。


「レノックス邸から騎兵が出ました!馬車も準備しております!」

「警戒線で阻止せよ!」

レノックス公の兵達は南門に向かったが、下位貴族街を出たところで阻止にあたった第一騎士団と激突した。


「抜刀せよ!強行突破する!」

レノックス公の兵が遂に騎士団と斬り合いを始めた。ここで騎士団も捕縛より阻止を優先し、大盾と槍を駆使してレノックス兵を動けなくしていった。最早生死は問わなかった。


 そことは2ブロック横をバークシャー邸を発した騎兵と馬車が通過しようとした。だから第一騎士団はそちらにも人員を回さないといけなかった。


「リンジー邸から出た騎兵と馬車が西に向かっております!」

「西門に回す余裕は無い…西門は無理をせず、場合により門を放棄する様に伝えよ!」


 西門にはもちろん守備の兵士がいたが、伯爵家の護衛騎士と張り合える程の兵力も練度も無かった。だから守備兵は盾で守りを固めて自衛に専念し、西門を固く守る事はしなかった。力づくで守備兵が門扉から離された隙に、買収されていた守備兵が鍵を開けて開門した。


 まだ無傷の10騎と4台の馬車が西門から街道を西に走り抜け、最初の角で南に曲がったところ、街道の両側から灯りが灯った。


 ランプの周囲に布をかけて灯りを隠していたんだ。街道にはバリケードが交互に置かれ、騎馬なら抜けられるが、馬車では通過出来なくなっていた。


 最初の馬車1台はバリケードの前で止まれずにぶつかって横転した。残り3台は停車は出来たが、松明を持った兵と重装備の騎士達に囲まれ、身動きが取れなくなった。


「降車して血路を開け!」

若い声が叫び、バリケードの隙間に兵達が殺到したが、当然そちらに抜けようとするのを見越して第二騎士団は兵を配置していた。盾で阻止されている間に槍で突かれて、次々とリンジー邸から出た兵達は倒れていった。


 馬車から降りた者達の一部は盾で周囲を囲って要人を守っていた。だから騎士団は大槌を用いて囲いを壊し、守られている人物を捕縛した。捕まったのはチャールズ・レノックス、レノックス公の次男だった。


 第一騎士団にもその報告がなされた。

「どうやら、レノックス公は逃がしてしまった様です。申し訳ありません」

「いや、一同よく反乱を押さえてくれた。レノックス公が南部に逃げた以上、南部は一致して反乱を起こすだろう。これを抑えれば反乱の芽は潰える」

皇帝にとっても、アンジェリーナにとっても、レノックス公が逃げて大規模反乱になった方が帝国の膿を出せて良い、そうしう認識だった。


 下手に帝都で捕縛するより、大逆の罪で滅ぼした方が今後の帝国にとって長い目で見てメリットがあると考えていた。


 こうして帝都でのレノックス公の影響力は最小限になった。帝城に努めているレノックス家縁の使用人達は、正妃とエゼルウルフ氏の宮に集められ、その維持以外の行動は許可されなかった。エルザ皇女とグレース皇女は宮を出て、客間で過ごす事になった。

明日から9章…頑張って書きます。

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