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5−2. 内務卿からの仕事

 夜遅く、繁華街の潰れた飲み屋の戸を叩く者があった。室内にいた黒装束の人物は、小窓を開けて手形代わりのサボテンの花の描かれたカードを受け取った。


「仕事は何か?」

「隠れて護衛をして貰いたいのだが、可能か?」

「隠れて、と言う事は表の護衛がいると言う事か?それならそちらを強化する事を勧めておくぞ」


「表の護衛が信用出来ない。こちらの手札が欲しいんだ」

「高くつくぞ?後、護衛対象に挨拶など出来ないぞ?」

「手付でこれだけ、話を詰めに来てくれれば同じだけ、成功報酬はこの2倍出す」


 男は袋に入れた金貨10枚を出した。

(そろそろ潮時か。貰うものは貰って後は現場を見て判断するか)

「分かった。話はどこに行けば聞ける?」

「この時間にここに来てくれ」

渡された紙には時間と場所が書かれていた。


 黒装束は土曜の夜に、内務省の外郭団体、王都衛生管理組合の事務所の一つにやって来た。

(バカン伯爵の隠し本棚を暴いたのは内務省…妥当な線か)

事務所の奥でランプが灯されていた。不安定に揺れる炎が黒装束の影を壁に映した。


 帽子を目深かに被った男が口を開いた。

「護衛の話を受けて貰えたと考えて良いか?」

「話を聞かないと分からんよ」


「近い内に外国からの来賓を王宮で接待する。その際に影ながら護衛をして欲しい」

(王宮の調査が出来るし、報酬も十分だが…罠の可能性もある)

黒装束は思案した。


「王宮なら近衛だし、その他の場所でも騎士団の責任だろう。役人が動く理由は何か?」

「その国から多くの金が流れ込んでいる。裏でな。一部の役人が信用出来ない」

(帝国大使が盛んに王国貴族を買収しているのは明らかだ。そして、近日に来訪する外国の来賓と言えば帝国皇帝だろう。買収されている外務卿を信用しないのは正しいが…むしろ内務の様にそれを敵視しているのは少数派ではないか。しかも皇帝の護衛を信用しないと言うのが愚かしいが…まあ、支援してやるか)


「一日中護衛というのも無理だぞ?」

「歓迎の式典の日だけで良い。王宮で問題が起きる事が問題なんだ。それ以外なら騎士達の責任になるからな」

「当然、入門許可が必用だが?」

「制服も用意する。一週間後にここで渡す」

「立ち入り可能な場所の地図はあるか?」

「それもその時渡す」

「分かった、受けよう」

黒装束は金貨入りの袋を受け取り事務所を出て行った。


 説明役だった帽子を被った男は、事務所を出た後、追跡を撒く為に二つの建物を通過して内務卿の屋敷に入った。

「話は受けて貰えました」

「うむ。手練れである事は確かだ。事務所から付けていた尾行は二人共撒かれた。とりあえず保険としては働くだろう」

「帝国は本当に動くでしょうか?」

「何とも言えん。帝国内の後継者争いの見通しが立っていない。本命の正妃の男児も、側妃の男児も17才以上になって表舞台に立っていない。それぞれの背後のレノックス公もスペンサー候も近い将来を危惧している。どちらかが暴走する可能性はある」

「それをこちらでやられるのも迷惑な話ですね」

「賠償交渉の間に手出し出来ない様に掣肘する意図である可能性がある。その間に内乱を治めてしまえば良いのだ」


「しかし、そう簡単にあの皇帝が暗殺を受けますか?」

「万に一つもあってはならない。その為の保険だ」


 さて、黒装束が尾行を撒いたのには、当然正体を隠す意図があったが、もう一つ理由があった。雇い主を確認する為、仕事を持って来た帽子の男を追跡していたのだ。だから、その男と内務卿の話は聞いていた。


(暗殺ねぇ…誰があの男を殺せると言うのか…まあ、良い。影ながら支援ぐらいしてやろう)

 風邪魔法は盗聴が出来る様です。キャサリンとか蝙蝠とか盗聴が好きな作者って思われてないか不安。


 …風邪をひくと使える魔法、それが風邪魔法…の訳ないです。風魔法と訂正いたします。

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