表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/65

6−5. 皇帝の夜 (1)

 王宮メイドの更衣室で、細面の金髪美少女がメイド服から質素なドレスに着替えていた。ドレスは質素だが高品質の布地を使っており、彼女の実家の高貴さが伺われた。仕事を終えて帰るのか、宝飾類は付けていなかった。


 彼女は一度更衣室から通用門に続く廊下を歩くと、いきなり姿を消した。彼女は一部の高貴な人々しか知らされない秘密の通路を通って王宮から敷地内の林に出た。


 林を出ると、金髪少女は厳重に騎士達が警備する離宮に向かっていたが、やはり途中で姿を消した。


 離宮の物置から出て来た金髪少女は、一番格の高い客間へ向かう廊下を歩いて行った。角を曲がると扉の横に立つ黒髪の騎士がいた。両者は互いの視界に入った事は確かだが、声も上げず、一瞥すらしなかった。


 金髪少女はゆっくりと黒髪騎士の横の大きな扉を開け、客間に入って行った。


 その日、スチュアート・モントローズは父ヴィンセントの護衛として王宮内に入っていた。会談中は隣室に控えており、今も王宮内の客間の父の部屋の隣に部屋を与えられていた。


 スチュアートは離れた離宮からすら感じさせる、皇帝の魔力の干渉力に舌を巻いていた。

(この魔法干渉力、明らかに王国の誰よりも強い…戦争になったとて、どうにかなるものではないだろう。誰もその魔法を止める事ができないのだから)


 今回の謀略の意味を考えながら、皇帝の魔法干渉力の嵐をぼんやりと感じていた。その嵐の中心付近に一つ、嵐が治まっている場所があった。皇帝騎士のいる場所だろう。

(この魔法の圧力を自力で押さえられる…これが達人というものか…何っ!?)


 スチュアートは皇帝騎士の近くに、もう一つ嵐が治まっている場所を見つけた。それは移動してもう一つの凪とすれ違い…嵐の中心に近づいて行った。


 スチュアートは部屋を出て小走りで離宮に走って行った。この王都に、こんな魔法の嵐を平然と制御できる者は一人しかいなかった…スチュアートをも上回る魔法の達人は。


 離宮の客間に入り込んだ金髪少女は、テラスへ続く扉を開けて部屋を出た。テラスでは皇帝エグバートがこちらに背を向けて座っていた。周囲には葡萄酒らしき匂いが漂っていた。少女は皇帝の横に立ち、両手を身体の前に揃えた。


 少女を横目にみて、エグバートは口を開いた。

「会わぬと言っておきながら、今宵はどういう風の吹き回しだ?」

少女は一度口元を歪めてから、口を開いた。

「なぁんにもご存じない皇帝陛下にお聞かせしたい事がありまして」

エグバートは顎を前に出して言った。

「誰も見ておらぬ。親子として話せ」

着席許可を得たと判断した少女は、テーブルを介してエグバートの正面に座った。


 人差し指を立てて軽く唇に付け、離してから小さく手首を回した。防音魔法をかけたと言うジェスチャーだ。


「それではまず、偽皇帝を外国に寄越す等と言う愚策に出たのは何故です?」

エグバートは顔を歪めた

「暗殺が行われると情報があり、外務大臣から献策があったのだ」

「大臣はどうしました?」

「名誉職を与えた。今回は新大臣を連れて来た」

「ついでに宰相派の力を削ぐ策ですか。なるほど」

「何のついでだ?」


「ついでと言っては何ですが、アンジェリーナ皇女の留学護衛については如何様な報告がありましたか?」

「文句も言わずに王都まで護衛されていたと聞いている」

「どなたから?」

「近衛団長からだ」

少女は両手を広げて呆れを示した。


「何が気に食わない?」

「帝城の離宮で待つ馬車には、侍女一人しか乗っておりませんでした。護衛は一人もおりませんでした」

「近衛は付いていなかったと?」

「おまけにその侍女の体格、吐く息の量も普通の侍女のそれではありませんでした。刺客と判断してそのまま逃げました」

「なら、何故すぐ報告せん!?」

「側妃の娘とは言え、皇女の離宮で護衛が席を外し、近衛が付かない事態、最早皇帝自身がそういう判断をされたと推測しました」

「私がその様な判断をする理由が無かろう!」

「腹芸が王侯貴族の得意技故、その時々の事態から意思を判断する以外ありませんよ」


「それで何故王国に渡った?」

「まあ、帝城が毒蛇に乗っ取られている以上、ひとまず身を隠すところかと思いまして。こちらに来てみれば、王宮では既にアンジェリーナ皇女とやらの歓迎式典を行っているところでしたよ」


「大使もグルという訳か。何かあったら王国の外務卿を頼れと言った筈だが?」

「だから、王宮の歓迎式典に王国の外務卿は文句を言っていない様でした。後日調べてみると、外務卿はどうやら買収されている様でして」

「帝国宰相の従弟にあたる筈なのに、節操の無い事だな」

「帝城の実質の主が変わっているなら、そういう判断も妥当なものでしょうね」

「なるほど、ヴィクトリアの実家のレノックス公一派が本気でお前を除こうとした、留学期間の間それを隠して、その間にアンリエッタとアルフレッドを除こうと言う訳か」

 お察しいただけましたでしょうか?お察しでしたよね!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ