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7−5. 皇帝の述懐 (1)

 思えば、19才にして実質的に国家のリーダーとして立たねばならなかったのは不幸だった。13才の頃から現場を見たいと言い続けてきたが、18才にて立太子するまで帝城を出る事すら難しい状況だった。つまり、俺と弟の後見人が勝手に盛り上がって、暗殺の危機があったという事だった。


 立太子をしたら王領の総督になって地方とはいえ行政を経験する筈だったが、実際にはそれまでの総督が回す書類の署名だけだった。そうしている内に、父帝の健康不安が見つかり、帝都に戻される事になった。


 すぐに隣国の侵攻が明らかになり、ヘッジアリー盆地での戦闘になった。なるほど皇太子の魔法属性を明らかにしない事は有効だ。中央に魔法使いを集めた彼奴等の真ん中に範囲魔法のボルケーノを放てば戦は終わった。魔法使いがほぼ全滅した段階で、相手の戦意が失せたのだ。


 迅速に新帝となるのが優先だった為、王国への罰は奴らの飲める様に最小限に止めた。まあ、王の交代は避けられず、新王の苦労は俺の苦労と一緒だ。言葉にはしないが、『頑張れよ』との思いもあった。


 さて、婚約者のヴィクトリアと急いで結婚し、戴冠式を挙げた。ところがこいつは田舎に領地のある公爵家の出でありながら帝都から離れた事のないお嬢様だ。現場を見たいと常々思う俺とは全く反りが合わない。帝城か貴族屋敷の外に出たがらない。


 俺の方には人並みの性欲はあるから、その解消に子供作りに励むのも良いか、と子供を作った。二人目まで女だった事からヴィクトリアは引き籠った。いや、確率的に次は男だろうと言ったのだが、女にはそういう適当な言葉は駄目らしく、増々、俺を避ける様になった。


 さて、男児は必用だからどうするかと思えば、群臣は側妃を迎えるべきと言い出した。まあ性欲の解消もせねばならん。比較的理知的な女で実家の家格も高いスペンサー侯爵家のアンリエッタを側妃とした。


 すると生まれたのが男の子だったから、俺の矜持も保たれた。男たるもの、男児が出来ない種持ちだなどと呼ばれたくない。


 さて、側妃のアンリエッタが妊娠している間に、正妃のヴィクトリアがさすがに不安を感じたらしい。そういう事で再び褥を共にした。


 ところが、こうなるとどうやら相性というものを感じる様になった。ヴィクトリアはどうも余所余所しいのだ。アンリエッタはもう少しこちらに配慮する面がある。


 アンリエッタが出産し、ヴィクトリアが妊娠した。もうヴィクトリアの事は良いかな、と思い出したところで、ヴィクトリアも男児を出産した。そうなるとアンリエッタの元に足しげく通うのも問題かと思ったところで、アンリエッタも再度妊娠した。


 こちらは女児だった為、アンリエッタの生んだ第一王子アルフレッドとヴィクトリアが生んだ第二王子エゼルウルフのどちらか優秀な方を跡継ぎとすれば良いか、と今後の方針を決めた。正妃の息子だからと言って、ボンクラに帝位を継がせる訳にはいかない。


 ところが、二人の皇子は互いの後見人達が過保護に守りだした。俺でさえ中々顔を見る事が出来ないのだ。暗殺を恐れて後見人の見つけた家庭教師以外近づけない始末だ。そんな後見人どもが付けた家庭教師がほめちぎったところで信用する馬鹿が何処にいる。


 そんな中、第三皇女たるアンジェリーナに悪評が囁かれる様になった。

曰く、家庭教師から姿を隠して逃げ回っている。

曰く、魔力がほとんど無い。

仕方なく諜報部に探らせた。報告書は一部噂通りで、一部は噂を越えるものだった。


・魔法の指導は真面目に受けるが、言われた事の半分しか出来ない。

・知識欲はあり、歴史・地理・科学は真面目に授業を受けている。


 ここまでは良い。ところが、俺の護衛騎士の一人に確認の為に監視させると、風魔法の高速移動と浮遊を使って帝城を抜け出している事が分かった。


 おいおい、どこが魔力がほとんど無いだ。8才でそこまで出来ないぞ普通。皇女宮の者達は皆スペンサー家から送り込まれた者達だ。アンジェリーナ経由でアルフレッドに凶手が迫る事を避ける為だが、見る目が無いにも程がある。スペンサー家の者達も、レノックス家の者達もお互いの皇子を良く見せる為には他の者を貶すしかないのだろう。全く信用出来ないとの思いを強めるだけだった。


 問題はアンジェリーナだ。外を出歩き政治の成果(あるいは失策の結果)をその目に出来る。なんて羨ましい。俺がずっと望んでいた事だ。やがてこいつに話を聞く必要がある。


 だから出世に興味がない、引退した学者を数人、教師に付けてやった。後は自衛が出来ねば仕様がない。引退した騎士団長と暗殺剣の使い手を剣の教師として個別に付けた。

 高貴な育ちの男達は仕事人間だから、女に興味はほとんど無いのですね。占い師に会う前のスチュアートと女に対する興味が同レベル。そういう訳で親父さんはスチュアートを好意的に見ているらしい。


 あと、この時点で諜報部が当てにならない事が実は判明しているのですが…

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