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7−4. 帝都の裏

 帝都近郊に倉庫街があった。帝都内に入れない怪しげな業者が集まり、帝都近郊でバザールを月に一度行っている。その為の倉庫街だった。


 薄汚れた倉庫が並ぶ中に、何人もの人影が立つ倉庫があった。近くの竈から煙が上がっていた。


「こんな所に集まってもらったのは他でもない。帝都の騎士団などで飼っていた狗の多くが排除されたのだ」

最初に口を開いたのはジャービス・レノックス公爵だった。


「遅ればせながら、宰相側が動いたという事ですか?」

尋ねたのはヴァージル、レノックス家の長男だった。

「領地を任せているお前には分からない事だが、スペンサー家とは一時休戦中だ。皇弟の座を側妃の子供にくれてやると言ってな」


 この父親の言葉に次男のチャールズが続けた。

「もちろん、口約束に過ぎませんよ。騒動が一段落する頃にはスペンサーどもも滅ぼしてやる」

続いて三男のファーガスが口を開いた。

「領地で鍛えている兵達はその日の為にあるんだからな!」


「それはまだ行方不明のアンジェリーナを殺すまでの休戦と言う事ですか?」

「偽皇帝暗殺の場に現われた黒髪メイドがアンジェリーナではないか、と元駐王国大使は言っている。確かに身の軽い女だが、確証はない」

「まだ王国にいると言うなら、もう偽アンジェリーナを暗殺してしまったらどうです?」

「日和見のウィグムント王が偽物を王宮に拘束している。暗殺防止の為と言われればどうにもならん」


「それでも偽皇帝の暗殺犯はねじこめたのでしょう?またやらせてはどうです?」

「あれは王国国教会の者が王宮に入るのにねじ込んだんだ。普段の王宮には暗殺犯は送り込めない」

「王宮内に飼っているねずみは使えないのですか?」

「金で雇われる者は金で情報を売るからな。命懸けの仕事は任せられない」


「そうなると、帝都を揺るがせる方が楽と言う訳ですか」

「側妃の息子のアルフレッド暗殺も難しくなった。こちらの皇子エゼルウルフを帝都外に避難させる方策を練った方が良かろう」

「帝都を荒廃させてもよろしいので?」

長男と父親の会話に口を挟めなかった三男ファーガスが口を挟んだ。

「その時は新皇帝がわが領地に帝都を移せば良いではないか!」


 この言葉には次男のチャールズが異論を唱えた。

「それでは北部が納得しない。まだ皇帝の弟を動かす手がある。帝都で騒ぎは起こすが、壊し過ぎない配慮が必用だ」

次いで父親ジャービスが口を開いた。

「使える道具は使うが、どうにもならぬなら捨てるのも手だ。とは言え、まだ皇帝に決定的なダメージを与える事は出来ない以上、帝都の破壊は最小限になる。

ファーガスはひとまず領地で兵を鍛えておけ。その矛先は帝都でないとだけは覚えておけ」

「分かりました」


 ここで長男ヴァージルが次男に尋ねた。

「となると、国内貴族などを動かすのはまだ先なのだな?ではチャールズ、次に動かすのはゴロツキどもと言う事になるのか?」

「そうなるな。皇帝がまだ呆けている内にエゼルウルフを帝都から連れ出す。だから帝都でその程度の騒ぎを起こす事になる」


 一方、帝都の外れの壊れかけた建物が並ぶ貧民街の建物の一つに、汚れが落ち切っていないが清潔な服を着た子供達がやって来た。

「おはよう、ジェニーちゃん!」

挨拶を受けた茶髪の少女は子供を抱きしめ、おでこにキスをしてあげた。

「おはよう、ジェニー!」

入って来た子供達は次々と茶髪の少女に抱きついて、キスを受けていた。


 年長の少女は茶髪の少女の前で立ち止まって言った。

「みんなジェニーに甘えすぎじゃない?そろそろおばさん化したジェニーなんて、加齢臭がしだすわよ?」

茶髪の少女は腕を広げて、憎まれ口を聞く少女に応えた。

「シアが反抗期になったなんて、私も年を取るものね。ついこの間までおむつをしていたのに」

「もうとっくにおむつなんてしてないわよ!」

「おむつを代えてあげた事もあったのに」

「そんな昔からの付き合いじゃないでしょ!」

「はいはい」


 茶髪の少女は少女シアの両肩に手を置いて、シアの頬にキスをしてあげた。

シアは膨れながらも不服は言わなかった。

「さあ、ママのキスをもらった子は、しっかり働きなさい。お手当がでるからね」

「はぁ~い」


 近くに立っていたゴツイ男達は口元を緩ませた。もちろん、その中にはスチュアート・モントローズも含まれる。


 アンジェリーナ皇女は男達の宿舎の掃除・洗濯に孤児や貧民の子供達を雇った。働けばお金が貰える、そういう経験をさせる事で、子供達に勤労意欲を植え付けるのが目的だった。将来的に使える人材の教育をしている、そういう名目で貧しい子供達とその家庭を救済しているのだ。


 一方で皇子の後見人達が帝都を騒がす権力争いをしている中、皇女が最下層の人々を気遣うところを見せる。男達はこの皇女に付いて行く事が間違っていない事を確認出来ていた。

 明日はエグバートのおはなしになります。


 直した筈の箇所が直ってなかった…第一稿を読んだ方、申し訳ありません。首都は興すとは言わないと思う。

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