6−6. 皇帝の夜 (2)
「なるほど、ヴィクトリアの実家のレノックス公一派が本気でお前を除こうとした、留学期間の間それを隠して、その間にアンリエッタとアルフレッドを除こうと言う訳か」
「最初はそういう予定だったのでしょうが、最初の目的が果せずにいるところに皇帝の視察があるから、錯乱丸で騒ぎを起こし、視察を中止させようとした様です」
「なるほど、レノックスの領地は南だ。南部の港から輸入した薬物をこちらに持ち込んだと言う訳か?」
「帝国東部で見つかっていないなら、そういうルートと思われます」
「偽皇帝の暗殺もレノックスどもの企みと見るか?」
「皇帝親征を招く事態を起こし、急遽皇太子選出をさせる目的でしょう。その場にいない者は皇太子になれないから」
「皇太子の資格の無い者を皇太子には出来んぞ」
「だから、もう一人も資格が無い様にする策でしょう?」
「偽皇女の暗殺か…」
「その後に現れた女を『偽物だ』と騒げばそういう流れになりますね」
「だが、そこまで彼奴等が急ぐ理由をどう見る?」
少女はにやり、と笑った。
「もう一人は資格がないのでしょう。調べれば分かるのでは?」
「噂如きに流されたくはないが…こうなると噂が信憑性を増すな」
エグバートはしばらく黙考した。
「今は何をしておる?」
「市井で糊口をしのいでおりますよ」
「なら、共に帰るぞ。至急、帝都の体制を立て直さなければならぬ」
少女は口を歪めて笑った。
「何が可笑しい!?」
「皇女は『会わない』と言ったのでしょう?同行している者達で、誰か皇女を引きずってでも皇帝の前に連れて来ようと言う者はおりましたか?」
「……」
「全員、留学している皇女が偽物と知っております。そんな中に入り込むのは御免ですね」
「来る時はどうした?」
「路銀を稼ぎながらのんびり歩いて来ましたとも」
「なら、それで帰って来い。これをやる」
エグバートは金貨2枚を少女に渡した。少女は溜息を吐いた。
「これだから世間知らずは…」
「何が問題だ!?」
「帝国金貨を王国で使えば目を付けられるでしょう。まあ、故国に入ったら使わせていただきましょう」
エグバートは頬をひくつかせた。
「では、これを。この離宮周辺の隠し通路です」
「ライに渡せばよかろう?」
「あの危険人物に隙を見せるのは御免ですね。あちらから挨拶くらいしてくれればプレゼントしたところですが」
エグバートは溜息を吐いた。
「お前等揃って危険人物だからな…娘が暗殺剣の免許皆伝になるとは予想もしなかったわ」
「そんな教師を付けておいて何を仰る」
「まあ、良い。機を見て戻れ」
「ええ。偽物が暗殺される前には戻りましょう」
平民街で愚か者達を扇動する勢力がある事は占い師も知っていた。同様に貴族達にも扇動が及んでいるだろう。対して王家は偽皇女を離宮に守っている。これが開放される時が暗殺の機会となる。
市民・貴族が反帝国で盛り上がっている間は開放などされまいが。人の噂も七十五日、治まるまでに帰国してしまえば良い。そういう計算だった。
金髪の美少女、本物のアンジェリーナは席を立ち、離宮に存在する秘密経路を使って外に出た。
一応、父親の事を心配はしている模様。
あれ、すごく短かった。ごめんなさい。




